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虚無

作者: 後藤修治

 自分が人として間違っていると気づき始めたのは保育園のときだった。

 僕はそのときから虐められていた。僕は何もしていないのに、いつも何か嫌がらせをやられた。

 僕は何もしていないのに、なぜ疎外されなければならないのだろう。僕が何をしたっていうのだろう。

 でも、やはり今考えると自分も悪いところがいっぱいあるのだ。

 でも、それは。また違う話。

 そのとき僕は逆上してカッターナイフで僕をのけ者にしてきたやつを、力のままに切りつけた。

 最初の歪みはその事件だった。

 それからは、もういつも僕はオカシイ人間になってしまった。

 小学校でも、中学校でも、高校でも・・・いつになっても。

 社会不適合者。

 結論はこれだ。僕は何をしても駄目なのだ。

 何度も願った。

 自分が成功するという夢を。自分は特別幸せな人間にはなれなくても、人並みの幸せを感じられる人になれることを僕は一生懸命願ったはず。

 でも、現実は。変わらない。何も変わらない。

 僕は、いつまでたっても独り。孤独のまま自分を貫いていく。

 良い意味でなく、悪い意味でもなく。

 そもそも、僕には良いことも悪いことも分からないのだ。

 そんな普通の人間としての機能は既に欠如しているのだよ。

 中学のとき深夜に出歩くことを覚えた。異性というのがどういったものなのか少しだけかじった。

 僕に優しくしてくれる人もいた。

 こんな情けなく、取り柄もない。趣味も無い。金もない。容姿も良くない。

 そんな完全なダメ人間な僕を受け入れてくれる人もいた。

 そのときは、本当に嬉しかったよ。彼女は今、何しているのだろう。

 幸せになってくれていると嬉しい。

 本当に何気ない日常だった。僕はいつも引きこもりがちなので、一緒に遠くに行くなんてことは怖くて出来なったし、彼女を幸せにすることもまったく出来なかったと思う。

 それでも、一緒にいてくれた。

 一緒に散歩したり、一緒にただただのほほんとしていたり。そんな日常が楽しくて、愛しくて仕方が無かった。

 でも、別れは来てしまう。そんなこと、もうこれまで何回体験してきたか分からない。

 でも、僕の場合はほとんど望んで離れたかった。

 今回は違う。彼女と一緒に居たいと心から思った。

 僕のことを受けれいれてくれる人なんてきっとこれで最初で最後なのだ。

 だから、離れたくなかった。そんな僕の粗雑な心を理解してくれた彼女は今、うまくやっているのだろうか。

 結婚しているのだろうか。幸せな家庭を気づいているのだろうか。

 もしそうなら少し悲しいけれど、ほとんど嬉しいんだよ。本当に。

 高校に入ってからは異性の怖さを知った。

 今までは同性にしか虐めらてこなかったけれど、今回は異性に虐められるようになった。

 キモイ・・・容姿のこと、それ以外のこと卑下するところはどこまでもあったらしい。

 でも、それは簡単に終わった。

 簡単に復讐するだけで終わった。

 復讐の方法は内緒だよ。

 それからはほとんど感情をなくした。

 やりたいこと、やらなければならないこと。本当に何もかもやらなかった。

 でも、社会人になってからは仕事だけはきちんとした。

 家族は特別好きという訳ではないけれど。やはり、自分のことだけは自分でやっていかなければならないと思っているからだ。

 僕は異様にまじめなので、会社での僕の評判はまぁまぁ悪くはないようだ。

 そう僕は何も無いのだ。

 特徴も、人格も、欲望も、絶望も、失望も。

 もう何も無い。

 僕には小さい頃いっぱい夢があったはずなのになぜだろう。

 なぜ僕はこんな無気力になってしまったのだろう。

 誰のせい?

 もちろん。僕のせいだよね。

 責任取りたいけれど、責任の取りようが無いよ。

 本当にバカだね。僕って。

 僕は立派な人間になりたいわけではないよ。

 僕は人の上に立ちたいわけでもないんだ。

 僕は寂しいんだよ。

 みんなみたいに。友達が居て、恋人が居て、温かい家族があって、少しの給料でももらって幸せにひっそりと暮らしたいだけなんだ。

 本当なんだよ。

 でも、もう無理だよね。

 だって変わらなければいけないのは僕のほうなのに。

 僕はいつだって世界のほうを批判してしまうのだから。

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