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開拓と盟約

 あれから1週間経った。まず最初にちょっとしたパーティを開いた。同盟を結んだので当然と言えば当然かもしれない。


 とは言え、400年前にそれで障気に飲まれてるので怖くないのかと思ったりもしたが、種族を越えてどつき合いながら楽しそうにしてるのを見ると、水を差すような発言は出来なかった。


 ライラとティアには酒を飲むことを禁じた。この世界では飲んで良いのかもしれないけど、元の世界では20過ぎないとダメな世界だったから、拒否反応が出てしまうんだ。


 雪奈は優雅に酒を飲んでチラチラこちらを見てる。一応酒豪級の強さなので全く酔ってないが、何故だろう……他の種族にも酒を注ぎに行ってる。まぁきっと親睦を深めたいんだろうな、うん。



 ちなみに俺はチートを使っている。光属性の印と治癒の印を合わせた"ヒーリングリリィ"でアルコールを急速に分解している。

 安眠効果やアルコール除去、治癒力はそこまでないのにこういった戦闘外では非常に役立つのだ。


「タクマ君ガンガン飲みたまえ!」やら「戦いでは我輩が負けたが──ヒック、これでは負けんわ!」等と両サイドからガンガン注がれてしまう。


 そしてわかったことがある。


 ──エルフは酒に弱い。


 最初に落ちたのはヘイムダルだった。と言うか4杯辺りですでにヤバそうだったな。仲間のダークエルフに運ばれて空いた席にティアが座ってきた。


 戦闘で雪奈と俺が一緒に行動するのが嫌だったらしく、その時の約束をここで果たせと言ってきた。


「お兄ちゃん、言うことを聞いてもらうからね!」


「な、何?めっちゃ怖いんだが」


「ふ~ん、じゃあこれ、食べさせて!」


 ティアが指差したのはムースのようなデザートだった。ちなみにオラフはヘイムダルの次に落ちており、先ほどサテュロスに連行されてしまった。


「ティアいくぞ、あ~ん」


「はむっ!──ああ、お兄ちゃんの白いムース、美味しい!」


「緑だけどなっ!?」


「もっと、もっとちょうだい!」


「あ~はいはい、あ~ん」


 こうしてひたすら"あ~ん"をしていたのだが、ムース2個、ケーキ5個で満足し、ようやく解放された。


「勇者殿、少しいいか?」


 戻ってきたサテュロスはティアとは反対の右手の席に座った。


「それで?何か聞きたいことでもあるのか?」


「感謝しときたくてな、私の配下を受け入れてくれて助かる」


「受け入れたのは俺じゃない、オラフだ。ただ俺は被害の少ないやり方を提案しただけだよ」


「歴代の勇者は大概謙遜すると聞く、まさにその通りだな。だが提案だけでなく実際に戦闘したのは君だ。負けて良かったと初めて思えたよ、ありがとう」


「お、おおう。案外いいやつなんだな、アンタ」


「卑怯な手を使ったのは、置かれてる状況により必死だったのもある。ネームレスと名乗る人間にギルドマスターを排除する方法があると提案され、私はそれに乗ってしまった。来るべき日に、人間の戦力を減らしたかったからな」


 サテュロスの話によると北の領域は封印の影響で障気が充満しており、それぞれの種族が色んな所にまとまってシェルターを掘り、そこで生活しているらしい。


 だが、最近になって月に1度、結界に穴が発生する時があり、それを見計らって力ある者が外へ脱出したとのこと。ちなみに、灰色の尖兵がその時に漏れだしているだけで、魔族とは関係がないとサテュロスは言った。


 外界で住む場所を探す──それは人間が覇権を握るこの世界では非常に困難であった。


 途方に暮れていたところに、ナインと名乗る忍者姿の男に声をかけられたそうだ。


『そこの魔族っぽいお兄さん、何かお困りの様子──もしかしたら俺っちが力になれるかもしれねえ』


 焦っていたサテュロスはその話しに乗ってしまった。最初は南の原初の森、ここでブラッド種を操る魔道具を渡され、ノアと言う少年を殺さずにブラッド種で追い詰めていると、ナインの言うとおりアルが現れた。


 ギルドマスターを倒せばあとは人間の戦力は大きく弱体化する。だが結局は役不足でサテュロスは敗退してしまう。


『クソッ!サテュロスの名を継いだこの私が負けるなど!』


『おやおや、負けたっすか。じゃあ次は西のロルフを落としてみないっすか?』


 ナインの話し通り、ハイデの街で学園対抗試合を終えたライラは帰り際に父の墓に行きたいが為に、ギルドに個人的に護衛を依頼していた。


 サテュロスの連れていた腹心のメドーナは洗脳に長けており、それを使ってなりすまし、魔術師ロルフを接近戦で倒すつもりがさらに敗北してしまった。


 しかも、メドーナを失うことにもなった為にその段階でナインとは手を切った。結局、未踏領域でダークエルフに保護されて意気投合し、今に至るとのこと。


「サテュロスの名を代々継いできたが、私は最弱なんだろうな。自信を無くしたよ」


「サテュロスの名を継ぐ?ちょっと待て、アンタは400年前のサテュロスじゃないのか?」


 サテュロスは唖然としたあと、笑い始めた。


「ふはははははは!勘違いしてるな?エルフじゃないんだから、そんなに長生きは出来ない。種族にもよるが、我々悪魔族はせいぜい160年くらいしか生きれないな」


「つまり、夢のサテュロスとは別人ってことなのか……」


「夢とは?」


「この世界に来てから変な夢をよく見るんだ。なんつーか、前回の勇者、剛の夢なんだがな。それにサテュロスが出て来てたんだよ」


 拓真の言葉に反応して唐突にルナが猫に戻る。


「拓真の話しおかしいニャ」


「唐突になんだよ」


「ルナが見せたのはパルデンスで見せた"アルフレッド視点"の夢のみニャ。おかしいニャ!」


「……マジか?」


「マジニャ!」


「ふむ、タクマ殿……新女神の言うとおりなら何者かが干渉してる可能性もありうるな」


 確かに、ルナが女神に覚醒したのは最近の事、だから時系列的にもおかしい。しかも、最近になって夢の内容を思い出し始めた。


 その事を伝えると、サテュロスは仮説を立てた。


「頻度に関しては女神の力が弱くなったから最近は見ないのかもしれない。もしくは新女神の誕生によりその必要性がなくなったから、ともとれる。思い出し始めた事については──北に近いからと言うのがあるかもしれない。どちらにせよ、今はどうにもできないな」


「そうだな、こればかりは旧魔王城に行かないとわかりようがないよな。あ、そう言えばこれからアンタらどうするんだ?」


「まずはここで開拓をして来るべき日に備えようと思う。だから北東の未踏領域攻略には参加できん、すまん」


「わかってるよ。未踏領域なんてものは大勢で挑むもんじゃないしな。元々俺らだけで行く予定だったよ」


「……すまん」


「ま、いいから飲めや!」


 申し訳なさそうなサテュロスに酒をたんまり注いで場を和ます。変わりに注がれたりもしたが、チートを使う俺には全く効果がなく、翌日最後まで生き残っていた魔族に"酒豪の勇者"と恐れられることになった。

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