テイマー・ダグラス
ピカッ!
隠密行動を行っていた俺達は、突如として複数の方向から指向性を伴った光を当てられた。
周囲で働いていたドワーフ達は作業を止めて散り散りとなり、俺達以外誰もいなくなった。
「兄さん、これは待ち伏せでは!?」
「ああ、そうみたいだな。全員どこから攻撃が来ても避けれるように警戒しとけ!」
俺達と来たドワーフ達を中心に、円となって全方向へ警戒を強める。
ここは要塞拠点の最新部、人がいなくなれば小さな物音も大きく響き渡る。
そしてカツカツとブーツが地面を鳴らす音が木霊して、光の中に現れた男はスキンヘッドに上半身は裸、ズボンは真っ黒のレザー仕様だった。
ボトム以外はオズマもこの男も、親子と言っても差し支えないレベルだ。
「姿消してても、纏ってるオーラは消せねえよ。特に、熟練の"至る者"の前ではそんな子供騙し、通用しねえ」
バレてるようなので"光学迷彩を剥がして姿を晒す。オズマの親父は俺達の姿が見えると、咥えていた葉巻を地面に叩き付けてブーツで火を消した。
「ケッ! 女が多すぎじゃねえか、少しは恩恵受けてるのか? ──クソボウズ」
呼ばれたオズマは大剣を抜いて突き付ける。
「伝説の大傭兵になるとかいって、なったはいいが戻って来なかったじゃねえか、今更父親面すんじゃねえよ!」
どの時期に家を飛び出したかはわからない。だがどの時期であっても、父親が帰ってこないというのはその家庭にとって負担であり、オズマが母子で苦労したであろう事が言葉の強さから窺える。
「まぁ、その件については悪かったと思ってる。その……アイツは生きてるのか?」
「去年死んだよ……最期までアンタを待ち続けてたんだ。なぁ、アンタはそこで何やってんだよ……テロリストになって、何やってんだよ。帰ってこいよ、お袋に詫び入れろよ!」
オズマの親父は天を仰ぎ見るように上を向いたあと、頭を振ってブーツで地面を鳴らした。
「それよりも、やらなくちゃいけねえ事があるんだよ」
「そうかよ、じゃあアンタをぶっ倒してその首だけでも墓前に持って帰るしかねえよなっ!!」
その言葉を皮切りに両者の武威が膨れ上がる。
「全員はちと無理だわ。ってことで出でよ! 秘奥義"テイマーズジャンクション・ファイアドラゴン"」
天井をぶち破って巨大な火竜が現れた。全員が驚愕するなか、ルナが解説を始めた。
「この男、弱ジョブと言われた"テイマー"ニャ……だがこの力、明らかにテイマーの限界を突破してるニャ!」
「うむ、しかもワシらの天敵とされる東方未踏領域の主……ファイアドラゴンを使役してるようじゃの」
と、ドワーフがルナの説明に補足をつけて話した。
あれ程の魔物を使役できると言うことは、この男は未踏領域を楽に攻略することができるのだろう。高レベルの魔物が闊歩する領域において、これ以上にない人材と言える。
──大器晩成型の強ジョブ、一筋縄ではいかないだろう。
そしてオズマの親父は背中に担いでいた調教用の巨大ブーメランを手に取って構えた。
「じゃあ、名乗っておくか! 俺は元西方災害壁調査隊ダグラス! 今は名も無き部隊のエイトだ、いざ尋常に勝負ッ!!」
こうして、名も無き部隊のエイトとの戦闘が幕を開けたのだった。




