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 僕が通っている高校には、休み時間や放課後などで空いていれば、自由に使えるパソコンルームがある。パソコンの台数は一クラス分の生徒数と同じぐらいしかないけど、利用者はほとんどいなくて、僕はよくここを利用させてもらっている。

 高校二年生になるまでスマホを買ってもらえなかったから、僕にとってネットの情報を集められる場所はずっとここだけだった。今ではスマホを手に入れていつでもネットができるようになったけど、やっぱりパソコンの方が使いやすい。

 当然、エロサイトなんかはブロックされて見られないけど、ある程度は色々なサイトを自由に見ることができる。中には掲示板への投稿などができるところもあるし、本当に助かっている。まあ、家にパソコンがあればそれが一番なんだけど、ないものはしょうがない。

 この日、放課後になると僕はパソコンルームに来た。こうして放課後になっても家に帰ることなく、パソコンルームを利用するというのが僕の日常だ。とはいえ、最近は休校になることも多かったからパソコンルームに来るのは久しぶりだ。

 僕は心霊関係の話が好きだから、よく見るサイトも心霊関係のサイトになる。その中でも特にオカルトライターアッキーのブログを見るのが中心だ。

 アッキーはオカルト関係の記事をよく書いているライターで、自らオカルトライターと名乗っている。雑誌にコラムを書いたり、時には本を出したりもしていて、全部ではないけどそのうちのいくつかは読んだことがある。

 そんなアッキーのブログはよくある都市伝説を掲載するだけじゃなく、実際に現地へ行くなどして得た情報も載せていて、どの記事も読んでいて楽しい。また、専用の掲示板を利用して読者から得た話についても掲載したり調査したりしてくれるから、何となく僕とかにも近い感じがするのも嬉しい。そんなわけで、僕はすっかりアッキーのファンになっている。

 ただ、久しぶりに見たのに新着記事がなかったから、掲示板の方を中心に見ることにした。こっちはアッキーが書いたものじゃなく、みんなが好き勝手書いているものだから楽しいものもあればつまらないものもある。その中で、多くの人が投稿している「ある噂」に自然と目が行った。それは、「真っ赤なコートを着た女」の噂だ。


 駅のホームで電車を待っていると、特に何の前触れもなく、真っ赤なコートを着た女が向かいのホームに現れる。その女の顔はなぜか確認できず、どうにか顔を確認しようと見続けていると、女に近づきたいという気持ちが強くなってしまう。そうして近づいた結果、通過電車にひかれそうになった人や、線路に転落して怪我してしまった人もいる。また、女は特定の駅で目撃されているというわけじゃなく、日本全国様々な駅で目撃されている。


 まとめてみるとそんな噂だった。

 最近の投稿は、真っ赤なコートを着た女について書かれたものばかりだ。中には明らかに嘘と思えるものもあるけど、これだけ色々な人が投稿しているのを見ると、誰が……それこそ僕がこれに遭遇してもおかしくないと思えてきた。

 ただ、この話そのものはありふれた話というか、よくある都市伝説って感じだし、そこまで怖いという感覚はなかった。でも、色々と気になって関連する投稿を順に見ていった。

 そうして掲示板の投稿を色々と見ていたら、いつの間にか長い時間が過ぎていた。できれば校内の生徒と先生だけが見たり投稿したりできる掲示板も見たかったけど、とっくに帰る予定の時間を過ぎていたから、慌ててパソコンを切ると学校を出た。

 学校から駅まで、僕は全力疾走だった。でも、そんな僕の努力を裏切るように、ホームに駆け込んだところで丁度電車が行ってしまった。

 この駅は学校から近いけど、各駅停車しか止まらないという問題があって、電車に一本乗り遅れるとしばらく待つ必要がある。途中で通過電車を見送らないといけないし、この時間は本当に退屈だ。

 僕はベンチに座ると、適当にスマホをいじった。パソコンの方が使いやすいけど、こういう時の暇つぶしができるという点では、やっぱりスマホも便利で助かる。

 その時、向かいのホームに電車が来て、それがこっちだったら良かったのになんて思いながら何となく眺めていた。そして、電車が行って少しした後、向かいのホームに残った人に目が行った。

「え?」

 そこにいたのは、真っ赤なコートを着た女だった。今は夏で暑いのに、噂通りコートを着ている時点でもうおかしい。そこまで離れていないのに、女の顔はどこかぼやけているようで確認できなかった。ただ、顔は確認できないのに、どこか懐かしいという感覚はあって、それも不思議だった。

 どうにか女の顔を確認できないかと目を凝らしたところで、突然肩を揺すられた。

「あいつを見ない方がいいよ」

 横に目をやると、一目見て美人と思える女性がいた。こういう表現は失礼かもしれないけど、どこかホステスをやっていると言われても納得できてしまうような雰囲気で、一瞬見とれてしまった。

 それより、この人は真っ赤なコートを着た女について何か知っている様子なのが気になった。何を知っているのか、なぜ知っているのかという疑問をぶつけようとしたところで、通過電車が来た。

 警告されたものの気になって、また女の方へ目をやった。ただ、通過電車があるから女の姿を確認することはできなかった。

 そして、電車が通り過ぎた後、もう女の姿はホームのどこにもなかった。

「もう大丈夫みたいだね。今度、あの女を見つけても今みたいに見続けちゃダメだからね」

 最後にそれだけ言って、その人は行ってしまった。

 真っ赤なコートを着た女の特徴は、さっきネットで見た情報そのままだった。でもまさか、さっき見たばかりで自分が遭遇するとは思いもしなかった。そもそも僕は今まで心霊体験をしたことがない。だから、今のが心霊体験というものなのかどうか判断するのも難しかった。

 そんなことを考えている間に電車が来た。

 ここに残れば何かわかることがあるかもしれないという好奇心よりも、とにかく早くここを離れたいという気持ちの方が強くて、僕はすぐ電車に乗った。

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