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6話 Kings 〜オーガ〜②

 猛反対の末、結局二番目の勝負は流れた。


「チッ、しゃーねえな。じゃとっとと三番目だ。三番目はステゴロしばき合い対決だ!」


「素手で一発ずつ交互に殴り合って根性ある方が勝ちだ! ガードも無し!」


「待ってましたアニキ! アニキの十八番ですね!」



「じゃー三番目だしわたしの番だね!」


「姫、殴り合い勝負だなんて野蛮な事は…」


 そんな勝負止めたいところだが、まあ実際は素手の殴り合いで姫に勝てる奴など居ない。


 アイツ地獄を見るだろうな。南無阿弥陀。


「お?ホントに女のお前が勝負でいいのか?ああん?」


「アニキ! コイツ等なめてますぜ! いっちょこの勝負の厳しさ教えてやって下せえ!」


「わたしは全然平気~」


「後悔すんなよ? まあハンデとしてお前はガードしてもいいぜ。それでも耐えきれんだろうがな」


「さすがアニキ! お優しい!」


 自分がやる訳じゃないのに子分やたらはしゃいでる。腹立つな。


「じゃあ一発目行くぜ! 泣かしたらあ! オラァ!」


「うひょーアニキの強烈なナックルが炸裂だ!」


 いや、炸裂していない。姫は片手で受け止めている。


「や、やるじゃねえか。こりゃ遠慮は要らなそうだな」


「じゃ~次はわたしの番ね!」


「おうおういつでも来いや。ショボいパンチ打つんじゃねえぞ?」


 腕を組み余裕で身構えるギダン。


「こっからがアニキの本領発揮だ! アニキはな、どんな攻撃喰らっても微動だにしねえんだよ! 声一つ上げねえ!」


「それじゃ行くよ、え〜いっ!」


「がはっ!ぐほああぁ!!」


 まともにみぞおちにパンチを食らい、ギダンは悶絶した。


 姫の攻撃をガードもせず受けるとは……自殺行為だぞ。


「アニキ! そんなにオーバーリアクションしてやるなんて、流石盛り上げ上手!」


「が……ぐ、ま、まあな。しかしやるじゃねえか、予想以上だぜ。もう俺も本気出す!」


「おお!アニキの本気なんて滅多に見らんねえぜ!」


 ギダンの魔力が高まっていく。


「オウラぁ! 喰らえ! 超ナックル!」


 また姫は片手で止めて見せた。


「嘘だろ……」


 キングオーガの顔が絶望に染まる。


「じゃ次いくね」


「アニキ! 次こそは遠慮なくスゲエ根性見せてやってくだせえ!」


「えーいっ!」


 メキャ!


「うぐあああぁ!!」


 ギダンはもはや地べたに倒れ込み、のたうち回っている。


「さあこっからがアニキの根性の見せ場っすね!」


「いやアカン……」


「え?」


「むりむりむり……」


「アニキの根性でも?」


「いやちゃうねん、これ根性とかそういう問題じゃない。むりむり、死んでしまう。ちょっともう勘弁して……」


 心がが折れたようだ。自慢のリーゼントもしなびている。


 いやーよく頑張った方だよ。



「勝負ありましたね」


「みたいだね〜」


「さすが姫様、圧勝でしたね。

さて、二体とももう片付けてしまいましょうか?」


「う〜んそうだね〜」


「どうします姉御? やっちゃいましょうか!」


 !?


 子分オーガが寝返ってきた。

 なんて変わり身の早さだ。


「ロベルトの兄貴! 三人でボコってしまいましょうか?」


 いやボコされるのはお前だろう。立場的にも性格的にも。



「まだだ! まだ終わっちゃいねえ!」


 !


 驚いた事にギダンはまた立ち上がってきた。


「まだオレはやれる! やってやる!」


「やめておけ、まだ実力差が分からんのか」


 これ以上やると死にかねんと言うのに、確かになかなかの根性だな。



「男にはなあ! ダメだと分かっていてもやらなきゃならない時がある! それが今なんだよ!」


 ギダンが吠える。それと共に、ヤツの魔力が以上な程高まってきた。


 コイツの中でなにか限界の壁を超えたのだろうか……

 これは警戒しなければ!


「さすがアニキ!信じてましたぜ!」


 また子分オーガが寝返った。



「さあ行くぜコラぁ! 最後の勝負だ!」


「よ〜しいいよ〜! まだ不完全燃焼だったしね!」


 姫の魔力も高まっていく。


「オゥラぁ! 超超ナックル!!」



 渾身の力を込めたであろう一撃。しかし姫はまた片手で受け止めた。


「クソッ……やっぱダメかよ……」


 またギダンの顔が絶望に満ちている。



「姉御! 見事です! 一生ついて行きます!」


 お前もう後でボコる。


「今度はこっちの番ね」


「聖華掌!」


 光を纏った拳はがギダンを撃つ。


 強烈な一撃をくらいギダンはそのまま岩に叩きつけられた。



 …が


 立っている!


 全身血だらけで明らかに満身創痍。

 しかしヤツは、それでもまだ立っていた!


「グ……ア、ガ……」


 意識も虚なようだ。この状態で立ち上がるのは何かヤツなりの矜恃であろう。


「ウ…オレはこの辺りの魔物のヘッドなんだ。ナメられる訳には…いかねえ……」


「アニキ……」


 なるほどな、いや実際大した根性だよ。


「なんかかわいそうになってきちゃったね〜」


「そうですね。しかしこのまま放っておく訳にはいきません。私が片付けます」


 もう軽い攻撃でも終わる。せめて苦しまぬよう一撃でトドめをさしてやろう。


「じゃあな。凄い根性だったよ、お前は」


 剣を構え振り下ろす。


「うわああああ! ダメだー!」


 ザンッ!


 !?


 突然子分オーガが間に割り込んできた。入り身を挺してギダンを庇ったのだ。


「ダメだ! ダメなんだ! アニキは……オレのアニキはやっぱりアニキ1人だけなんだよー!」


 子分オーガは号泣しながらギダンにしがみついている。


「やるならオレやれ! アニキはやらせねぇ!」


「トシオ……おめえ……」


 トシオ、お前そんな名前だったのか。


「頼む。コイツは見逃してやってくれねえか?

オレはどうなってもいい。虫のいい話だとはわかっているが……」


「そんなアニキ! そんなのダメだ!」



「ロベルト〜……」


 うーんこれではこちらが悪者のようになってきたな。


「……わかった。では貴様ら我が軍に入れば2人とも命は取らん」


「ありがてぇ!」


「しかし良いのか?魔王を裏切る事になるぞ?」


「寝返るのは得意でさぁ!」


 トシオが先に答える。お前はちょっと反省しろ。


「構わねぇ、元々魔王とは力だけの関係でした。今は姉御の強さに見惚れました。喜んで舎弟になります、ロベルト兄貴!」


「姉御! ロベルトの大兄貴! よろしくお願いしやす!」


「よかったね〜☆」


 色々不安はあるが、姫が満足そうだからこれで良いとしよう。


〜〜


 経過観察し働かせてみたが、ギダンは驚く程真面目なヤツだった。


 早寝早起き、挨拶はしっかり。洗濯物もちゃんとたたむ。


 そもそも今回ゆっくりしてたのは大した被害が出て無かったからだった。


 トカゲに乗り爆走するだけ、たまに旅人を脅して小銭を巻き上げる程度だ。


 結局は単に構ってちゃんなだけだったのかも知れない。


 時々は人の居ない所でまだトカゲに乗りパラリラパラリラやっている。




 

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