表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/32

17話 アキアとギダン

 グラークとアッシュが精神的なインパクトと、物理的なインパクトを残し演習場を去り、また次の組が現れるのを待った。


 次は若い女性騎士のアキアとキングオーガのギダン。


「お待たせしましたー。待ちました?」


 まずはアキアが来た。


「え、どうなんです? どれくらい待ってたんですか?」


 さっそく出たアキア節。質問の意図がよくわからない。待ち時間を伝えたところでなんになるんだ。


 この子はいつもこんな調子だ。言葉や伝え方が変。ひと呼んで失言クイーン。めちゃくちゃ失礼な事をいう時もある。だからクフェア隊に居るのだ。


「大丈夫だ、それ程待ってはいない」

「本当ですか? 嘘ついてないですか? なんで嘘つくんですか?」


 なぜそこを掘ろうとする。


 いや、わかっている。待たせた事によって、俺が怒っていないか心配しているのだ。根はいい子なのだ。ただ言葉のチョイスが変なのだ。


「今日は誰が来るんです? 隊長のあれですか?」


 隊長のあれってなんだ? 俺のどれなんだ? さすが短い言葉でも、ツッコミたくなる事を言う。


 イライラはしない。根はいい子だからね。イライラを通り越して困惑する。


「オーガのギダンを呼んでいる。今後コンビを組んでもらおうと思ってるんでね。現場でいきなり組むより、事前に顔合わせした方がいいだろう?」


「あーそうだったんですね! 確かに! 隊長も考えたりするんですね」


 考えたりするんですね……?


 どういう意図で言ってるんだ……? これは煽ってるんじゃないか? マジで言葉がぶっ飛びすぎてて、思考が追いつかない。


 喧嘩になりそうなのでミニアには帰ってもらった。


「ああん? 今日はなんの用だ? カチコミか?」

 ギダンも来た。子分オーガのトシオも引き連れている。


 お互いの紹介と、呼び出した趣旨の説明を済ませる。後は野となれ山となれ。


「えーギダンさんは、なんでオーガをやってるんですか?」

「ああん!? 生まれた時からオーガだよ! おめえ人間に、なんで人間やってるんですかって言うか!?」


 おお、ギダンがツッコミに回っている。


「いや、あの違うくて、オーガなんてやってて辛くないですか?」


「……」


 ギダンがフリーズした。わかる。言葉がぶっ飛び過ぎてて脳が追いつかないのだ。


「アニキ、こいつ喧嘩売ってますよ」

「えーそんなつもりじゃないんです! ごめんなさい!」


 アキアの言葉を翻訳するとこうだ。

 ギダンさんはオーガなのになんで人間側についているんですか? その立場は辛くないですか? とギダンの心配をしたのた。いい子だ。


「トシオさんはなんなんですか?」

「! アニキ、こんな事言うてますよアニキ!」


 それはそう思う。トシオはなんなんだ。


「トシオさんとギダンさんはできてる……っじゃなくて、仲良しなんですよね」


 ギリギリ言い直した。

 フリーズしてたギダンが我に帰る。


「おいロベルトの兄貴、さっきからコイツはいったい何を言ってるだ!?」


 うおお、こっちにきた。ふるなバカ。飛び火する。


「えー、私そんなにおかしな事言ってます? 隊長なら理解できますよね?」

「うーんまあ、若干言葉選びはおかしいかなー」


 理解できますよね? もおかしいっちゃおかしいぞ。


「付き合って長いんだから、隊長なら分かるでしょう。同罪でしょ?」

「ああん!? 付き合って!? 同罪!? テメーら最初からグルか!」


 「出会ってから長い、の間違いだ。同罪はよくわからん。仲間でしょうの間違いかな」


 困惑するギダン。疑問符でいっぱいの顔だ。


「……どういうつもりかわからねぇが、戦場で組むなら、まず弱くちゃ話にならねぇ。怪我したくなきゃちょっと力を見せてみせろ」


 ギダンの拳に魔力が集まる。攻撃する気だ。


「わかりました」


 アキアの表情も真剣になる。


重郭の壁(リリーフウォール)


 アキアとギダンの間に、透明な二重の防御壁が張られていく。アキアの能力は防御に特化しているのだ。


「ぐええええ」


 二重の防御壁の間に、運悪くトシオが挟まった。


「トシオー! おめぇ、この狭い隙間にトシオ挟まってんじゃねえか!」

「ああ! ごめんなさい!」


「待ってろトシオ! すぐ出してやる!」


 防壁を壊そうとガンガン叩くギダン。拳に押されてさらに狭くなる隙間。


「あああギブギブギブ!」



 トシオ救出。


 アキアが防壁を解いたのだ。


「あんだけ殴っても壊れなかったんだ、とりあえずお前が強ぇのはわかった」

「ギダンさんは強くならないんですか?」

「ああん!?」


 ギダンさんは本気を出していないでしょう? という意味だ。


 もう面倒くさくなってきたので、後は二人で話し合ってもらう事にした。疲れた。


 

 さて、これで魔王討伐の為の編成は済んだ。いよいよこれから、魔王の副官という者の居城に攻め込む。いつも魔物が現れてからの対処対処だったが、今度はこちらから攻め込む。


 その副官を倒し、魔王の居場所を吐かし、魔王に攻め込み、一気に片をつかてやる。


 長らく目標だったもの、ようやく実現が見えてきた。


 魔王が現れるから勇者が現れる。これは古来よりそうだった。必ず魔王が先だ。魔王を倒せば、俺の目標は一応は終わる。一応……



 考え込んでる内に、アキアとギダンの話し合いが終わった様だ。


「……こいつが悪いヤツじゃねぇ事はわかった」

「ギダンさん頭良いんですねー」

「ああん……」


 そうなんだ。しばらく話し合うと、なぜか悪い子じゃない事は伝わるんだ。

 理由は上手く説明できない。俺たちはなにか洗脳されてるんじゃないだろうか。ギダンのああんも力ない。


 まあ人間は言葉より、その姿勢や行動で人を判断してるって事だろう。姿勢や行動にその人の心が現れる。大事なのは心だ。



「隊長。ギダンさんと仲良くなれて良かったです。今日は帰っていいですか?」


 帰っていいですか……? いやいいんだけど、やはり言葉がいちいち引っかかる。


 ダメだ、見ないといけないのは姿勢と行動だ。心だ。今そう考えたばかりだろう。


「隊長? どうしたんです? 考えこんで。なんか今日はずっとあっちに行ってますよね。あの日ですか?」


「どの日だよ! さすがにダメだろ! ってかその前のあっちってどっちだよ!」


 結局最後は耐えきれず、盛大にツッコミ終えるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