表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/134

冒険の始まり

 緑、そして緑──目の前には広大な森が広がっていた。

 振り返っても自動ドアはなく、さっきまで夜だったはずなのだが……太陽が眩しいくらいに照りつけている。

 漫画やアニメをよく見るからこそ、この状況に一つだけ心当たりがあった。


「なぁ……これっていわゆる異世界転移ってやつだよな?」


「そうですね~……そうでないと今の状況は説明がつきません」


「とりあえず、これからどうする?」


「兄さん!こういうときはとりあえず近くを探索するべきだと思います!」


「お、おう……」


 なんかやけに知ってる感じだよな……。


 とはいえ、やることも特にないので周辺を探索した。

 10分ほど歩いてると、ボロボロの荷馬車を見つけた。馬はすでにどこかに行ってしまったようだ。

 荷馬車の中に人がいないか恐る恐る覗いて見たが誰もいなかった。


 お、剣だ。思ったより重いな……。取り合えず2本手にとって他にも物色してみた。生きるのに必要なんだ。持ち主には悪いが色々貰うことにした。

 外で警戒してる雪奈が気になり声をかけてみた。


「人はいなかったけど食べ物とか水が結構あった。この先のこと考えたら少し貰うのもありなんじゃないか?」


「わかりました。ですが、血痕?のようなものがあるので急いだ方がいいかもしれませんよ?」


 えっ?血痕?そう言えば周辺が赤かったような……。それにこの荷馬車、やけに傷だらけだな……。それも、最近の傷に見える……。


「では兄さんは()()()()()を開始してください。私は引き続き警戒しておきます!」


 雪奈がビシッと敬礼して警戒を始めた。


 盗賊プレイって……。あまりゲームするようには見えないのによく知ってるな。まぁ確かに、自由度の高いオープンワールド系のゲームでは盗賊プレイを俺は好んでするけどな。

 

 必要なものを持って外にでようとすると足に何か当たった。なんだ?この本……『説明書』?著者『アルフレッド』?まぁいいや。ポッケに入るほど小さいしもらっとこ。外に出ると雪奈が荷物を半分持ってくれた。俺的には自分に偏重してほしかった。ほら、デートの食事代は彼氏持ちみたいな?まぁ、兄だけど……。


 荷物を渡すとき雪奈は剣を片手で持っていた。重くはないのだろうか?と訪ねると、そこまで重くはないのだという。おかしい、俺でも両手なら軽々振れるけど片手で持つのはちょっと無理があった。いつの間にバカ力がついたのだろうか……。


 適当に歩いていると、洞窟があったので今日はそこで夜を明かすことにした。う~ん、こちらに来てから雪奈の視線をたまに感じる。なんというか……恋じゃなく慈愛のような視線だ。悪い視線じゃないならいいかと気にしない方向で対応した。


 洞窟の入り口で先程拾った本を読もうとすると隣に雪奈がやってきた。


「兄さん、何を読んでるんですか?」


「さっき荷馬車の中に本があってさ。何か情報がないか読んでみようと思ってな。雪奈も一緒に読もうぜ」


「じゃ、隣に座りますね」


 雪奈が隣に座る……が、本を読まずに俺の顔を見つめてくる。な、なんだろう?俺なにかしたか?


「えーっと、そんなに見てくると読みづらいんだけど……」


「ああ、ごめんなさい。兄さんっていつも辛いことがあっても平気な態度をとろうとするから、今回も無理してないかな~って思ってました。無理、してませんか?」


「そんなに無理してるか?まぁ、今回は()()()()もいないから気が楽かな。お前がいてくれて心強いってのもあるかもな!」


 ワシワシと頭を撫でると雪奈は少しだけ赤くなって抗議した。


「兄さん!私、もう子供じゃありませんよ?お酒だって飲めるんです!」


「ははは。俺も雪奈も酒が苦手じゃないか。せめて苦手な俺に勝ってから言うんだな!」


「もう!兄さんの意地悪ッ!」


 談笑もそこそこに早速『説明書』なる本を読むことにした。

 

 ある程度異世界と予想してたためか、異世界転移物の定番とも言えるが()()()()()()()()()()()()()という現象にはそこまで驚かなかった。


 本をざっと読むと、この世界はゲームの十字ボタンのような形状をしていることがわかった。あくまでも人の行き来ができる部分が十字なのであって、一応物凄く険しい山脈や樹海が間にあるので○と十字を足した形状、というのが正確な表現だろう。そして世界の簡易的な概略も載っていた。


