友達から?
コンッコンッ
ティアが出ていくと、それを見計らったかのようにノックの音がした。
「雪奈だろ?入ってこいよ」
入ってきた雪奈は俺のベッドに腰掛ける。そして手に持ったコーヒーカップを渡しながら言った。
「ティアちゃんと仲直りできたみたいですね」
「まぁな、それよりも窓を凍らせるのはやめてくれよ」
「だって、私の時は嫌々な感じだったのにティアちゃんのときは積極的にキスしてたように見えましたけど?」
ジト目で雪奈が訴えかけてくる。
「いや、あれはお前の時で自信がついたというか……まぁ、そういうことだ」
「ならいいですけど……じゃあ私に嫉妬させたお詫びに少し夜更かしに付き合ってください」
「コーヒー淹れてくれてる時点でそのつもりだったけどな、0時には寝るぞ?俺は明日からロルフの手伝いをしないといけないからな」
「大変ですね。私も大変ですが……」
「そう言えば二人はどうするんだ?」
「私はティアちゃんを誘ってあるところに行く予定です」
「あるところ?」
雪奈は人差し指を口のところで立てて妖艶な笑みで言った。
「内緒です。まぁ、すぐにわかりますよ」
釈然としない俺は不機嫌さをコーヒーを飲むことで誤魔化しながら答える。
「いや、教えてくれなくてもいいけどな」
「拗ねちゃいましたか?」
「別に……それより久しぶりにステータス見せ合わないか?」
聞いた理由は雪奈との今の差を知りたいと言うのもあるが、最近また伸びが悪くなってきている気がするからだ。
ライラの攻撃を避けたり防いだりを甲冑を着た状態で行う雪奈に対して、俺は全力で戦える状態なのに雪奈より低い水準の戦闘内容だった。
もちろん機転を利かせてライラに傷を負わせることなく止めたのは上出来だとは思うが、ここままでアルとの約束通りに強者に至れるのだろうか?
「兄さん、気負わなくていいと思いますよ?ちゃんと強くなってますから……」
雪奈はそう言って肩に頭を乗せて手を組み合わせるように握ってきた。そしてそのまま俺達はステータスを見せ合いっこした。
園田 拓真 Level 37↑ ジョブ 印術師 印術スロット3
スキル
付与印術 触れた物体に属性を付与する (毒・地・水・火・風・光・闇)
補助印術 自身に補助効果を付与する (身体強化・継続治癒)
紐帯印術 黄→橙
パッシブスキル
剣術 A↑ 印術 S+↑
園田 雪奈 Level 42↑ ジョブ 剣士
スキル
園田流抜刀術三連型 雪月花 初手の抜刀術から月を象った斬り上げ、そして花弁の連擊に繋げる連続攻撃
忍冬 氷の斬擊を飛ばす中距離攻撃 New
縮地 特殊な歩法で短距離を一瞬で移動する技術
パッシブスキル
剣術〈異〉S↑ 刀装備時攻撃力up
被紐帯印術 全能力up ↑
「とうとうスキルが増えなくなったな……」
俺は悲しくなってきた。パッシブは上がってるよ?ライターが簡易ガスコンロくらいに増えたくらいだけどな!でも正直伸びが浅い!多分雪奈の剣術Aの時と今の俺の剣術Aは全然違う気がする。レベルも段々ティアに追い付かれ始めたし、見て見ぬふりしてきた問題を明確化するのは……辛いな。
そんな心情を察したのか雪奈が俺の頭を抱き抱えて言った。
「兄さん泣かないで!ほ~ら、よしよし」
されるがままに雪奈との赤ちゃんプレイに興じる。そして一通り終えると膝枕をしてくれた。ああ、ネグリジェ越しの柔らかさが癖になる……。
「兄さん、落ち着きましたか?」
「ま、まあな!にしてもこれからのことを考えるともう一工夫必要だよな」
「高レベルになれば覚えるスキルが減っていくのはゲームも同じじゃないですか?きっと100になったら凄いスキルを覚えますよ!」
「ホントに詳しいよな。そうだといいんだがな……」
膝枕を堪能したあと雪奈は自室に戻り、俺も明日に備えて寝ることにした。
☆☆☆☆
朝起きると雪奈もティアも部屋にはいなかった。俺が仕方なく一人で朝食を摂っていると遅れてライラがやってきた。
「あ、タクマさ……君。おはよう!」
「え?お、おはよう」
タメ口?別に拘るつもりはないが、ハイデの街で初めて会ったときは敬語使ってたよな?俺の表情から察したのかライラが慌てて言った。
「し、失礼だとは思うけど……お母さんが今のうちに慣れときなさいって……」
マルグレットさんの指示か、あの人だったら仕方ないって思える圧があるよな。
「いや、本来俺が敬語を使うべき立場だろうからそこは気にしないでいいよ」
「はい!……じゃなくて、うん!あ、それとお母さんが今日は一緒に登校しなさいって」
「俺はロルフと行くって思ってたんだけど」
「お母さんが友達から始めるなら一緒に登校した方がいいって……嫌かな?」
「俺、女の子の友達なんていなかったからさ。嬉しい限りだよ、よろしくな」
「こちらこそよろしくお願いします!」
こうしてライラと友達になり朝食を食べたあとは一緒に登校した。そして通学中、ライラから色々聞くことができた。これから向かう学院は『エードルンド魔道女学院』という名前で初等部から高等部まで一貫した体制の学院らしい。名前こそエードルンドを冠しているがすでに運営権は手放しており、学院長は外部の人間がおこなっているとのこと。
それにしても、通学時間だというのに全然人がいないな……。疑問に思ったので隣を歩くライラに聞いてみた。
「いつもこんなに人が少ないのか?」
「今日はタクマ君を職員室に送るために私だけ遅刻してるの。いつもはまだ1時間早いよ」
「マジか……それは悪かったな、すまん」
「ううん、気にしないで!」
それから軽く談笑をしながら歩いていると校舎が見えてきた。外観はほとんど元の世界のそれと同じで一瞬帰ってきたのかと思ってしまうものだった。
俺はライラの後について職員室まで案内された。
「ここが職員室、私は自分のクラスに戻るね!バイバイ」
なんというか……久しぶりに生徒に戻った気分だな。
ガラガラ
背後で扉が開いてロルフが出てきた。
「なんじゃきとったのか」
「おい、あんたが無理矢理依頼を受けさせたんだろうが!」
「正確にはワシとマルグレットじゃな」
強引なのは認めるのか……。
「それじゃ、担当のクラスにいくぞい」
俺はこうしてロルフについていくのだが、ひとつだけ懸念があった。前に俺は知った風な口で『戦闘経験のないお嬢様は実践で変幻自在に動く魔物に対応できない』みたいなことを言った気がするが、正直あれだけの強さがあれば必要ないだろう。クラス全員がライラレベルだったら俺の人生ここで終わりかも……。
多分俺は的役とかだろうな……俺はそう覚悟して転校生の如く呼ばれるまで扉の前で待った。




