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ドワーフの協力依頼

「頼む! ワシらの土地を取り返すのを手伝ってくれんか!?」


 宿に着くなり土下座に近い形で頼まれた事に全員驚いた。エルフの時みたく、何かしらの派閥争いや人間不歓迎から戦闘に発展すると思っていたからだ。


 とは言え、事情を聞かないことには何とも言い難い。まぁ、ほぼほぼ助けることに気持ちは傾いてるがな……。


 雪奈がドワーフの肩に手を置いて、語りかけた。


「取り敢えず、ゆっくり話してください」


 それを見ていた両サイドのドワーフ達は、涙を羽毛のような髭に垂らしながら頭を下げていた。


 こうして、ドワーフ3人組と俺達の話し合いが始まることとなった。


「今日ここに来たのは採掘の助っ人募集じゃなかったのか?」


「本来ならそうなんじゃが……ついこの間、ワシらの要塞拠点フォートレスが落とされての。同胞のほとんどが捕虜にされて、ワシらだけがなんとか逃げ延びたんじゃ」


 装備を見ると革で出来た防具はボロボロで、3人の大鎚も柄が折れたり鎚が欠損している物まである。

 飛竜や襲撃者と戦いながら未踏領域を走破する……うん、今の俺達にも厳しいかもしれないな。


「それで、ソイツらはどうやってアンタらの要塞拠点フォートレスを落としたんだ?」


「うむ、一月程前のことじゃ──」


 ドワーフ達の情報を総合すると……一月前に空飛ぶ鉄の塊が3体ほど現れて、それらはいきなり降伏勧告を行ったそうだ。

 当然ドワーフ達は拒否するのだが、ソイツらはいきなり攻撃を仕掛けてきたのだという。

 当初は特製の魔術障壁で難なく攻撃を防ぐことが出来たのだが、上半身ムキムキで黒い革のズボンを履いた男に一撃で障壁を破られたそうだ。


「まるでオズマみたいなやつだな」


「ああ、それ多分俺の親父だ」


「──は? 嘘だろ!?」


「嘘じゃねえよ、元々俺がついてきた理由ってのが親父だったからな。ほら、ワンがオルディニスで蜂起した時に映像が流れただろ? あの面子の中に俺の親父が居たんだよ」


「いや、だが……そうなると確実に──」


「戦うことになるだろうな、でもそれで良いんだよ。アイツは、まだ初等部だった俺とお袋を置いて大傭兵になるために出ていっちまったんだ、だから超えなくちゃならねえ壁だって思ってる」


「良いのか? 下手すれば殺すことになるかもしれないぞ?」


 それを聞いたオズマは、俺とドワーフの肩に自身の肩を組ませた。


「なぁーに言ってんだよ! 俺達は種族統合のために行動してるんだろ? ドワーフのおっちゃんも、そんな湿気た顔すんなよ……いいか? 奴はとっくの大昔に"至る者"になってる。その域の新人である俺じゃタイマンは自殺行為だ、リンチだろうがなんだろうが、パーティで奴を討ち倒すんだ。タクマ、わかったな?」


「だけど仲間の親と戦うとか──」


「あのなぁっ! ──ッ!?」


 オズマが俺の胸ぐらを掴もうとした時、一瞬世界が凍ったような気がして、それをオズマも感じたのか、両手を挙げて優しく言った。


「あー、タクマ。今はそんなことを言ってる場合じゃないだろ? 俺の親父だけ特別扱いしてくれるなよ」


 ここに至るまで、可能な限り敵の命を奪うことは避けてきた。ブルックやルギスはともかく、攻撃の余波で命を落とした者だっているはずだ。

 それらの犠牲の上に俺は立っている、仲間の親というだけで躊躇するなと言いたいのだろう。


「わかった……。だけど、生かす努力はするつもりだ。そこだけは譲れない──剣を振るい、可能な限り人を生かすのが"勇者"……俺はそう在りたいからな」


 それを聞いたオズマは何故か上を向きながら背を向けて「──了解した」と涙声で言った。


 ☆☆☆


 一触即発かに見えた空気も途中で感じた冷気のおかげで、和やかな空気を取り戻した。今は各々明日に備えて親睦を深めている最中だ。


 オズマと飲み比べをしていたドワーフが何かに気付いた。


「オズマ殿、コップの取っ手が取れとるぞ? この際だ、ジョッキにしなされ」


「あ、マジだ。わりぃ、マスター、壊しちまった。代金置いとくからよ、ジョッキでビールをくれ」


 オズマは不思議そうにしながらも、弁償のためのお金を置いて追加注文をしている。


 なんだろう……かなり人為的なものを感じる。


 俺はパーティメンバーの行動を一通り観察した。

 ティアはお付きのドワーフの髭で遊んでるし、ライラはマスターに酒を注文しようとして逆に怒られている。

 雪奈は宿の入り口の席で刀を抱いたままオズマへ視線を向けている。それを見た俺は確信した。


 ──雪奈さん、小悪魔モードになってらっしゃる。


「あれ? マスター、このジョッキ取っ手が取れたんだが……」


 オズマがジョッキを取ろうとしたら、取っ手だけが持ち上がっていた。


 今、一瞬だけ見えた。雪奈は、刃を数センチだけ見せるように抜いたあと、柄にぶつけるように納刀していた。

 その際に生じたエネルギーでジョッキの取っ手を斬ったのだ。


 まぁ、要するに──剣気だけで物体を斬ったことになる。


 たまに雪奈はこういったイタズラをオズマに仕掛ける時がある。所謂小悪魔モードというやつだ。余程オズマの態度が許せなかったんだろうな。


 俺は雪奈に近付いたあと、刀を没収した。


「ああん! 兄さん……」


「雪奈、オズマだったから良かったものの、他の奴だったら下手すりゃ失神するかもしれないんだぞ?」


「──ごめんなさい」


 反省した雪奈に刀を返したあと、俺は雪奈の隣で晩酌を始めたのだった。

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