選択肢
Q.もし、イケメンに手を繋ごうと言われたら?
A.イケメンの気が変わらないうちに全力で手を繋ぐ
B.扇子をしまって、両手をあける
C.手汗を理由に断る
答えは、もちろん決まっている。
「すみません、私手汗がひどいので手なんてとてもにぎれませんわぁ!」
乙女としてその答えはどうなんだって?
そんなの知らない。乙女の矜持なんて、この非常事態の前では入らなくなったドレスよりも使えない。着られないドレスは、雑巾にも使えるしいいよね。とにかく、今はイケメンとの手繋ぎをお断りすべく全力を注ぐ。
「そんなこと気にしませんが?笑」
私は見逃さない。一瞬「え」って顔に書いてありましたよ。乙女の手汗に引いちゃってましたよ。
人間誰でも手汗くらいかくでしょう。いや、綺麗なご令嬢という生き物は手汗とは無縁なのか。そうですか。
「では、腕を組ませていただいてもよろしいですか?」
まさかのDルートだと!?
手を繋ぐより密着度が上じゃないの!!
無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理・・・
「あっ」
頭がいっぱいで、足に指令をだす余裕がなかったのか私は自分の右足に左足をひっかけ顔面から転びにかかった。しかも私の左手は、先程のアーデルベルト様の忠告を無視したまま扇子をもっていた。
ええい!私の右手を信じるんだ!!
最悪顔面からでもかまうか・・・とこれから来る衝撃に対する準備を整え待機していたが、いつまでたってもそれは訪れなかった。
あるのは、フローラルな香りのする白い壁だけ。
・・・香りのする壁?
「大丈夫ですか?」
衝撃が来ないはずである。私は、白い壁もといアーデルベルト様に抱きとめられていたのだから。