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憧れの姉

作者: 雪野湯
掲載日:2019/12/19

 私の家は古くから伝わる日本舞踊の名家。

 その名家には三人の娘がいた。

 姉と私と妹……。



 姉はとても美しく、舞踊の才があり、みんなから期待されている。

 そんな姉は私にとっても憧れであり、誇りでもあった。

 今日も私は扉の隙間から姉の舞踊を見つめている。


 隙間から見る姉の舞いは万華鏡のように変化し、私の瞳を魅了する。

 瞳に宿る舞姿(まいすがた)は私には届かないもの。それでも、瞳に映る美しさを欲した。

 私も美しくなりたい。みんなに自分を見てもらいたい。

 

 その想いが心から指先へ伝わり、そっと扉を開く。

 私は、隙間から姉を見るのをやめた。

 そんな私を見て、姉は優しく微笑む。

 その微笑みさえも、私にとっては手に入れ難いもの。


 そうであっても、少しでも姉に近づきたいと思い、私は憧れの姉の真似をするようになっていた。

 

 姉のように美しくありたい。咲き乱れる花のような舞いを踊ってみたい。

 私は姉に憧れ、近づき、そばにありたくて舞踊に傾倒する。

 その甲斐あってか、周囲から認められるようになっていった。

 これは執念と呼ぶものだろうか……私は姉を目指し、姉そのものになりたい。


 だけど、姉がいる限り、私は姉にはなれない。

 舞台に立つことも、舞うことも許されない。

 私がどれだけ努力を重ねようと、姉こそ姉であり、決して私では届かない存在……。



 ある日のこと、姉が亡くなった。

 事故死だった。 

 私は見ていた。高台から足を滑らせ落ちてしまった姉の姿を。

 そう、私は見ていた。みんなもそれを信じた。だから、事故死……。


 姉がいなくなった。

 姉がいない……あの舞台に姉は居ない。

 

 私は姉が立っていた舞台に立ち、舞いを踊る。

 今日からは、私が姉なのだ。



 私は姉のように舞う。

 淑やかでありつつも大人の色香を内包し、皆の心を桃源郷へと(いざな)う。

 そう、私は姉になったのだ。


 私は舞いを踊る。

 その途中、ふと、何者かの視線を感じた。

 ちらりと視線を感じた方向に目を向ける。


 そこには、扉の隙間から私を見つめる妹がいた。

 妹の瞳には、万華鏡のように変化を繰り返す私の姿が映っている。

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