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1話 騎士ロベルトとエミナ姫

 ゆるふわパーマ、160センチの小柄な体、クッキリとした大きな瞳。そして、薄桜色の丸い頬。

 

 ひと目で見て美少女と分かる。この女の子が、我がオルリア国の王女であり、勇者様だ。


 東の森で凶悪なモンスターが暴れている。このままではモンスターは、やがて王都にもやってくるだろう。


 人々を守る為、私は騎士になった。


 恩義ある王の為にも、姫と共に東の森のモンスターを討伐せねば!


〜〜


 コンコン。姫の部屋をノックする。王都への通り道、途中の宿屋でのことだった。


「姫、ロベルトです。先程王都から使者があり連絡がきました。入ってもよろしいですか?」


「はーい、いいよー」

「失礼します」 


 ゆっくりとドアを開ける。中にはダラけている女の子。エミナ姫だ。


「えーちょっとちょっと、女の子の一人部屋に入ってくるなんてどういうつもり~?へんた〜い」


 ショッピングから帰ってきて、やることがないのか姫はベットでグータラしていた。


「先ほど入っても良いとおっしゃられたじゃないですか」

「言ったけど~それでも普通入ってくる?」

「そりゃ入るでしょう」


「デリカシーなーい」

 うーん姫は相変わらずだ。本気で言っている訳ではない。からかい半分だ。


「あ、そうそう見てロベルト。クマの髪留め買ってきたんだ~、かわいい?」


「ええ、可愛いしよく似合ってますよ」

「えへへっ」


「他にもね、カチューシャと白のキャミと……

あ、それで連絡はなんだって?」


「は、本国から連絡がありました。東の森でモンスターが暴れ、近隣の街が襲われているようです」


 報告によるとキングトロールが出現したとの事。キングと名がつくだけあって相当な戦闘力と脅威。通常の兵士では対応できない。


「え~こないだもでっかいドラゴン退治したばっかりじゃん。もう疲れた、わたし行かな〜い」


「姫そう言わず……キングトロールは凶暴でレベルも高く、通常の兵士や冒険者では太刀打ちできません。王も対処に困窮しているようです」


「パパが困ってるかなんて知らな〜い。自分で行けばいいじゃない、キング同士気が合うかもよ〜」


 連続のクエストで少し不機嫌になったのか、姫は投げやりに言い捨てた。


 姫は運命の女神に選ばれし勇者であり、その剣は大地を割り、その魔力は雷を呼び寄せる。

 ほとんどの魔物は瞬殺できるほど強大な力を持っていた。


 けどちょっとわがまま。


「まあまあ姫……東の町の人々も、勇者であられる姫様を待ち望んでいます

「東の街なら、マッチョな人たちがいっぱい居るから大丈夫よ〜」


 マッチョ。無茶苦茶である。凄く、凄く適当に言っている。


「別に東の街はマッチョが名産なわけではありませんが……。やはり姫の強大な力が必要なのです」


「え〜、こんな清楚でか弱くおとなしい女の子つかまえて強大だ、なんてひど〜い」


「ドラゴンを一撃でまっぷたつにする人が、か弱くは……」


 こないだ姫はドラゴンをまっぷたつにした。横ではなく縦に。


「あー! もう変な事言った! もうだめ! 絶対行かない!」


 参ったな、すっかり拗ねてしまった。こうなると強引に行こう行こうではダメだ。


 東の町は観光地。そこでバカンスを提案してみた。討伐が終わってからの楽しみにと。明るい話題だと姫の気持ちも変わるかも。


「こないだのドラゴンの時も、そんなこと言ってたじゃない。それよりエステ行きたいな〜」


「では、トロール退治が終わったらエステ行きましょう。ちょうど東の町にはエステの店もあります」


「そこのエステじゃなくて〜。トラステムの街のエステ行きたい。なんか新しくスライムエステって流行ってるんだって」


 トラステムの場所は東の町とは逆、西にある。東から西に。太陽か。すぐに行くのはちょっと無理だ。


「じゃじゃ、トロール退治が終わったら行きましょう」


「えーここはあえてエステが先がいいかな。綺麗になってサッパリしてからの~、モンスター退治ね」


「なんでですか! モンスター退治よりエステを優先させる勇者なんて聞いたことないですよ」


「ほら~また勇者勇者って。勇者だって女の子だから肌ケアしたいでしょ」


 落ち着こう、冷静になれ。ここで姫の機嫌を損ねてはいけない。


「うんうん肌ケア大事ですよね。私も大事だと思います。トロール退治が終わったらね、思う存分行きましょう」


「じゃあじゃあ東の街の人たちにも、トラステムの街に来てもらおうよ〜。安全だしエステもできるし一石二鳥」


 もちろん本気で言っている訳ではない。適当さが極まってきた。そもそも普段エステなんて行ってないのに。


「いやエステの為に、街ごと引っ越しなんて無理ですよ」

「じゃあトロールに来てもらおうよ。エステもできてモンスター退治もできるし一石二鳥!」


「もっと無理でしょう! トロールにエステがあるのでちょっと来てくれ、なんて頼んでも来るわけないですよ」


 もう明らかに面倒くさいくなってる。ただゴネてるだけ。ここは乗りこえねば。姫はなんだかんだで、最期はちゃんと行動してくれる。


「も〜、やってみないと分からないでしょ。ちょっとロベルト行って頼んで来てみて〜」

「ええ……多分頼んだ瞬間殴り殺されますよ」


「ん~でも人間話してみないと分からないじゃない?」

「トロール人間じゃありませんよ」


「とりあえずね、一回頼んでみてダメだったら諦めて東の街まで行くわ。ね、そうしよ〜」


「ええ、私マジでトロールに頼みに行かないとダメですか」

「だめですかね~」


 いやいやダメな訳がなかろう。ここで言い負けたら、下手すりゃマジで死んじゃう。頑張れ自分!


「ほら、姫様も私が死んだら悲しいでしょう?」

「ん~どうでしょうな〜」


 アカン、死んでしまう。


「あ! そうだ姫様。さきほど街のケーキ屋でモンブランを買ってきたんです。いったん休憩して食べましょうか」


「え! ほんと!? 食べる食べる~」


 食いついてきた。今度は上手く行きそうだ。紅茶もいれてティーブレイク。アッサムティーの甘く芳醇な香りが部屋に広がる。一気に雰囲気が変わった。


「わあ~かわいい~美味しそう!」

 ケーキに目を輝かせる姫。


「砂糖に拘っているそうで、ここサンミル地方名産の、癖のある独特の砂糖を使っているそうですよ」


「ん~おいし~い!」

 満面の笑みで口いっぱいにモンブランをほおばる。いい感じいい感じ。


「んも~しょうがないな~ロベルト君は。食べた分は運動しないといけないし、トロール退治行きますかっ☆」


 やった…やったぞ! だんだん姫の扱いに慣れてきた。レベルアップしたものだ。

 

 こうしてトロール退治に出かける事となった。



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