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エードルンド魔道女学院中等部 2

 魔道戦術訓練の時間になったので訓練場に集まった。その部屋はスタジアムのように観客席があり、戦う場所はコロシアムのような形状だった。

 そしてロルフが全員集まったことを確認し、訓練内容を説明し始めた。


「まずは二人一組になって適当に距離を取るんじゃ。21人なので余った一人はタクマと組むが良かろう」


 ロルフがそう言うと女性徒達からザワザワと話し声が聞こえてきた。


(どういうこと?)(いつも余った一人にセクハラ紛いのことしてなかった?)

(いや、あれはセクハラでしょ)(今年は一週間怯えずにすむね)


 聞こえてくる声は様々だが、話し声を少し拾うだけで今まで色々変態的なことをしていたのがわかる。きっと訓練の度に一人余ってジャンケンで負けた生徒がロルフと組んでたんだろう。まさに罰ゲームだな……。

 ロルフは不満そうな顔をしながら俺を雇った理由を説明し始めた。


「最近の教職は恐ろしく厳しくなってしまったのぉ。今年は直接訓練に参加するなと『八翼の戦乙女』の方から釘を刺されての……なのでタクマを用意したんじゃ。……みんな若い男の方がいいのか?去年まで皆楽しんでた気がするんじゃが……」


 ロルフがそう言うと様々なブーイングが飛び交った。


(霧の魔術使って訓練中にお尻触ったじゃない!)(毎年色んな方法で更衣室覗くしッ!)(マルグレット様に進言して本当に良かったわ!)


 きちんと本人にも聞こえているのだろう。ロルフは段々小さくなっていった。

 話が進まないのでとりあえず二人一組を作ってもらうことにした。ちなみに雪奈とティアはペアでライラは友達と組んでいた。

 さて、俺の相手は残った一人になるわけだが……。見回すとお下げの魔術師風な女の子がおろおろしていたので俺は手を振った。

 テクテクとこちらに来る姿は親鳥を見つけた雛にような印象だった。


「えーっと、君が最後の一人でいいのか?」


「は、はい!よろしくお願いします!」


 腰を90度に曲げて大きく頭を下げてきた。


「多分俺に教えれることなんてないだろうし、お互いフランクにいこうよ」


 すると、お下げの女性徒は否定するようにブンブンと首を振った。


「タクマさんのお話は聞きました!魔族と操られたライラさんのタッグに善戦したって!」


「それは違う。一緒に戦った仲間がいたからこそできたことだからな。その時いたのが妹なんだけど、きっと妹一人でもなんとかできたと俺は思うぞ」


「そう、なんですか。それでも私にとっては戦った事実だけでも凄いことなんです。私は……落ちこぼれだから」


 きっと彼女にも色々あるのだろう。俺は物語の勇者のように色んな人間の悩みを解決できる人間でもないし、そうしようとも思わない。

 俺は手を差し出して一時の相棒となるこの女性徒に手を差しのべた。


「じゃ、改めて俺はタクマ。君は?」


「私はリタです」


 リタと俺は握手を交わした。握手すら遠慮されたら……と思っていたので内心ホッとする。そしてお互いに距離を取って訓練を始めた。

 リタは魔術師系のジョブなので50mくらいの距離に離れ、魔術で攻撃と防御を交互に行うことにした。


「いきます!ファイアボール!」


 杖の先にある赤色の魔方陣に魔力が満たされていき、完全に発光すると同時に炎の玉が飛んできた。それを防御側の俺が無詠唱で防ぐ。


「石壁」


 バシュッ


 石壁に当たったファイアボールは壁を砕くこともなく消えた。次は俺の番なので無詠唱で炎弾を放ってみることにした。


「炎弾」


 次はリタが防ぐ番なのだが……わっ、とっとと。そんな声をあげて普通にボンッ!と被弾し、ぎゃあッ、とやられ役のように後ろに倒れた。そしてスカートをパッパッと払って立ち上がり涙目でこちらを見てくる。


 シーン、互いの間に沈黙が流れる。もちろん他の面子はそれぞれロルフに色々指摘されながら訓練をしている。俺は仮にも補佐で来たので何か言った方がいいのだろうか?

 迷った末に今の1合の感想を素直に述べる。 


「まず、ソロで戦う時は攻撃前に『いきます』とか掛け声はいらないよ。戦いの中で高揚したときとかは仕方ないけどね。今の攻防にそんな要素は一片もなかった。それと、次はどの魔術でも良いので防いで欲しい……かな」


 そう言うとリタはトトッと近寄って目をキラキラさせてきた。


「すごいです!今、魔方陣なしでどうやって魔術を?」


 詠唱式の魔術は約1000回繰り返すことで無詠唱に昇華されること。その反面、魔方陣式は手軽に詠唱を省略できるが、展開する魔方陣の色で魔術の属性がバレること等を合わせて説明した。


「タクマさん、各属性1000回も……私もしたほうがいいのでしょうか?」


「いきなりやり方を変えたらリタの戦術が崩れるからね。今のやり方でなんとかした方がいいと思うよ。ちなみにリタの適応属性は何?」


「火と水です!」


 さっきの攻防はある意味では自身の知らない技を使われる可能性を視野に入れさせることになったはず、意図したことではないがリタにとってもいい経験になっただろう。当初懸念してた全員ライラ級の強さであることが払拭できたので戦闘経験がある俺にも教えれることがある。


 再びリタは距離を取って手を振った。訓練を始めて欲しいのだろう。俺も位置についてまた攻防を始める。

 リタは水色の魔方陣を展開している。次に放つ魔術は水属性なのだろう。土属性で対抗しようと身構えるが先ほどより魔方陣へのチャージが少し遅い。

 そしてその理由に思い至った。もしかして……中級魔術か!!


「アクアスプラッシュ!」


 目の前を埋め尽くすほどの水流が迫ってくる。訓練のルールをゲームのターン制にしたのが仇となったのだ。

 しかも俺は印術師なので下級までしか使えない、つまり対抗手段がない。単純な魔術合戦では専門職に負けるのは道理、なので俺は奥の手を使うことにした。


”魔術障壁”


 俺は手を前に構えてルナに蓄積している魔力を解放する。前に宿屋のマスターからもらった生体魔道具のルナは食べ物を与えることで魔力を蓄積し、それを解放することで障壁を展開することができる。

 リタは防ぎきった俺を驚いた顔で見ていた。


「だ、大丈夫ですか?」


「ああ、大丈夫。ただ、訓練形式を少しだけ変えよう……実践じゃ中級魔術発動まで待ってくれないからね」


「わかりましたっ!」


 こうして、より実践形式にルールを変えることを提案したのだった。

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