セカンド・キス
それから一週間後。
J大との合同オケの練習の帰り。
「……晃輝さん……!」
「やあ」
構内から出てきた由佳子を待っていたのは、他ならぬ晃輝だった。晃輝は車を道路に横づけにしている。
「晃輝さん……どうして……」
由佳子は信じられない顔で、呆然としている。
「話があってきたんや。乗って」
晃輝は、助手席のドアを開けた。
由佳子は躊躇いながらも、晃輝の車に乗った。
晃輝は車を発進させる。
行先は由佳子のマンションのようだった。
「あれから、俺なりに考えてみた」
晃輝が運転しながら、静かに切り出した。
「君の存在の大きさが嫌という程わかったよ。君のいない日常は、砂を噛むように味気ない。それは、他の誰にも取って代わることができない」
晃輝は続ける。
「思えば、俺は強引やった。君を抱こうとするあまり、君の気持ちを考えずにいつも一方的やった。男とのつきあいがなく、慣れへん君が恐れるんも当然や。もっと、君の気持ちを思い遣るべきやった」
晃輝は、はっきりと言った。
「朋美とは別れてきた。他の女友達とも皆、縁を切った。俺には君一人さえいてくれればそれでいい」
「晃輝さん……」
「もう一度。一からやり直せへんか。今度こそ、ゆっくりと絆を育もう」
由佳子のマンションの前に、車は停まった。
「由佳ちゃん」
「晃輝さん……」
二人は見つめ合い、そしてどちらからともなくゆっくり口づけた。
それは、まるで二度目のファーストキスともいうべき初々しく、本当に幸福なKISSだった。