ダンジョン攻略 後編 拓真サイド
俺たちは10階層最後の扉の前にいた。
「結局セツナさんには会えず仕舞いでしたね。どうします?」
「いや、これは逆に雪奈が来る前に終わらせて悔しがらせるパターンだろ?」
「ええ、それがいいかもしれませんね!」
もちろん雪奈が来ればよりクリアできる確率は増すだろう。俺の予想だけど、雪奈の強さではここは格下になってるんじゃないかと思う。
だが、楽して勝ってナーシャの試練になるだろうか?彼女の試練がどれ程重要なのかわからないけど、きっとそれは彼女のためにならないと俺は思う。
そして俺たちは遂に扉を開けた。中に入ると勝手に扉が閉まり、広間の中央に魔方陣が浮かび上がって、ソイツは現れた。
「Grururururururururu」
「ナーシャ、まだ慣れてないかもしれないが、コンビネーションで行くぞ!」
「はい!」
拓真は”自作スキル・ホバークラフト”で一気に距離を詰める。オーガは大剣を振り下ろすが、ナーシャの渾身の短剣投擲で大剣の軌道が逸れて外れる。
そして機械剣に毒を付与して斬りつけたが、裏拳を受けて吹っ飛ぶ、ナーシャにキャッチされて壁への激突は避けた。
ふにゅんと言う感触があったことは取り敢えず頭から排除しておこう。
「タクマさん、遂にセツナさんから乗り換えるんですね!」
おかしな事を言うナーシャを放置して体勢を整える。
ブラッドオーガほど硬くはないが、逆に攻撃性が高い。しかも今回は腕が両方ついている……どうしたものか。
ナーシャは標準的な剣士タイプで、特に変わったスキルも持っていない、毒もいつもより効いてない気がするな。
『オーガは首の後ろが欠点です。弱い攻撃でもそこに当たれば勝機はあります』
そう言えば雪奈がそんな事を言っていた気がするな。試してみるか。
「ナーシャ、オーガは首の後ろが弱点かもしれない、知ってたか?」
「えーっと、私学科はあまり……」
脳筋か!っと言いたくなるのを抑えて。
「取り敢えず狙う価値はある。もう一度コンビネーション頼む」
「わかりました!」
オーガは大剣を突き立てて待っててくれた。この世界の魔物って律儀に待ってる奴が多いな。
”自作スキル・ホバークラフト”
↓
”自作スキル・エリアルステップ”
長距離移動用ホバークラフトで一気に詰めて初撃を誘う、横薙の大剣をエリアルステップで避け、ナーシャの位置を確認して”自作スキル・反撃剣”を縦斬りに合わせて発動した。
オーガの大剣が俺の機械剣に触れた瞬間、爆風がオーガを襲う。
「Gruāaaaaaaaaaaaaa!!」
「さすがに今のは効いたか?でも安心するなよ」
オーガが距離を取った位置の真上からナーシャが渾身の一撃を放つ!
”クロスラッシュ”
ナーシャの攻撃はオーガの首の後ろを綺麗に菱形に切り、オーガは断末魔をあげることなく徐々に光の粒子になっていく。
辺り一面は金色の麦畑のように染められ……そして部屋の中央で粒子が段々形を成して、やがて黄金の宝箱となった。
「タクマさん、宝箱ですよ!開けましょう」
「ナーシャが開けなよ。試練の証拠品もいるだろうし」
「ありがとうございます!では、開けますね」
ガチャっとナーシャが宝箱を開けると……中に入ってたのは二刀一対の短刀だった。全体的に金色で、柄の部分には獅子の顔が彫られていた。
ナーシャが手に取ると、仄かに光ってナーシャを包んだ。
「タクマさん、これは『金獅子の双刀』と言うらしいです」
「へえ、ナーシャが光ったように見えたけど。大丈夫か?」
「はい、どうやら使い手に選ばれたようです。あの、本当にごめんなさい!」
「いやいいって。俺には機械剣やルナがいるしな。このくらいがちょうどいいんだよ」
ナーシャは申し訳なさそうに短刀を携帯し、俺達は来た道を戻るべく扉を開けるのだった。
その先にある絶望を知らずに……。




