番外編 ~すての無謀な挑戦1~
トシヤ「おい、また番外編かよ、こないだ『いんたーみっしょん』やったばっかじゃねぇか!」
マサオ「まったく『すて』のヤツ、何考えてやがるんだ?」
ルナ 「もしかして、『ヒルクライムラバーズ』を書くのに飽きちゃったとか……」
ハルカ「責任者、出て来い!」
すて 「呼んだか?」
ハルカ「うわっ、本当に出て来た!」
マサオ「おい、『すて』! 何だよ番外編って? 早く話を進めやがれ!」
ハルカ「そーだそーだ! オリジナルジャージに身を包んだ私の華麗なヒルクライムを早く書いてよ!」
トシヤ「本当にしっかりしてくれよな」
ルナ 「『すて』さん、お願いしますよ」
すて 「うるせえ! そもそもお前等が全然ロードバイクに乗らねぇから代わりに俺が上って来たんじゃねーか。『日本一の激坂』にな」
マサオ「何が『上った』だよ。死にそうだったクセに」
すて 「んだと、コラぁ!!」
ハルカ「えーい、うるさーい!!」
ルナ 「まあまあ皆落ち着いて。いつまでもこんなグダグダを続けるつもりなの?」
トシヤ「読者様に申し訳ないだろーが」
すて 「そ……そうだな。せっかく見に来てくれた読者様が帰ってしまうかもしれん。それは困る」
マサオ「見捨てられたら大変だもんな」
ハルカ「そうね。じゃあ『すて』さん、本文に入る前に入る前に一言どうぞ。但しマジメにね」
すて 「わかった。任せとけ」
すて 「えー、ご覧いただきましてありがとうございます。今回は作中のキャラでは無く、作者である『すて』が日本一の激坂と言われる暗峠に挑んだお話です。多少の脚色はしてありますがノンフィクションです。では、お楽しみ下さい。『ヒルクライムラバーズ番外編~すての無謀な挑戦~』」
令和二年一月一九日。俺は白いクロスバイクで府道702号通称『産業道路』を東へと走っていた。目指すは暗峠、生駒山をほぼ真っ直ぐに上り、平均斜度が17%、最大斜度に至っては37%と言われている日本一の『酷道』だ。
俺の名は『すて』
数年前にロードバイクに乗り出したばかりの貧脚野郎だ。加えて言うと年齢不詳のおっさん。ではまず何故この貧脚のおっさんが『関西ヒルクライムTT峠資料室』に『足つきなしで登られると自慢できます』とまで書かれている暗峠に挑もうなどとバカな事を考えたのかから紐解いていくとしよう。
*
令和二年一月四日、俺は街乗り用のクロスバイクを手に入れた。イタリアの人気ブランド『ジオス』の『ミストラル』だ。数あるクロスバイクの中で何故ミストラルを選んだかって? そんなもん決まってるだろう、安かったからだ。車重は10キロ超でコンポはALTUSの安いミストラルだが、今まで乗っていたクソ古いトレック7.5FXに比べたら遥かに良く走るので買って良かったと思っている。フレームにMADE in CHINAってシールが貼ってあるが、そんな事は気にしない。
一月十三日の月曜日、ニューマシンを手に入れた俺はパチンコにでも行こうかと家を出たのだが、街を走る俺の目にふと生駒山が映り、何か呼ばれてる様な気がした。
――今日は十三日か……十三日に十三峠ってのも悪く無いな――
そう思った俺は何も考えずにミストラルを八尾に向かって走らせた。
皆さん既にご存知かとは思うが、十三峠とは八尾から奈良へ抜ける峠道だ。大阪のヒルクライマーの聖地と呼ばれてるとか聞いている。ちなみに俺もロードバイクでこの十三峠を上って遊んでいる。ちなみに俺がロードバイクで十三峠を上るタイムは……おっと、ソイツは機密事項だ。正直言って途中で足を着く事もある。なんたって俺は貧脚だからな。もし、これを読んでくれている人の中で十三峠を上っている人が居れば、途中でヘタりこんでいる白いコルナゴを見かけたら笑ってやって……いや、声をかけてやって欲しい。俺はいつも一人で寂しく走っているから。こう見えて俺は寂しがり屋なんだ。
ミストラルは前述の通り車体は重いがMTB用のコンポなのでギア比が低い。いつもは脚力任せでペダルを踏む水呑地蔵さんのヘアピンでさえも軽くペダルを回せる。まあ、ペダルを回してる割に全然前に進まないんだが……
