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2話 Kings〜トロール〜①

 ニ日後、東の町シナモナに到着。

 美しい湖と深い森林に囲まれた、保養地の様な町。美しく穏やかな景観の為観光地としても人気だった。


 いずれ、この美しい湖にもキングトロールはやってくるだろう。


「ここがマッチョで有名な、東の町シナモナね」

 姫は東の町をなんだと思っているのか。やたらマッチョを押す。


「だからマッチョの産地ではないし、住んでる人も普通ですよ」


 ふと、気がつくと、姫の来訪に気づいた街の人が集まってきた。不安にかられた日々だったのたろう。皆期待に満ちた目でこちらを見ている。


「おお……姫様が、勇者である姫様が来てくださったぞ!」


「東の街のみなさん! 安心して下さい。運命の女神の加護のもと、私、勇者エミナが必ずトロールを討伐してみせます!」


 その力強い言葉に、安堵した人々は沸きたつ。さすが小さい頃から公務を勤めてきた姫、民衆に対しての対応は完璧だ。


 町長に案内され、我迎賓館で休憩を取る。応接室で落ち着きながら、キングトロール討伐の作戦を練る。


 今回の討伐パーティーは4人。俺と姫様、そして騎士団の精鋭クルセラ、回復魔法に強いモデム。


「じゃ〜まずはロベルトが囮となって、トロールに突っ込む」

「いやいったい何の囮ですか……」


 いきなり姫から大雑把な作戦が出る。無駄死に確実。まとまらないので、クルセラがトロールについて説明してくれる。


「えーまずトロールの特徴としてはですね。大柄で力が強く、スピードはそれほど速くない、典型的なパワータイプでありますね。なので速度で攪乱しダメージを与えるのが、定石ではありますね」


 うん、一般的なトロールの印象だ。しかしあくまで普通のトロールの場合。今回はキングと名を冠する者だ。特殊は性能を持っているだろう。


「じゃあじゃあロベルトは囮となって、足にしがみつく作戦で」

「いやなんで! 足が遅い奴の足にしがみついて足止めして何の意味があるんですか」


「トロールもびっくりするかもよ~」

「トロールにサプライズしてどうすんです……今日トロール誕生日か何かですか?」


「いやその作戦ですね、ありかも知れないですね」

 いらんこと言うなクルセラ。


「囮と言うよりはですね。どちらか一方に注意を引きつけて、死角から攻撃すれば、スピードの遅いトロールは、対応できない可能性はありますね」


 キングが通常のトロールと同じかは不明だが似たような性質はあるだろう。この作戦で行く。

 死角からの攻撃は当然姫だ。囮役は我々三人のうち誰かとなる。


「じゃ~ロベルトで〜」

「やっぱりですか。この二人も立派に囮役は果たせますよ?」


 囮をやりたくなのであろう、クルセラはうつむいて何も言わない。モデムは最初から、一言もしゃべってない。


「え~でもわたし、ロベルトと一緒のコンビがいいな~、ダメ?」


 甘えたような顔で姫が言う。これでイヤと言えるわけがない。ずるい。

 

 結局俺が囮役をすることになり、攻撃役に姫。

 クルセラとモデムはその間、邪魔が入らないように、周りに居るであろう手下のトロールの相手をする事になった。


 囮はイヤだがまあどちらにせよ、だな。姫が勇者の力を行使するには、しばらく力を溜めないといけないので、時間稼ぎは必要だ。


「では囮が上手くいったら、後ろから雷魔法を撃って下さい」

「え〜魔法は苦手だから直接攻撃したいな〜」


「ダメです。どんな攻撃をしてくるかわからないので危険です」

「ちぇ〜はいはい」


 不満顔の姫。本当にわかったのだろうか。


〜〜


 町長の話によるとトロール達は普段は滅多に森の中から出てこないらしい。

 しかし3ヶ月程前突然、湖のほとりに居た二人の青年がさらわれたとの事。


 最初はただの失踪かと思われたそうだ。


 しかし捜索隊を出したところ森の中でキングトロールの存在が確認される。精鋭を差し向けるも返り討ち。


 さらわれた2人の青年は、未だに帰ってきていない。


 すでに殺されたか、生きていたとしてもどんな目にあわされているか……。すぐに救出に向かわねば!


 さっそくトロールを探しに森の中入る。案内役は東の街の兵士セド。

 草木をかけ分け、以前キングトロールが目撃された現場に向かう。


「いや~ロベルト~虫が居る~」


 えーい姫の機嫌をそこねるな、虫。

 虫除けの香木を炊きながら森奥まで進む。しばらく進むと独特の匂いと気配が飛び込んできた。


 居た……! 巨躯な体、薄黒いの肌に正気を失ったような目。見るからにガサツな風貌。トロールだ。 


 意外にも、トロールの住処はすぐに見つかった。森の中に、木々がなぎ倒された広場にがあり、そこに数匹のトロール。


 乱暴になぎ倒された木々が、トロールの凶暴性を物語っている。


「あの中にキングトロールは居るか?」

 案内役のセドに問う。トロールを見回すセド。


「いえ、あの中にはいません。後ろにある洞窟の中に居るのかも……見た目も特徴的なので見ればすぐ分かります」


「じゃ~ささっと片づけちゃいましょ~!」

 森歩きに飽きた姫が、その場に居たトロールをあっという間になぎ倒した。


「流石です姫。後はあの洞窟の中を……」

 そう言いかけた時、洞窟から声が響いた。


「グルルルル……!」

 中から、うなり声と共にモンスターが姿を現す。


 異様な気配、一目見て分かった。キングだ。他のトロールより小柄ながらも、鍛え上げられ発達した筋肉。


 見事な逆三角形の筋肉、美しくひき締まった肉体。力強い眼差し。

 ハリツヤのある健康的な肌。それはオイルを塗ったように光テカッていて……


 え? コイツ本当にトロールか!? ボディビルダーかなんかじゃないのか?


「わ~すごいマッチョだねー」

「確かに…トロールとは思えない程です。よほど鍛え込んでるのでしょう」


「ほら~やっぱり東の町の名産はマッチョだったね」


 違う。



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