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魔王パズズ

 長い長いレッドカーペットを進むと、ようやく玉座にたどり着いた。


 200年毎にここで連合が集まったとしたらそれでも小さいくらいかもしれまない。


 エントランスがそのまま玉座の間とか言ってたけど、入口から玉座までドーム一個分くらいはあったぞ!


「さて、そこに座ってるということは、その甲冑が王ってことでいいのか?」


 国によっては王が声をかけるまで喋ってはならないとか聞いたことあるけど、知ったことじゃない。


 隣に立つナーシャは俺の態度に唖然としている。元の世界でナメられてばっかりだったから、せめてこの世界ではこうでありたいんだ、悪いな。


 黒い甲冑に紫の炎が灯った。防具の隙間からその炎が漏れ出ている。


 今の今まで肘を立てて不遜にこちらを見ていた態度から一変、ゆっくりと立ち上がった。


「前の勇者タケシは我を見て怯えていた。いや、その前のアルフレッドも多少は怯えていたな。人族のステータスを下げる我が武威に耐えるとは……ただの勇者ではないな」


 正直いうと、闘気で守ってなかったら俺もビビってたかもしれん。対人間特効効果を持つ武威とか……魔王が敵じゃなくて良かった。


 俺も前に歩いて魔王の前に立ち、下から至近距離で見上げる。


「タクマさん……なにを……」


「ナーシャ、知ってるか? これは"ガンを飛ばす"っていうんだ」


「ま、魔王様! 申し訳ありません! タクマさん!」


 魔王は肘を後ろに引いてボディブローの体勢に入った。


「──ふんッ!」


 なんの捻りもないゼロ距離からのボディブロー。紫の炎で加速したそれをくらえば昔の俺なら確実に消し飛んでいただろう。


 だが──。


 ガシッ! 魔王の拳は俺の手のひらに綺麗に収まった。背後でナーシャが息を飲む音の聞こえる。もろに受けたように見えたのかもしれない。


「……ほぅ、受け止めたか。土、闇、風、あとは……神か。今の一瞬でほぼ同時に行使するとはな、さすがは勇者だ」


 魔王の言うことは一部を除いてほぼ当たっている。最後の神はフォルトゥナの加護、ティアの加護、その2つが混ざりあった俺の闘気だ。


 印のスロットは3つだけど、1秒以下で3回付け替えたら誰が見ても一瞬に感じてしまうのだ。


 さて、こんなことをした理由を説明しないとな。ナーシャが泣きそうな顔をしている。


「話しはある程度聞いてるんだろ? なのに何故俺達に武威(プレッシャー)を与えた? こっちは全人類のためにあんたの仲間と土地を浄化している。しかも呼びつけられたかと思えば、試すような真似しやがって。これじゃあ、フェアじゃねえだろ?」


 沈黙が場を支配する。


 魔王の兜から見える炎の瞳、その揺らめきが少しずつ収まり始めた。


「くくく……面白い。対等などと、生まれて初めて言われたわ!」


「──だろ?」


「わかった。なら、そこの女が人間の女王か?」


 魔王の言葉にナーシャは都市国家式の礼を行った。魔王は頷いたあと、声を大にして言った。


「我は魔王パズズ、お前らの名を聞こう!」


 まずは俺から名乗ることにした。


「俺の名前はタクマ。上からの圧力が大嫌いだから気を付けろよ」


「私は救世都市国家ルクセリアの新たな女王、アナスタシア・グレシャムです。解放軍の長として参りました」と、ナーシャが。



「私は兄さんの妻で雪奈です」と、雪奈が。


「わ、私もお兄ちゃんの妻のティアです!」と、ティアが。


「私はライラ・エードルンドです。妻ではないですが……」と、少し歯切れ悪くライラが。


「俺はオズマだ。妻じゃないからな!」と、残念そうにオズマが。


「今度の勇者パーティは随分と愉快な奴らだな。ハッハッハッハッ……」


 魔王は笑い、そしてようやく話し合う段階に至った。


 ☆☆☆


「……600年前の出来事か。あれは我らにとっても予測し難い出来事だった。光属性を扱う勇者タケシと、前勇者アルフレッドのコンビネーションで終末の獣たる悪神は滅びた。そして誰もが浮かれていた、千里眼で戦闘の様子を見ていた我も実際に滅びるのを見ていた。なのにだ! 戦勝パーティで突如として障気が大量発生したのだ!」


 魔王は玉座を叩いて興奮していた。甲冑から漏れた炎の残滓がそれを物語っている。


「我はすぐに幹部の居場所を探った。そして気付いた……我ら魔族の失態だと」


「障気の発生源に幹部がいた、そういうことか?」


「ああ、そこにいたのは先代のサテュロスだ。先代のサテュロスはとても野心家で、我にも何かと反発していた。奴が何かした結果……今のこの状態になったのは間違いないのだ」


「だから魔族は他の種族の避難を優先してここに残ったのか」


「そうだ、それが我らのケジメというものだ」


「あそこで何が起こったかまではわからないのか?」


「わからん。ただ、それが起きてるのは封印の間ではなく、旧魔王城であることに何かしらの意味があると我は思う」


「結局、旧魔王城に行くしかない、か……」


「あまり力になれなくてすまんな」


「良いってことよ。ルナでさえも断片的に引き継いだ記憶から予測するしかないし、当事者の話を聞いてわからない部分を確定させてもらった方が対処もしやすいしな」


 悪神は1度確実に滅んだ。そして先代のサテュロスによって復活し、尖兵とブラッド種を増やしながら内側から結界を圧迫していた。


 それがわかっただけでも十分だ。

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