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ルーク=プルースト

 地上に降りた時、飛竜の状態を見て驚いた。軽やかに回避していたつもりが、翼のあちらこちらに被弾しており、これ以上の使役は彼らの命が危ぶまれるところだ。例え回復魔術を施しても、体力が持たないはずだ……。


「仕方ない、これ以上は陸路で向かうしかないな」


「お兄ちゃん、飛竜さん達を返してくるね」


 ティアが飛竜三体に回復魔術をかけて帰還するように伝えた。元々頭の良い竜種だ、人間の言葉を理解して行動できる。


 三体は名残惜しそうにこちらを向いたあと、空に火を吐いて去っていった。きっと、彼らなりの挨拶なのだろう……。


 そうして俺達は馬車でルクスを目指すこととなった。飛竜でのショートカットのおかげか、かなり小さいがルクスが見えるくらいには近付けていた。


「兄さん、騎士達が……」


 馬車で進むうちに騎士や傭兵が所々で倒れている。開戦はすでに成されており、ここで中央と東方がぶつかり合ったのが見て取れる。


「……ぅ、うう……」


 そこで俺は見知った顔を目にした。


「……ルークか」


「近寄らないで! すでにここは前線ではありません! 負傷した騎士に狼藉を働くと言うのなら、魔道軍将、サチ=プルーストが相手になります!」


 杖をこちらに向けて威嚇する少女。年齢はティアぐらいか、茶色の三つ編みが特徴的な魔術師なようだ。


「サチちゃん!?」


「──え、もしかして……セツナお姉ちゃん?」


 雪奈と知り合いだったようで、杖を下ろすサチ。ん? 待てよ……サチってどこかで聞いたような。


「兄さん、サチちゃんはハワードさんの娘さんです」


 俺とサチは直接の面識はない。いや、1度武器屋に来店したことはあったが、それもメルセナリオに到着してすぐの事だったし、それ以降は雪奈にパーティ追放されて武器屋に行く暇がなかったんだ。


 だから見たとは言っても、ほとんど記憶に残らないレベルだ。


「それで、サチちゃん……ルークは怪我してるのですか?」


 サチは雪奈の問いに頷く──。


 見た限り、瓦礫を背に息をしてるのがやっとのように見える。

 装備はボロボロで身体中傷だらけ……血が染みてないところの方が少ない。


「見た感じ、突破されたみたいだな。──"ヒーリングリリィ"」


「私も手伝う! ──神聖魔術"月桂"」


 ティアと力を合わせてルークの治療を始める。


「仰る通り、ルーク様は突如現れた名も無き部隊(ネームレス)に押し切られて重症を負いました。今は各陣営の治癒術師ヒーラーが自軍の負傷者を治療しています」


 なるほど、ここでの戦闘は終わっているので死にかけに手を下さず、敵も味方も自軍の治療に専念しているわけか。


 そして治療の甲斐あってか、ルークの表情は穏やかになって安定している。


「そう言えば、プルーストって……」


 俺の疑問にサチは答えた。


「えーっと、ルーク様と私は現在──夫婦関係にありまして……」


 その言葉を聞いた雪奈は俺が驚よりも先に声をあげた。


「えぇっ! だってルークは年上が……それにサチちゃんは平民ですよね? あれから一体何が起きたんですか?」


「雪奈お姉ちゃんが騎士団を去ってから私はルーク様の付き人として各地に奔走してました。その過程で私に魔術の才能があることがわかり、修業の結果なんと! 最年少で"王剣の1人、魔道軍将・氷結のサチ"の2つ名を頂いたのです。それから……一緒に悪を断罪していくうちに……ルーク様から告白されちゃいまして」


 女性陣の悲鳴が俺の鼓膜を破ろうとした。この手の話しは女子が食らい付きやすい話題だ。しかもあの世間知らずで、見た目以外は冴えないところばかりのルークが自ら告白するなど、絶対に考えられない。


 初対面にもかかわらずライラやティアも混ざって質問責めをしている。今は割りと急いでるんだがなぁ~……。


「なぁ、トーマス=プルーストがいただろ? 絶対に認めなかったんじゃないか?」


「私とルーク様が集めた不正の証拠を突き付けて失脚させました! 愛の前に悪は破れたのです!」


 憐れな元司教殿……俺が牢屋に入れられた時は殺したいほどイラついたが、まさか養子とその恋人に追われることになるとはな。


「トーマスは今何を?」


「奴隷として墓堀をしてます。ルーク様の慈悲により命だけは助かりました。義理とは言え親なので、さすがに死刑には出来なかったんでしょう……お優しいルーク様……」


 馴れ初め等のかしましい会話が終わったので女性陣のテンションは元に戻る。そろそろ時間だ、全員それを理解しているのか各々荷物を持って旅の準備を始める。


「ルークが目覚めたら面倒なことになるから俺達はもう行くよ」


 ルクスへ向かって歩き始めると、サチが俺達を引き止めた。振り返ると、サチは頭を下げてきた。


「あ、あの! 攻撃しかできず、ポーションも使いきっていたので本当に助かりました。このご恩、いつか返させていただきます!」


 魔術師、初級しか使えない近接系にとって夢のようなジョブ。しかし攻撃しかできない彼女にとっては魔術が使えるのに、回復魔術が使えないことがとてももどかしいのだろう。


「いいって、今ルークはかなり地位が高いだろ? 恩を売っとけば、いざというとき助けてくれそうだもんな」


「タクマさん……」


「じゃあな!」


 そうして俺達は再度ルクスへ向かうのだった。

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