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聖女放浪記  作者: 柄柄
8/17

日常

やったーてすとおわったー!

「おはようございますハーゲンさん…」


いい匂いがすると思ったらハーゲンさんがかき混ぜる大鍋には鶏に似た魔物のスープ料理が入っていた。


「おう、おはよう嬢ちゃん。今日も眠そうだな。」


ハーゲンさんは私が来たのを見ると鍋の火を止めると素手のまま鍋を掴んで食卓に持ってくる。

熱くないんですか?と聞いたところ熱耐性持ちだとのこと。


能力の無駄遣いだなぁと思っていたら顔に出ていたようで有効活用だろ?と良い笑顔で返された。


「寝ても疲れが取れないんですよぉ〜…」





まったく、昨日は酷い目にあった。


いつも通り小姑と化したシモンズ神官に横から重箱の隅を突かれつつ治癒をかけ続け、ようやく1時に寝ることができたと思ったら

朝の3時に何故か覚醒してしまった治癒したばかりの病室の患者が肩を組んで泣きながら歌ったり走り出すのを止め

その物音に起こされて『死にかけてた戦友の声が聞こえる』『お迎えが来たんだ』と泣き出すB病室の患者を宥め…


と、散々な夜だった。


敗因は同じ部隊の人たちばかりが固まっていたことだと思う。




「あー…まぁでも、凄えじゃねぇか。嬢ちゃんはそんな凄腕の神官サマだったんだな。」


ハーゲンさんが鍋から器に取り分け、私はそれを受け取って裏の野菜畑に生えていたネギや三葉を散らす。 

黒胡椒の匂いもしていてとても美味しそうだ。


「まぁ…うーん、そうですね」


食べに来れるほど状態の良い人はあまりいないため

あとはカートに乗せていく。


「褒めてるのにパッとしねぇ返事だなぁ。謙虚すぎるとそれもまた憎まれるんだぞ?」


昨日教えてもらった場所からレンゲを取り出してお膳ごとに置いていく。

あ、これ欠けちゃってるから修理しないと。


「私そこまで性格よくないんで大丈夫ですよ。」


よし、これを運んだら朝ごはんだ!


ちなみにシモンズ神官は私の起きる1時間前から起きて患者の様子を見て回っているようだ。


善人とはあの人のことである。

そう考えて答えたのが伝わったようでハーゲンさんは苦笑していた。


「あんな怪我を無償で治癒してるやつの台詞じゃないぜ。」


たしかに、いくら代金は教会や治療院ごととはいえ致命傷の治療を無償で行うのは教会にバレたら睨まれそうである。


シモンズ神官大丈夫かなぁ。


ちなみに私は聖女だからとのことで無償でしか行ったことはない。

そして聖女になる前に司祭様と暮らしていたところでは老衰で死んだ人しか見たことないので大怪我を治したことはない。


今考えるとめっちゃ平和な村だったんだなぁ。


いや、いつ誰から見ても平和だわ。



…聖女ではなくなったのならこれからは料金を頂いていいのだろうか。


「ほれ、行くぞ嬢ちゃん。」


「はーい」


朝のルーティンにも慣れてきた。

自分で食べれる人には食事を配り、食べれないような重症者には自分たちが食べたあとで食事の介助を行う。


健康的で牧歌的な楽しい生活である。







✾✾✾✾✾✾✾✾✾✾✾✾✾✾✾✾








「新しい傷病者だ。頼む。」


しかし、そんな楽しい生活に影を落とすのが治しても治しても増加の一途を辿る傷病者である。


「あの、そんなに怪我人を食べさせていく余裕はないのですが…」


「これでなんとか頼む。」


御者をやっていた軍人さんにじゃらり、と音がする袋を渡される。

金貨が2枚と銀貨が6枚入っている。

ふむ、今回の怪我人は10人だから1週間この人たちに食事を出して約銀貨6枚。

金貨2枚はこの国の平均からしたら相当足りないが寄進という名の治癒代だろう…


ってそうじゃない。


彼はカーターさんと言い大隊を預かる偉い人である。

戦が終わってさっさと撤退してしまった領軍と異なり治安維持のため残党狩りを続ける国の軍人さんだ。

良い人ではある。

お金も払うし。

だが問題はそこではないのだ。


「カーターさん、あなたの部隊に一番近い治療院ここじゃないですよね。」


「安い、上手い、早いときたらここ以外利用するわけがなかろう。部下も大事だが金も時間も大事だから仕方あるまい。」


じろりと睨んでやんわりお断りしたつもりだったがしらっと開き直られた。


どこの食堂の話だろうか…


さぁ、さっさと治してもらって戦線復帰するんだぞ

とカーターさん。

ドナドナされてきた軍人さんたちが呻きながらも返事している。


そう、彼ら初犯ではないのだ。

人によってはドナドナ5回目とかいう猛者もいる。

魔物からしたら倒しても起き上がってくるゾンビ部隊を相手にするの相当面倒だろうなぁ。


私とシモンズ神官が片っ端から完治させるもんだから今ならいくら怪我しても大丈夫!と味をしめてしまったのである。


治る治らないじゃないよ、痛くないの??



「はぁ…また貴方のところですか。カーター。」


「応。我ら王立騎士団は国が為、国民が為に命を懸ける。戦が終わったからと逃げ出した玉なし共とは違うのだ。」


そこではない。

命は1個しかないのを知らないのかこいつ。

流石のシモンズ神官も少々呆れた顔をしている。

そして驚いたことにこの二人、なんと幼馴染なのだ。


初めてカーターさんがドナドナしてきたときに『お?誰だ?シモンズの愛妾か?』などと抜かしたためにシモンズ神官が無言でかぼちゃを振りかぶった姿を今でも鮮明に覚えている。


幼馴染相手だからか少し砕けた感じで対応するシモンズ神官はなんとも新鮮である。

だからといってカーターさんを許す気にはならないのだが。


今回もまた色んな怪我の仕方をしてますねぇ、とシモンズ神官が興味深そうにドナドナされてきた軍人さんたちを診ていく。


嫌な予感がする。


「あ、私そういえば呼ばれてるんだっ――――」


「アリス、これは何の呪いか答えてみましょうか。」


逃げられなかった…


「え、うーん…バイコーン…?」


「惜しいですね。これはユニコーンの呪です。ユニコーンは潔癖症ですからね、水を汚したとかで簡単に呪をかけてきます。バイコーンよりよほど見る機会は多いでしょうから覚えておきなさい。」


なんとか答えることが出来ただけマシだった…


「じゃあまた1週間ほどしたら受け取りに来るからな。」


「えぇ、それ以降は来ないでくださいね。受け付けませんので。」


「ハッハッハ、お前そう言ってどうせ診るじゃないか。」


シモンズ神官はぐっと言葉に詰まった。

言い返す言葉がないのだろう。

実際私もそう思う。





じゃあまた来るぞと言ってカーターさんはとっとと帰ってしまった。



仕方ない。

実際治癒するとなれば相当な金を取られそうな患者ばかりである。

タダ働きのよしみで治療して差し上げよう。





…嫌な連合だな。




時間空けて書くと何書いたか忘れるよね

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