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忘れてたティアとの約束

 ロルフ達との会談後、雪奈と昼食でもと部屋に行ったのだが鍵が掛かっていた。近くのメイドさんに聞いたら、すでに俺と出掛けたと言うドッペル的な話を聞く羽目になってしまった。


「う~ん、どうするべきか……」


「お兄ちゃんっ!!」


 背後からムギュと抱き付かれてつんのめりそうになった。


「危ないだろ、ベタに花瓶とか割ったら何を言われるかわかったもんじゃない」


「危ないだろ、じゃないよ!もうここに来て1ヶ月近く経つよ?」


「そうだな、色々あったな。んで、それがどうした?」


 ティアがジト目でこっちを見てくる。なので俺も目線を合わしてジト目を送る。

 すると、ジト目だったのが徐々に目蓋が半開きになり、頬は紅潮し、そして───。


「おい、廊下でそう言うことするな。俺は邸内の風紀までは警備したくないぞ?」


 オズマが良いところで邪魔をしてきた。ティアは雪奈と違った反応をするから可愛らしい、ティア相手なら優位を取れるからこそ攻めれるのだ。


「あわ、あわわわわ」


「ティアが正気に戻って悶えてるじゃないか。どうしてくれるんだオズマ」


「はぁ、もう好きにしろ……あ、そうだ。これを渡すように執事から言われてたんだ」


 オズマがポケットからワイヤレスイヤホンに似た物を渡してきた。


「執事?俺は1度も会ったこと無いけど居たんだな」


「お前さん達は毎日会っているぞ?ふっふっふ、聞いて驚くな。実は、食事の時とか影に同化して待機してるんだぜ」


 ティアは思い当たる事があるようで「あっ」と声を上げた。


「私、一度スプーンを落としたんだけど、取ろうとしたら無くなってたの!んで、テーブルの方を見たら使ってないスプーンが置かれてた!あれって執事さんだったの?」


「おうよ!俺が自慢することじゃねえけどな。ここの警備を担当する以上は執事殿と打ち合わせとかしないといけないからな。面識だけはあるんだぜ」


 俺は訓練で普段から闘気を半径1メートルぐらいの距離に薄く伸ばしている。だからその範囲内に誰かが入れば気付くんだが、そいつヤバイな。参考までに何のジョブか聞いてみるとするか。


「その人って何のジョブか言ってたか?」


「ああ~、確か"放蕩者あそびにん"とか言ってたな。おっと、時間だ。それ、通信魔道具だけどよ……エネミーディテクターと同じくらい高価だから扱いに気を付けろよ。んじゃ、またな!」


 オズマはそそくさと去り、拓真が手にしているそれはかつてライラ護衛の際に渡された”敵を探知する魔道具(エネミーディテクター)”と同等の価値を有すると言う。


 そして拓真は前回と同じ問答を行った。


「テ、ティア?"アイテムボックス"にこれを入れるのは───」


「だ~め!わかってる?通信が入ったらわからないじゃない。責任を持ってお兄ちゃんが付けた方が良いと思うよ。あと私、その手の魔道具苦手だから覚えておいてね?」


「これも、そうなんだな。わかった、俺が持つよ」


 拓真はティアの言いたい事がわかった。ティアは魔力を探知できる、本職じゃないから索敵は無理にしても魔力の質は読み取れる。


 多分、これは"灰色の尖兵"の魔石から作られたものだ。だからこれの気配をティアは嫌うのだろう。


 そしてこれは推測だが、俺達の世界と似た効果を持つ魔道具を作ろうとすれば、絶対にこの魔石が必要になるかもしれない。


「お兄ちゃん?」


「わりい、考え事してた。えーっと、その……街に出掛けるか?」


 ティアは顔がパァッと明るくなっていく。


 灰色の魔石により、計らずも拓真はティアとの約束を思い出した。


『パルデンスに着いたら美味しいものを食べよう』


 ああ、確かに言った。ずっと待ってたけど俺が思い出さないから、さっきそれとなく誘いに来たのだろう。


 拓真は手を差し出し、ティアはそれを握る。


「お兄ちゃん!」


「なんだよ」


「いっぱい食べようね!」


「ああ」


 2人の姿はまるで本当の兄妹のようだった。

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