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懐かしきお姉さん再び!

 俺は雪奈と2人で都市の中を散策していた。


「やっぱり情報が集まるところと言えば……酒場ですかね?」


「ギルドに併設されたところは避けて、普通の酒場で情報収集と行こうか」


「はい!」


 笑顔で返事する彼女は、俺の知る凛々しく清純な妹だった。


 ここ最近、少しだけ雪奈は様子が変だった。ハグをした際に、情熱的に抱き締めてきたのは俺を意識してのことだろう。それくらいは、わかる。


 なのにティアにするように頭を撫でたら、物凄く赤くなって俺から離れた。明らかに拒絶の意思を感じた、俺はそこが疑問だった……。


 それに、馬車を降りる時のオズマの台詞も少しだけ気になった。


『あ~タクマ。雪奈嬢ちゃんは超攻撃型なんだ……だからさっきのは"嫌"って意味じゃねえんだ』


 雪奈はアタッカーだ。攻撃型なのは当然だろ? それと撫でた時の反応とで、何の因果関係があるというんだ? その答えを聞く前に、何故かオズマはライラに怒られていた。何なんだ、一体……。


「はぁ~、この世界は俺にはわからない"何か"が多いな」


「ん? どうかしたんですか? ほ~ら、酒場はすぐそこですよ」


 雪奈は俺の手を引いて酒場まで連れて行く。


 ティアと違って雪奈には選ぶ未来がある。だから、この世界にいるうちに早まった選択をするべきじゃない。


 もしも雪奈が選ぶ道に俺がいなければ、いつかこの手を離さなくてはならない。


 その時こそ────俺のタンクが真に終わる時だ。


 ☆☆☆


 西部劇によくあるウエスタンドアを抜けて入口近くの席に着いた。


 俺と雪奈が頼んだのはカルーアミルクだ。コーヒー・リキュールであるカルーアを、牛乳で割ったものを"カルーアミルク"という。


 メニューを見てこれがこの世界の酒場にあることに驚いたが、よく考えたら勇者が定期的に来てるから、それらがあってもおかしくないのかもしれない。


 そう考えると、この世界の本来の文明とは? などと考えてしまう。多分、勇者が異世界だと思う世界をここで再現されてるのだろう。


 そう思案しているうちに、コトンッ!とタンブラーが2つとボトルが1本置かれた。ちょうど良いのでウエイトレスさんに聞いてみることにした。


「あの、俺達最近ここに来たんだけど……戦争とかどうなってるか教えてくれないか?」


 そう言って、明らかに多すぎるチップを代金とは別に握らせた。カルーアミルクの代金が1500Gなので、渡した額は10000G前後だったと思う。


「ええええっ!?──その、良いんですか?」


「良いって良いって!それよりも、さっきの話しだけど──」


「あ、はい!今この都市国家は──」


 お金を握らせたことで、彼女は気分よく洗いざらい話してくれた。


 この都市国家は1度も城壁にダメージを与えられてないらしい。と言うのも、あの魔道鎧は極端に稼働時間が短く、城壁にたどり着く前にいつも撤退するのだという。


 だが、理由はそれだけじゃなかった。


 "鉄壁のルーク"と言う名を持つ、元フォルトゥナ騎士団副団長が防衛に当たっているため、攻め手に欠けてる状況とのこと。


 そんな攻防を続けてるうちに敵の攻撃は止まり、それ以来戦闘行為は行われていないようだ。


 現在、フォルトゥナ騎士団はこちらから牽制で攻めるため、その準備を行っているらしい。


 そしてその攻めを担当するのが騎士団長であり、中央都市国家のギルドマスターである"アルス"だった。


 本来、都市国家のギルドマスターは領主の配下に入ってはいけない決まりがある。 領主とマスターは互いに口を出さず、されど国家の危機には全力で挑む、それがギルドマスターである。


 だが中央だけは未だに王政であり、ギルドマスターが傘下に入る例外が認められている。


「ところで、なんでルークは元副団長なんだ?」


「ちょっと前に司教であるトーマスに進言して独自の部隊を頂いたそうよ。それでそこの隊長になるから辞めたみたい」


「ふ~ん、そっか。あ、仕事の邪魔して悪かったな、もう十分だ。ありがとな」


「また何か聞きたいことあったら言ってね!」


 ウエイトレスさんはそう言って仕事に戻っていった。


「そう言えば、私がパルデンスに行く前、この国を正すんだぁ~って言ってましたね。忘れてました」


「あんましアイツに興味ないのな」


「当たり前です!なので関係を疑ったりしないで下さいね?私は絶対に兄さんを裏切りませんから!」


 雪奈は俺の手を固く握り、真剣な眼差しを向けてきた。


「わかってるよ、ほら、もう一杯飲みな」


 空いたタンブラーにカルーアミルクを注ぐ。


 あ、そう言えば俺の手を握った時は赤くならなかったな……法則がまるでわからない。


「兄さん、私を酔わせるつもりですか?」


「いやいや、これ1本空にしたらもう帰るよ」


「ふふ、残念でしたね。私、そうとう強いので、イケナイ事できませんよ?」


「し、しないって!てか、雪奈は俺みたいにチート使ってないだろ?少しは酔ってるんじゃないのか?」


 俺が意趣返しのために、雪奈に顔を近付けて酔ってないか確認した。


「な、なんですか?」


 すると雪奈の視線が泳ぎ、若干頬が紅潮しているように見えた。


「あ、あぅ……そんなに、見ないで……下さい」


 うん、やっぱり酔ってるよな? 試しに更に続けてみる。


「ハァハァ……にぃ、さん……」


 雪奈はトロンとした顔になって目を閉じた。


 あ、アレ?この流れって……あれだよな? てか、みんな見てるし!!


 酒場が静寂に包まれていく、顔を背けてもいかつい大男が『逃げるな!』って視線で訴えかけてくる。


 何でここにはゴツい男共しかいないのか?そう思ってしまった。


 ええい、ままよッ!!


 俺が意を決したその時、ウエスタンドアを勢いよく突っ切った奴等がいた。闖入者ちんにゅうしゃのうち1人はプラチナブロンドで女性剣士のような軽装、黄金の刀を腰に2本携えていた。


 そしてもう1人は女神の彫刻レリーフが施された長剣を抜刀しており、どう見ても騎士団関係の男だった。


「来ないで!」


「アナスタシア様、お父様の命令です。大人しくついてきてください」


 あれ?アナスタシア?しかもプラチナブロンド……それにあの黄金の双刀。


「もしかして……ナーシャか!?」


 そう、拓真達の前に現れたのは懐かしのアナスタシア = グレシャムその人だった。

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