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東へ向けて

 親父さんとの約束の日、俺達は武器を受け取った。


 全員同じ素材から作られたものなので、シリーズ物として色や装飾が似ていた。

 全員一貫して言えることは"銀色"、"少し発光"していることだ。


「まぁ、その……なんだ。星屑スターダストシリーズって事でよろしく頼むわ」


 オズマは星屑の大剣、ライラは星屑の槍、ティアは星屑の細剣、雪奈は星屑之刀だった。


 全員が武器に見惚れる中、親父が俺のところに来て言った。


「くれぐれもその武器で北に行こうなんて思うなよ?」


「何故だ?」


「その武器は障気を吸ってしまうんだ。元があの尖兵だから仕方ねえが、それで北に行けば何が起きたものかわからねえ。まぁ、北に行くなんて有り得ねえだろうけどな!」


 俺は苦笑いするしかなかった。事情を話しまくって巻き込むわけにはいかないからだ。


 とは言え、俺達の当面の活動の場は、東の現オルディニスと北東の未踏領域だからそこまで問題じゃない。


「ところでよ、東に行くって言ってたよな?」


「ああ、何か問題でも?」


「大有りだろ? 東門は戦時下だから封鎖されちまってるぞ?」


「どうしても東に行かなくちゃならないんだが……」


 親父は頭をポリポリとかきながら俺の剣を渡してきた。


「強力なコネでもあれば別なんだがな。すまん、俺には力になれそうにない。だけどこの武器だけはきちんと仕上げたぜ!」


 親父は俺の前で剣を掲げて赤の魔石をセットした。


「フレームを取り付けた事でこんな風に、疑似強化バッファーが可能になる」


 地面に剣を突き立てた事で半径5mほどの円が浮き上がり、中にいる俺達は少しだけ力強くなった気がする。


「おお、これって俺は付与術師エンチャンターになったってことだよな?」


「さすがに本業さんよりかは弱いけどな。お前さん達、印術師にとっちゃあ、憧れみたいなもんだろ?」


「まぁ、な」


 印術師は闘気無しでは自分以外に付与したり出来ない。だから仲間の強化も出来なかった。

 今となっては闘気があるからなんとかなるが、出来れば紋章術とかに使用量を割り振りたい、だからこの機能は割りと嬉しいんだ。


「みんな、最高級の素材使ってるから手入れは少なくて済む、だけどな……決して怠るんじゃないぞ? 丁寧に扱った物には神様が宿るって言うしな! 大事にすればするだけ応えてくれるんだよ!」


 この世界に付喪神つくもがみの概念があるなんて思わなかったが、言ってることは正しい。ティアとかライラはまだ手入れに慣れてないから後で俺が教えるとするか。


 代金を渡し終えた俺達を親父は引き留めた。


「お前さん達、ちゃんと戻ってくるんだろうな?」


「当たり前だろ?」


 親父の言う"戻ってくる"というのは"生きて"の意味合いが強い。妹と恋人になった今、元の世界に帰る意味も薄くなった。

 それでも、この先を紡ぐためにはどこかで生きなくちゃならない。

 だから絶対に生きて帰るに決まってる。


 ただまぁ、ケジメは必要だよな。向こうには友人や同僚、そしてあの親がいる。

 俺達が消えたことで損害を被った人だっているだろう。


 ──って、世界を渡った俺は何考えてんだろ。そう思うけどな。


 ☆☆☆


 俺達は東門を難なく通行することが出来た。何故かって?

 グレシャム家というコネがあるから"王宮に入れろ"とか以外なら、割りとなんとかなる。


 今は未踏領域の真下にある小さな国を目指している。名前は"ハルディオス"今の時勢では珍しくオルディニスの強力要請を断り、中立を表明していた。


 未踏領域攻略にうってつけの拠点だった。


 そして現在、俺達は広大な草原を徒歩で進んでいる。馬車が出ていないので仕方がない。


 道中の敵は近接戦闘に慣れさせるために、ティアに任せていた。

 大都市に近ければ近いほど敵のレベルは低く、逆に遠いほどレベルは高い。その高いレベルでさえ30程度なので、棒立ちしない限りは死ぬことはない。


 ただ、この世界はレベル差を覆せるから油断してはいけない。レベルが高いからってティアの皮膚が鋼のように硬いわけでもなく、低レベルから強力な殴打を受ければ打ち身レベルの怪我を負ってしまうからだ。


 まぁ、そうでなければこの世界で子供なんて作れないよな。理論上はレベル100の女性と、レベル1の男性は子供を作れる。レベル差を覆せなければ貫通できないからだ。


 そんなことを考えてた時、俺はある事に気が付いてしまった。


「雪奈、ちょっといいか?」


「はい、なんでしょう?」


 前方を歩く雪奈が俺の隣に来て見上げてくる。


「その、あの時何も考えずにしちまったけどさ。大丈夫だったか?」


 この質問、痛みとかそういうものではなく。なんの対処もせずに行った事に対して聞いている。わかってくれるだろうか……。


 こんな遠回しの質問に最初は首を捻っていた雪奈だが途中でわかったようで、ニッコリと微笑んで答えてくれた。


「ドンピシャで危ない日でしたが、ちゃんとお薬飲んでるので大丈夫ですよ」


 ホッとした俺だったが、あることに引っ掛かった。


「なぁ、その薬……ノアから貰った物じゃないよな?」


 ノアから貰った薬というのは、古の近親薬マルーラのことだ。ノアの義父であるアルフレッドが作った珍妙なアイテムだが、まさか使ってないよな?


「あ、その手がありましたか」


「──は?」


 雪奈は俺の手を握り、そして言った。


「この戦いがいつまで続くかわかりませんからね。ちゃんと飲んでますよ」


 今回に限っては信じられるが、次から怪しいな。


 ジーーーーーーー


 目を合わせると雪奈の顔が紅潮し、目を逸らされた。


「あ、いや……えーっと」


 ダウトだ。髪を弄りながらその言葉を発するときは嘘をついてるか、これから嘘をつくときだ。


「次からは俺の前で飲めよ?」


「うぅ……はぃ……」


 シュンと項垂れる雪奈の頭を抱きながら、俺はティアのことを思い出す。


「あ、ティアにも聞かないとな」


「ティアちゃんは薬を飲む必要ありませんよ?」


「え?」


「ティアちゃんは任意のタイミングで危ない日を選べるんです。月の物もありませんし、羨ましい限りです」


 え? 何その超スペック!


 驚愕の事実に驚いていると、殲滅を終えたティアが戻ってきた。


「お兄ちゃ~ん! って、どうかしたの?」


「なんでもないよ、今日はよく頑張ったな!」


「えへへ、そうでしょ? 私ね────」


 今日はどこどこを頑張ったとかそう言う技術面の話しを始めた矢先、ラッパのような音が聞こえてきた。


「兄さん、あれ見てください!」


 雪奈の指差す方を見ると、ハルディオス方面へ向けて何かが飛んでいるのが見えた。

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