そして俺は低いギア比に助けられ、足を着くこと無くミストラルで十三峠を上る事が出来たのだった。それもヘルメットもかぶらず上着はバイク用の冬物ジャンパー、パンツはブルージーンズ、靴は安物のスニーカーという舐めた服装で。
展望台の駐車場で一休みした後のダウンヒルは快適だった。俺のロードバイクのタイヤは23Cで空気圧は8バール。対してミストラルのタイヤは28Cで空気圧は乗り心地優先の5バールなのだから当然と言えば当然だ。しかもクロスバイクのVブレーキはテコの原理が働くのでロードバイクのキャリパーブレーキよりめっちゃ効く。ダウンヒルを楽しみながら俺は思った。
――ロードバイクよりクロスバイクの方が良いんじゃね?――
だが、十三峠を下りきって、平地に出た途端思い直した。
――やっぱミストラルは重いな。やっぱロードバイクの方が良いわ――
*
こうして買ったばかりのミストラルで十三峠を制覇(笑)した俺はいつもの様に国道170号線通称『外環』にあるカフェ『フランシージェファーズ』に立ち寄った。
店に入る前にタバコを二本喫うのが俺のお決まりのスタイルだ。今日も俺は喫煙所に向かって一直線、ネットフェンスに自転車を立て掛けて……と思った時、一つの事を思い出した。そう、ロードバイクにはスタンドが付いていないがミストラルにはキックスタンドが付いているのだ。
駐輪場にミストラルを停めた俺は、ベンチに座るとタバコに火を点けた。その時、悲劇が起こった。
がっしゃーん
風に煽られてミストラルが倒れた。まだ買って一週間も経って無いのに……
半泣きになりながら倒れたミストラルを起こしてチェックするとサドルが少し破れ、ペダルとリアのディレーラーに傷が付いていた。この時は気付かなかったのだが、後日インナーローに入れるとプーリーとスポークが干渉してカラカラと音を立てる様になってしまった。一応言っておくが、インナートップの間違いでもアウターローの間違いでも無いぜ。ヒルクライムでよく使う(と言うかほとんどそれしか使わない)大事な大事なインナーローがだ。ディレーラーハンガーが曲がってしまったのかもしれないが、ディレーラーの調整で今のところ収まっているので暫くこのままにして様子を見るとしよう……お金も無い事だしな。
本題はココからだ。タバコを喫いながら俺は考えた。十三峠は距離4キロで平均斜度9.2%。暗峠は距離2.4キロで平均斜度が17%らしい。しんどさレベルを距離×平均斜度と考えると十三峠が4×9.2で36.8、暗峠が2.4×17で40.8だと。
――もしかして、行けんじゃね?――
俺はバカだったのだ。今だから言える事なのだが、しんどさレベルは平均斜度×距離などと言う単純なモノでは無い。あの時の俺に言ってやりたい。『しんどさレベルは平均斜度の二乗×距離』だぞと。
未来の自分がそんな事を思っているとは夢にも思わない俺は愚かにも決心した。『来週は暗峠だ!』と。
――続く――
マサオ「って、続くのかよ!?」
すて 「ああ。思ったより長くなってしまったからな」
ハルカ「暗峠を上るどころか、暗峠に着いてすらいないじゃない!」
すて 「それを言われると辛いが、やっぱ大事だろ? 俺みたいな貧脚のおっさんが暗峠を上ろうなんて思ったのか説明するのはよ」
トシヤ「いや、単に『ロードバイクでは無理っぽいからクロスバイクで上ってみようと思った』で良いんじゃないかな?」
すて 「………………」
ハルカ「あっ、黙った」
マサオ「バカだ。コイツ、バカだ」
ルナ 「マサオ君、そういう事は言っちゃダメよ。ほら、『すて』がぷるぷる震え出したわ」
ハルカ「泣いてるんじゃないの? 高校生に言い負かされて」
すて 「皆様、すみませんでした。次回はちゃんと暗峠に上りますので、見捨てないで下さい。よろしくお願いします」
ルナ 「本編も是非、お読み下さいね」
ハルカ「ブックマークや感想なんかもお待ちしてます。よろしくお願いしまーす!」




