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vs黒い魔道鎧

 俺達はそれぞれが工夫を凝らしてスキルを使っている。ティアとライラを除くメンバーが"至る者"に辿り着いたのはそのせいだ。


 だが、それでもドワーフ達にとってはまだまだ甘いらしい。


 ドワーフは巧く斬れと言った。スキル依存のこの世界で、スキルを使用する際の微妙な差異を利用して通常より大きな結果を出せと、そう彼は言っている。


 全員で取り囲み、阿吽の呼吸を以て攻めを始める。一見するとリンチみたいで嫌だが、強くなるためには貪欲でなければならない。


 ──その為に、犠牲になってもらうことにしよう。



 意外にも1番槍を決め込んだのはティアだった。細剣で敵の魔力剣を器用に弾いて、破損箇所を的確に攻めていくスタイルだ。


 細剣の真価は刺突にあるが、ティアは近接系のジョブではないので真価を発揮できない。だが、細剣は柔軟性にも特化している。


 ティアはその部分だけを伸ばし始めていた。


 ザンッ!!


『──クッ!』


 敵の魔道鎧から初めて声が聞こえた。ティアは別に手を前に掲げなくても剣の一振で月光魔術・翠月刃が使える。


 細剣による刺突を警戒し過ぎた。敵のミス、それにより破損箇所がさらに広がってしまった。


「お兄ちゃん、私は満足したので下がります」


「ああ、わかった」


 ティアと交代で前に出たのはオズマだった。敵も障壁が復活したのか、すぐに展開し始めた。


 オズマはそれを見てニヤリと笑って大剣を一振。


「"パワースマッシュ・極"!!」


 バリンッ!


 うん、俺にはどこに変更点があったのかわからない。ただ、街で戦った魔道鎧の障壁を破れなかったが、今回は俺達の支援なしで障壁を割っている。


 脳筋のオズマにしかわからない工夫をしたということで納得することにした。


「次はライラ嬢ちゃんだぜ!」


「わかってますよ! 巧く突くというのはこう言うことです! "セイクリッド・ヴァレスティ"!!」


 エーテルストライクの上位互換であるセイクリッド・ヴァレスティは聖属性のヴァルキリー専用刺突スキル。


 敵は魔力剣二刀流で叩き落とそうとする。突進タイプの刺突スキルは叩き落としと回避に弱い。特に前者をされると槍が地面に刺さって大きな隙が生まれてしまう。


 敵が振り下ろそうとした時、ライラは両足で地面を蹴って1回転する。その際、石突きの部分が敵の剣を弾いて敵に隙が生まれてしまった。


『なっ!』


「もう遅いですよ!」


 バキッ! ドカンッ!


 槍の直撃を受けた敵は近くの木に叩き付けられて、魔道鎧もほとんど壊れてしまった。近接メレータイプの魔道鎧故に装甲も薄く、内部の人間が見えている。


『……なんつもりだ?』


 敵が語りかけるのは相対する黒髪の女、雪奈だった。


「死にかけですね。障壁が回復するまで待ちます。なので急いでくれませんか?」


『バカにしてッ! "極限稼働オーバーロード"!』


 敵の魔道鎧から魔力の波が押し寄せてくる。しかも通常の障壁とは違って明らかに強固な障壁を展開している。


 どう見てもオーバースペックだ。多分これは帰ることを放棄した人間の最期の輝きなのだろう。


「雪奈、やれるのか? あれは多分、雪奈を道連れにするかもしれないぞ?」


「いえ、逆に好都合です。あれを打ち砕けば敵を生け捕りにできると思いますし」


「わ、わかった。でも危なそうだったらすぐに助けるからな?」


 雪奈は頷き、そして敵の方を向いた。


「命を失うのは怖くない、命を賭ければせめて一矢報いることができる……全くもって無駄ですね。死への恐怖とは、生きたいという原動力でもあります。人の生きたいという想いは、諦めの境地より遥かに力強いのです。なので、あなたのそれは無意味だと──私が絶対的な暴力でお教えします」


 雪奈はいつの間にか降り始めた雪に紛れて消えた。


極限稼働オーバーロード中の障壁はさっきの男でも割ることは無理だ。全方位で展開されたこれを刀で割ることなど不可能だ!』


 ──サン。


「誰が割ると言いましたか?」


 ゴトン……。


 唐突に縮地で現れた雪奈は障壁を真っ二つに斬って、しかも敵の腕まで斬り落とした。


『何故だ!! 障壁を斬るなんて、おかしいだろ!?』


「これが結果です。あなたの命が尽きる前に、あなたの武装を斬り落としてあげますよ」


 そして雪奈はまた雪に紛れて消えた。敵をよく見ると、斬り落とされたのは魔道鎧の腕の部分だけで、中の肉は微塵も斬れてなかった。


『そこかっ!』


 敵は雪奈の気配を感じて魔力剣を振り下ろすが、雪奈を捉えることはできなかった。俺にはなんとなくわかる。雪奈がやってるのは氷雪系魔術と古武術・抜き足の合わせ技だ。


 そしてさっき、わざと気配を悟らせて空振りを誘発させて──おっと、そろそろ来るな。


 ──サン。


「はい、これで全武装解除完了ミッション・コンプリートです!」


 敵は体に少量の鉄を張り付けただけの姿に成り下がっている。だが、敵は納得がいかないのか、雪奈を睨みながら言った。


「な、何故障壁を斬ることができた?」


「ドワーフの人が巧く斬れと言ったんです。なので障壁の脆い部分に刃を通しました。あなたなら知ってるでしょ? 魔道障壁は複数の発生装置から展開されます。と言うことは必ず繋ぎ目があるわけでして──」


「もういいっ! 私の負けだ……どこへなりとも連れていくがいい……」


 興味が失せたのか、雪奈は怒り返すわけでもなく静かに納刀してドワーフ達の怪我の手当てを始めた。


「あれ? 俺の出番が……」


「あ! ご、ごめんなさい、兄さん……」


「い、良いんだ……雪奈が無事なら本望だからさ」


 こうして、俺の出番無しで戦いは終わり、一先ひとまずハルディオスの宿屋で話しを聞くことになった。

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