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仲直り ~トシヤの思い~

 フレンドリージェニファーズカフェに着いたトシヤとマサオは大急ぎで二階へと上がった。幸いまだ新しいお客さんは入っておらず、まだハルカとルナの貸し切り状態は続いていた。


「あっ、トシヤ君!」


 カツカツと言うかコンコンと言うかビンディングシューズで歩く時に鳴るクリートが床に当たる音を聞いたハルカがトシヤの顔を見て嬉しそうに声を上げるとトシヤは申し訳なさそうに答えた。


「お待たせ。ゴメンね、待たせちゃって」


 テーブルに置かれたオレンジジュースの氷はすっかり溶けてしまっている。それはそうだろう、トシヤとマサオが渋山峠を上る時間と展望台で休んでいた時間、そして下ってフレンドリージェニファーズカフェまで来るまでの時間を合わせれば三十分以上は経っているのだから。だが、ハルカは首を横に振った。


「ううん、それより……」


 いつもは歯に衣着せず、ズバズバと物事を言うハルカが珍しくモジモジしている。どうしたのかとトシヤが不思議そうな顔をしていると、ハルカは大きく息を吸ってから口を開いた。


「……ごめんね。逃げちゃって……」


 それはハルカがトシヤに一番伝えたい、また伝えなければならない言葉だった。神妙な顔のハルカにトシヤは思いっきり面食らった。


「いやいや、ハルカちゃんが悪いんじゃ無いよ。悪いのは変な言い方した俺の方なんだから……」


 あたふたしながら言うトシヤにマサオが笑い出し、ルナは助け舟を出した。


「仲直り出来たみたいね。良かったわね、ハルカちゃん、トシヤ君」



 ルナの言葉にトシヤとハルカは顔を見合わせると、照れ臭そうに笑った。


 問題が無事解決し、トシヤとマサオは一階に降り、冷たいドリンクを四つ持って戻ってきた。


「はい、ハルカちゃん」


「ルナ先輩、どうぞ」


 待ってもらった感謝の意を込めてトシヤとマサオがオレンジジュースを差し出すとハルカは嬉しそうな顔で、ルナは遠慮しながらもそれを受け取った。


「ありがとうトシヤ君。それで、上れたんだ。渋山峠」


 ハルカがオレンジジュースを口に含んで言うとマサオとルナの視線がトシヤに集まった。もちろん『足着き無しで上った』とトシヤが胸を張って答えるのを期待しての事だったのだが、トシヤの答えは残念なものだった。


「うん……実は一回だけ足着いちゃったけど」


 トシヤは最後の最後に足を着いてしまったらしい。せっかく最終ヘアピンまで足を着かずに頑張ったというのに……

 だが、それには理由があった。本当なら今日、ハルカと一緒に上って二人で足着き無しで渋山峠を上りきるつもりだったのが、妙な行き違いから一人で上る事になってしまって一人で上る事(途中まではマサオと一緒だったが)になった。そして一人で足着き無しで上りきる寸前まで行って、思い直したのだ。初めての足着き無しはハルカと二人で上った時にしようと。


「え~、それでドコまでは行けたの? また第二ヘアピンで力尽きたの? それともお地蔵さん駐車場のヘアピンまで?」


 トシヤの気も知らず突っ込むハルカにトシヤは笑って答えた。


「まあ、良いじゃん。次こそは足着き無しで上ってみせるからさ」


 あまりにも良い顔で言うトシヤにハルカはすっかり面食らってしまった。


「まあ、仕方無いわね。次は私がペース作ってあげるから頑張ってね」


 頬を少し赤くしたハルカにトシヤは嬉しそうに頷いた。


「うん、今度は一緒に上ろうな」


 すると何か良い雰囲気のトシヤとハルカに触発されたのか、マサオもルナにアピールをし始めた。


「俺も負けてられないっすね。ルナ先輩、また一緒に上って下さいね」


 マサオも第二ヘアピンまではトシヤに着いて上れたのだ。そして第一ヘアピンまで試しに上ってみたりしなかったらもっと先まで足着き無しで行けた筈だという思いもあった。そんなマサオにルナはそれはもう楽しそうに言った。


「あらマサオ君、やる気十分ね。じゃあ今から一本上りましょうか」


「あっ、良いですねー。じゃあ早速行きますか!」


 ハルカも身を乗り出した。だがトシヤとマサオは青ざめた。そう、ハルカやルナと違い、トシヤとマサオは一本上るだけで精一杯なのだ。


「すみません、今日は勘弁して下さい」


 声を揃えて情けない事を言うトシヤとマサオにハルカは思わず吹き出した。





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