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エンドコンテンツ

 拓真、雪奈、オズマの前衛は離れたある程度の距離を取って矢避けの門で待機していた。


 実はこの門、時折飛んでくるダークエルフやエルフの精霊矢を魔力障壁で防いでくれている。そしてそう言った流れ弾が飛んでくると言うことは前線が押されつつある証左でもあった。


 オラフの話しによれば人間や魔族の侵入を想定していなかった為、精霊術に対する特防効果はあっても魔術に対する効果はそれほど高くないのだと言う。


 そして、俺達の所へ伝令が来た。


「タクマ殿!前線を突破してこちらに向かう魔力反応がありますゆえ、充分にお気をつけください!」


「わかった。アンタらは里の中を守っていてくれ」


「しかし!」


「ダークエルフとの接近戦はエルフにとって不利なんだろ?俺には秘策があるから任せてくれ」


 伝令と周囲の予備戦力は渋々後退してくれた。この数週間、俺達は未踏領域エンドコンテンツで生き抜き、全員のレベルが格段に向上した。


 しかし、ここで生き抜くためには単純にレベルを上げるだけでは不可能、ジョブとしての殻を破る必要があった。


 マルグレットがたまに口にしていた"至る者"と言う単語、それは創意工夫と努力と運をもってジョブの限界を超えた存在のこと。


 唐突な魔物の襲来、激しい気候変動、ダンジョンでもないのに不意に出現するトラップと中身がインゴットしかない宝箱、精神と肉体の両方にとって試練となるこの場所で"至る者"になるしかない状況に置かれていた。


 俺自身は元々紋章術師になったことで至る者の入口に立っていたが、ここで暮らすうちにさらに伸びた。


 その中でも闘気の成長は目覚ましいものがある。この領域に来る前は闘気の散布範囲が1mほどだったが、今では約10mほどに伸びた。しかも闘気が世界に溶けるまでの闘気生存時間も大幅に伸び、これにより闘気が付着した任意の場所に属性を付与することができるようになった。


 オズマからは「キノコの胞子じゃねえか!」と言われたが、あながち間違いではない。敵からしたら魔方陣も詠唱もなしに、いきなり地面から火やら水やら出て来るのだから堪ったものではないだろう。


 雪奈は……空戦で負けたのが悔しかったのか、ある程度空を飛べるようになっている。初級よりもさらに下の魔術、いや、ただの魔力放出……型に当てはまらないこの術は威力が弱く実戦向きではないため、魔方陣や詠唱と言う形で使った方が強い。だが、雪奈は背中から翼の様に展開することで機動力と翼を得ることになった。


 ティアは俺が月の石(ムーンドロップ)を手にした段階で前代未聞のジョブチェンジを果たし、上級魔術をも越えかねない極大魔術・月下流麗を得たことである意味においては至る者だ。


 残念ながらライラはそもそもエクストラジョブなのでその殻を破るのは非常に困難だが、それでも新しいスキルによって充分過ぎる強さを有している。と言っても、彼女はまだ中等部なのでこれからの成長に期待だ。




 そして伝令にあった魔力反応とやらが現れた。片方は右手に黄金の剣、左手に白い杖を持ったダークエルフ。


 もう片方は俺達に馴染み深い魔族、サテュロスだった。


「サテュロス殿、ここに人間がいるようだが?」


「ヘイムダル殿、私も驚いてる。黒髪の女、禿げた男、お前達は見たことあるな。──神子までいるとは、因果かもしれん」


 どうやら俺の存在は忘れられてるようだ。俺自身もサテュロスと顔を会わせたのは原初の森以降、久しぶりだ。俺以外はライラ救出の際に会ったみたいだし、仕方がないが今度は顔を覚えてもらうとしよう。


「勝手に会話を始めてるところ悪いが、見ての通りここは通行止めだ。お帰り願おう」


 悪役染みた台詞を言ってみたが、雪奈以外のメンバーからジト目を向けられてるのがわかる。


「人間がここにいるだけでも驚きだが、我輩に大口叩くなどさらに驚きだ。だが人間、葉虫のような存在が我等が歩みを阻めるとでも?」


 先ほどヘイムダルと言われたダークエルフが黄金の剣を向けて威圧してくる。


「当然そのつもり──」


キィィィィンッ!


 耳鳴りの様な音が聞こえたあと、オラフの声が周囲に鳴り響いた。


『タクマ君、少しだけ対話の時間をくれ。ダークエルフ襲撃の理由、ユグドラシルだけではないはずだ』


「久しいな、オラフ。ふむ、何も知らずに攻められるのもあれだな。良いだろう、教えてやる。確かにユグドラシルに言われたから来たが、それは次いでだ。我等の住む土地はクレプスに面していた為に先日、遂に滅んだ。ここまで言えばわかろう?」


『ああ、一族の命運をかけた戦いを挑みに来たのだな。ユグドラシルは我等の土地にあり、ダークエルフ復興のためにはユグドラシルは必須。戦うしかないか』


 なんとなく種族間の問題で禍根が凄まじく、話し合いの段階をとうに越えてるくらいはわかる。だけど1つ疑問があった。


「いやいや、だからってなんで魔族もいるんだよ」


 ヘイムダルにギロッと睨まれたが、人間代表として退くわけにはいかない。疑問を口にすれば叩かれる、少しだけブラック企業時代を思い出したじゃねえか。


『タクマ君、人間と女神は安易に北を封印したが、それは毒の中に魔族を閉じ込めるようなものだ。そこのサテュロス殿も生存圏をかけて結託したのだろう?』


「いかにも、最近結界が弱まり、着々とこちらに魔族を移してはいるが、生きるための土地がない。故にビフレストの門、我等魔族が頂戴する!」


 言葉と同時にサテュロスは漆黒の剣を構える。原初の森で見た"ブラッドソード"を使う気か。あの時はアルが"光剣・イルミネス"で相殺したが、今アルはいない。だから自分達で何とかしなくちゃいけない。


 戦うのは良い、だけど俺はその前に言っておかなくちゃいけないことがある。


「オラフさん、俺が種族間の問題に口を出すべきじゃないのはわかってる。だが、今は年がら年中小競り合いするほど仲が悪いわけじゃないんだろ?」


『ふむ、もう何世代前かわからないくらい前だ。だから別に憎いわけでもない。離れて暮らしていたからな。じゃなければお互い不可侵だ』


「アンタらも同じか?」


「同じだが、我輩には剣を取った責任と意地がある」


「私は幹部の1人に過ぎないが、個人としては同意だ。しかし、成果を出さねば結界内の同族に申し訳が立たない」


 魔族も、ダークエルフも、400年前は手を取り合った仲間、根っからの悪ではない。ただ、生きるために場所が欲しいだけなんだ。


 ──だったら。


「オラフさん、この世界の流儀に乗っ取った提案がある」


 この日、後に語り継がれるであろう出来事が起きる。


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