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北方進出

 俺の闘気を込めた"闘気石"も突入部隊全員に行き渡った。救世都市ルクセリアの北門にはそれぞれの種族、それぞれの国家から代表となる戦士が集まっている。


 400年前、剛とアルフレッドを筆頭に全人類が結集した物語と同じだった。


 今度は効果の薄い光属性ではなく、神属性が含まれた俺の闘気がある。悪神モルドの混沌属性にも対抗できるだろう。


 今は準備が整うまで結界の前で待機している。


 待つこと5分、女王となったナーシャの元へルクセリアから伝令が来たみたいだ。


「伝令です。結界の部分解除の準備ができました」


「わかりました。すぐにでも始めてください」


「──ハッ!」


 伝令が青の魔力玉を空に打ち上げる。俺達の世界で言うところの信号弾みたいなものだろう。

 空高々に打ち上げられたそれは、青く光輝いている。


 ナーシャが目で合図してきた。結界の部分解除される箇所に立って両手を前に突き出す。


 ──ブンッ!


 結界の部分解除と共に灰色の空気が漏れ始めた。


「いっけぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」


 穴の空いた結界内部に俺の闘気を流し込む。


 すると、灰色の空気が徐々に浄化されて澄みきった気持ちの良い空気へと変わっていった。


「タクマ殿、我が領地にこんな綺麗な空気を……本当にありがたい!」


 魔族代表のサテュロスは感極まっていた。それも当然だろう、400年前に障気の大量発生以降、魔族は連合に所属する他種族を逃がすために結界の内側に残っていたのだから。


 汚染に怯えながらのシェルター生活を400年、想像を絶する苦痛を伴ったに違いない。


「ああ、気にすんなって。魔族解放どころか一気にモルドも倒してやるよ」


「すまん、助かる」


 解除された穴の両端に闘気石を置いて、続々と解放軍が入っていく。


 両手を突き出す俺の元にナーシャが来た。


「タクマさん、キツいお仕事をお願いして申し訳ありません」


「いや、演説でも言ったけどさ、今まで晴れ舞台なんてなかった俺には……今この瞬間がその時なんだ。頼りにされて、割りと嬉しいんだよ」


「全てが終わったあとも、あなたの舞台は用意されてますよ?」


「あはははは……逃げよ」


 その後、約1時間ほどで俺達以外のパーティは結界の向こう側に入ることが出来た。


「兄さん、向こう側に何が待ってるかわかりません。ですが、恐らくこれが最後の旅になるはずです」


「ああ、わかってる。さっさと救って、人知れず帰ろうな」


「兄さん、多分それは無理だと思いますよ。私の予想ですが、絶対に見つかります」


「いいや、逃げきってみせるね! 雪奈、ティア、遅れんなよ?」


「ええ、私はどこまでもご一緒します。安心してください」


「うぅ、私は早く走れないよぉ~」


 妹達がそう言ったあと、嫌味な男の声が聞こえてきた。


「へっ! タクマよぉ~、お前を逃がすわけねぇだろ!」


 オズマはタクマを逃がさないと言って大剣を肩に担いだ。


「何言ってんだ? お前、ティアより遅いだろ。ほら、証明してやるよ。結界の中までの勝負だ」


 ──"エリアルステップ"!


 ティアを抱え、風属性を靴の裏に貼り付けて一気に加速する。勿論、雪奈も縮地で追従している。


「あ! てめ、セコいぞ! "パワースマッシュ"!」


 オズマは足の裏で地面を蹴って加速してきた。ワンとの戦いで死にかけた俺は雪奈とティアと月の神子達とより強く繋がった。


 その事もあって、通常の自作スキルも以前より遥かに強化されている。オズマに追い付かれるはずもないのだ。


 ☆☆☆


 タクマさん達が結界の中に消えていった。


 ナーシャさんが苦笑いを浮かべて私に近付いてきた。


「ライラさん、大変ですね」


「ふふ、もう慣れてしまったので」


 私が答えると、ナーシャさんは少し悲しそうに歩き始めた。置いてかれないように追従する。


「ライラさんが少し羨ましいと思ってます。だって、タクマさんとずっと旅をしてきたのだから……」


「ナーシャさん、もしかして──」


 同じ女なのに、何故気づかなかったんだろう。今思えば、彼女はいつもタクマさんを目で追っていたような感じだった。


 勝手に女王だからって決めつけていた。


「ええ、あなたの言うとおりです。ブラッドオーガに襲われた私を彼は助けてくださいました。その時から少しずつ……ね」


 ナーシャさんはそう言って今度は走り出した。


「ほら、タクマさんが待ってますよ」


 タクマさんが遠くから手を振っている。その足元でオズマさんが四つん這いになって地面を殴ってる。勝負の結果、タクマさんが勝ったのだろう。


 ナーシャさんと同じく、少しだけそういう対象でありたいと思ったことがある。でも彼の隣の席は2つしかない。


 だから私は仲間として、勇者パーティの一員として彼について行きたい──そう思ったんだ。

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