 本によると、この世界の名前は『グローリア』と言うことがわかった。その他にも───


 今は無き封印されし北方都市国家『クレプス』

 傭兵業が盛んな南方都市国家『メルセナリオ』

 武器や商業が盛んな東方都市国家『オルディニス』

 魔導学院が多数存在する西方都市国家『パルデンス』

 フォルトゥナ教団の総本山と同時に世界最強のフォルトゥナ騎士団を有する中央都市国家『レクス』、この5つの国家とその周辺に点在する小国家によって構成されてるみたいだ。


 本に集中していると雪奈が横から覗き込んできた。


「兄さん、この右下の魔方陣のようなものは何ですか?」


 そう言って雪奈が魔方陣に触れた途端、本の上に長方形の簡易マップのようなものがホログラムっぽく浮かび上がった。


「うわっ! マジでビビった。ん?もしかして赤い点が俺達の現在地なのか?」


 赤い点のある場所を見ると、俺達は南方都市国家メルセナリオのさらに南、地図ギリギリに位置する『原初の森』という場所にいることが分かった。


「とりあえず当面は森を出て人のいる場所に行くのを目標にするか」


「そうですね。でも途中で魔物とか危険動物とかでたらどうしましょう?私、大学卒業してから全然運動してませんよ?」


「う~ん、俺は製造業でしごかれてたから多少は動けるとは思う。でも戦闘できるかは別だろうからな……。この本に何か載ってるかもしれないな」


 ページをめくるとお目当てのページが見つかった───


・戦闘に関する基礎知識


 この世界にはジョブというものが存在します。生まれた子供は神殿にて『洗礼』を受け、本人の生まれ持った適性によりジョブが振り分けられます。

 ジョブには固有の戦闘スキルがあり、レベルが上がればスキルが成長したり、新たなスキルを獲得することがあります。

 自身の強さを確認するためには頭の中で『ステータス』と念じることで確認できます。


 なるほど、『ステータス』と念じると自分の能力が見れるのか。


 ──『ステータス』。


園田 拓真 Level 1


ジョブ 印術師 印術をスロットに3つまでセットできる


スキル 

付与印術 触れた物体に属性を付与する (火)

補助印術 自身に補助バフ効果を付与する (身体強化・治癒)

紐帯印術 ?


パッシブスキル 剣術 D 印術 B


 印術師?なんだそれ。俺は()()()()魔法使い候補生だぞ?


 ご丁寧に説明書にはジョブ一覧がずらーーーーっと並んでいたので自分のジョブを探すこと2分……一番右下にあった。


 読む気が失せるほどのディスりっぷりにがっかりだが、要約するとこう記載されていた。


印術師

・序盤は武器に幅広い属性を付与できるため有用だが、中盤から他のジョブが伸びてくるため出番がなくなりやすい。

・印術という名称だが、全てスキル枠なので魔術師ではない。それゆえ魔術が下級までしか扱えない。(魔術系でない限り基本下級まで)

・唯一攻撃スキルに毒系印術が使用可能。(武器が壊れるため直接触れる必要が有り)


 序盤しか役に立たない『お助けキャラポジション』に絶望してると、雪奈の嬉しそうな声が聞こえてきた。

 

「兄さん!!私『剣士』でしたよ!!」


 剣士?えーっと、あった。上から5番目……よくよく見るとこれって人気順じゃないか?最後尾の印術師の上は『探検家』だぞ?戦闘職じゃないジョブの下って……ヤバイんじゃないか?


剣士

・トータルバランスに優れたアタッカー

・攻撃スキル多彩

・回避と攻撃による撹乱から速度を活かした奇襲までこなせる戦闘の花形ジョブ


 短く要点だけ記載されてるな。それに引き替え俺のと来たら……。

 俺なりにまとめると印術師の強みは幅広い属性付与と、身体強化と、燃費か。気持ち程度の治癒も考慮すると……いわゆる『器用貧乏』ってやつだな。


「兄さんはどんな感じでしたか?」


 え?……これは答えなきゃダメなパターンか?困って思案してると、雪奈が顔をぐいっと近づけて真実を見通そうとしてくる。ま、まずい。この目をされると俺は弱いんだ……。


「えーっと、それは……」


 ジーーーーーーーー


 はい。負けました。結局、折れて言うことに決めてしまったのだった。

活動一ヶ月ちょいなので駄文気味ですがよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