中央都市国家の現状
ティアのおかげで山脈が溶け、北西の未踏領域への進出が容易になった。その影響か、周辺の平均レベルも"-5"ほど低下し、ギルドで厳選されたAランク冒険者がレベリングを行うようになった。
これで空いた穴から人里に強力な魔物が下りてきてもすぐに討伐されることになるから安心だ。
そして中央都市へ向かう途中、立ち寄った小国でマルグレットさん宛に手紙を出した。パルデンスにおいてエルフの権利の保証と特別地区の建設、すぐにOKの返事が来た。
もちろん、タダでと言う訳じゃない。エルフの里から未踏領域の入り口まで平地にした時に拾った大量の魔石を対価とした。
オズマの計算ではザッと1兆Gに相当するとのこと。これで緊急時に護衛さえあれば、人間をビフレストの門まで誘導することができる。
この数週間、未踏領域で暮らした俺達はすでにギルドの規定する最高ランクである"A"を軽く超えているはずだ。
Aより上にSがあるものの、各ギルドの切り札として存在が秘匿されており、それが都市国家間の戦争を抑止している原因でもある。
ちなみに、各ギルドマスターはその上であるS+なのでそこからは人智を超えた領域とのこと。
世界はまだまだ広いな、そう思いながら馬車の中でステータスを確認した。
園田 拓真 Level 101↑ ジョブ 印術師 印術スロット3
スキル
付与印術 触れた物体に属性を付与する (毒・地・水・火・風・光・闇・雷・氷)New
補助印術 自身に補助効果を付与する (身体強化・継続治癒)
紐帯印術 深紅↑
パッシブスキル
剣術 S
魔力回復量・極大
園田 雪奈 Level 116↑ ジョブ 剣士
スキル
園田流抜刀術三連型 雪月花 初手の抜刀術から月を象った斬り上げ、そして花弁の連擊に繋げる連続攻撃
忍冬 氷の斬擊を飛ばす中距離攻撃
縮地 特殊な歩法で短距離を一瞬で移動する技術
秘奥義・款冬
パッシブスキル
剣術〈異〉S+++ 刀装備時攻撃力up
被紐帯印術 全能力up・大 存在探知
ティア Level 100↑ ジョブ 月光の神子
スキル
アイテムボックス 一定量のアイテムを保存できる。
魔力探知(弱) 魔力の痕跡から思念を読み取る。索敵は不能
月下流麗・神聖術
・翠月刃 魔力でできた月属性の斬撃を飛ばす
・月桂 対象の傷をゆっくりと治す月属性治癒術
・光条 極大の月明かりで敵を塵へと変える神聖術
パッシブスキル
剣術 A↑
魔力回復量・微
身体強化(月)
……あれ?俺って最後のスキルらしきものが属性付与の氷と雷だけなのか?
氷も雷も、闘気を使えば簡単に再現できるぞ?
やべえな、闘気と魔功が無かったら旅の途中でドロップアウトしてるレベルだぞ。
そして雪奈のステータスには秘奥義なるものが追加されている。ライラの話しによれば、100を超えてから色々条件をクリアすると使えるようになるスキルらしい。
ちなみに一般人が生涯で到達できるレベルが100前後で、到達した段階で秘奥義が使える身体ではないため現役で使える人は少ないらしい。
「タクマ、多分それが最後のスキルニャ。その……ニャんだ、強く生きろニャ」
「ま、まだだ!200!200まで上げれば……きっと!」
「ニャ~~」
ルナは意識を猫に戻してティアの寝具に入り込んだ。わかってるよ……無理だと言いたいんだろ?
へッ!無ければな、自分で作るだけだ!
俺は不貞腐れて自分の寝具に入り込んだ。
☆☆☆
翌朝、御者の人に起こされて前方を確認すると、懐かしの中央都市国家ルクスが見えてきた。
世界の中心にあり、世界最強と謳われた大国。
ティアはとっくに起きていて、御者の隣で物珍しそうに長大な城壁を眺めている。
ライラは朝が弱いのか、未だにニヘラ~とした表情で寝ている。
「ねえねえ、お兄ちゃん達ってここにいたんだよね?どんなところだった?」
「う~ん、居たと言ってもダンジョン攻略したらすぐにトラブル起きて西に来たもんな……」
それを聞いていた雪奈は、朝食を配りながら会話に参加してきた。
「そうですね、それに私達が滞在したのも冒険者地区がメインでしたから、他の地区を見て回ったりしてませんでしたね」
一応御者がいるので貴族殺しとかは省いて会話をしている。冒険者であればトラブルは日常茶飯事なのでそういった単語も大丈夫だとは思う。
配り終えた雪奈は隣に腰掛けて朝食を口にする。
雪奈、あの時の事を気に病んでなければ良いのだが……。俺の視線に気付いたのか、雪奈がこちらを向いて小首を傾げた。
「ん?どうかしましたか?」
「いや、その……普段通りでいいから。今は仲間達もいるし、な」
「あ、なるほど。でも心配されるべきは兄さんの方ですよ?私のことは安心してください、もう間違えません。ううん、違いますね……多分これからも、元の世界に戻っても間違えることはあると思います。だけど、心の中にとどめて取り返しのつかない事にならないように、ちゃんと相談します」
「ああ、俺も極力相談するよ。話し合いって大事だもんな」
俺が雪奈の頭を撫でると、雪奈は目を見開いて声を失っている。「ご、ごめんなさい」そう言って雪奈は俯いたまま俺から半歩距離を取った。
耳が真っ赤になっており、それどころか全体的に少し赤くなってるようにも見える。
「あ、悪い……嫌だったか?」
「違います!いや、じゃないけど……突然だったので──」
突然大きな声を出す雪奈へ視線が集まる。寝ていたライラも驚いて起きるほどだ。
そしてなんとも居たたまれない空気になったところで、御者が声をかけてきた。
「お客さん、もうすぐ停留所に着くぜ!──ようこそ、中央都市国家ルクスへ!」
「おう、ありがとな!」
「小規模とは言え、戦時下だからな。物価の変動に気を付けて買い物しなよ?」
「心配すんなって、こう見えても小金持ちだからよ。ほら、お代だ」
「え?こんなにいいのかい?」
御者が驚くのも無理はない。何せ相場の5倍程の代金を渡したのだから。
「かなり長距離だったからな。感謝の印だよ」
「へへ、ありがてえ。んじゃ、またな!」
俺達は御者と別れて門前に立った。
相変わらず大きな門だ。パルデンスの技術も取り入れられてるのか、門の表面には薄い黄緑色の膜が見えている。御者の話しによれば、表面に刻まれたレリーフによって、フォルトゥナ教の魔術礼装の役割を担っているとのこと。
過去に俺達が滞在していた時にはこんなもの、発動されていなかった。これが、戦時下の中央都市国家というやつなんだろう。
「そこの君達、早く門に入りなさい!」
物珍しさから門を開けてもらっているのに往生して怒られてしまった。
一応は元犯罪者、入る時に何かに引っ掛かるか心配だったが、何の問題もなく通過できてホッと一安心だ。
門を通過したあと冒険者地区で宿を取り、各自必要な買い物をしつつ情報収集に向かった。




