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gradge  作者: クロイ名無
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第2の犯行

 今朝は目覚ましが鳴る前に起きれたうえに、寝起きもよかった。俺はいつも通りに着替え、下へ降りた。下へ降りてきたが、今日もまた、桜はいなかった。まあ、おそらく、風邪が直ったばかりだから、念のため来なかったのだろう。もしこれで学校にいなかったら、今日こそ本当に家に押しかけるしかないな。俺は荷物を玄関に用意して、自室で漫画を読み、ちょうどいいぐらいの時間になると、家を出た。

 昨日と同じように1人で通学路を歩くが、やはり違和感がある。まあ、それも今日までだろうとその新鮮な気分を味わいながら歩いた。

 学校に着くと、妙に学校内が騒がしかった。

「ねぇ、聞いた?昨日の事件」「昨日の夜、校舎やグランドにあった不思議な液体の跡だろ?」「そうそう。先生たちも、初めは理科の先生が何かの薬品を落としたんだろうって言ってたけど、昨日の放課後は理科の先生、夜残ってなかったらしいよ?」「俺が聞いた噂によると、あれ、血らしいぜ?」「うそ~!なんで学校にそんな跡があるのよ。」「知らねぇよ。それにあくまで噂だよ。」

 歩いてるだけで聞こえる内容でも、物騒なワードが聞こえる。こういうときは、さっさと教室に向かうべきだな。悪い内容にしろ、単なる勘違いにしろ、良なら情報が早いだろうし、良自身の考えが聞けるからな。

 教室に入ると、すぐに良がやってきた。

「学校中騒いでるから知ってると思うけど、朝、校舎やグラウンドに血の跡があったんだ。」

 なんとなくそうじゃないかと思っていたが、良が断言するとは思わなかった。

「なんで血だって分かるんだ?」

「第一発見者が俺だからだ。」

 良は普段から学校に来るのが早くて、いつも教室で予習をしている。だから、その跡も発見できたのだろう。

「でも、なんで血なんて分かったんだ?」

「当たり前だろ?いくらなんでも、学校内に血と間違えるような液体は置いてない。少し見れば分かる。」

 確かにそうだ。実際、どのくらいの跡かは分からないが、血の跡なら普通は分かる。

「……で、なんの血かは分かったのか?誰か死んだのか?」

 一瞬、思いついたのが桜。桜はまだ来ていない。風邪(おそらく)だから、来るのが多少遅いかもしれないし、やはり悪化して家にいるのかもしれないが、それでも心配だ。

「まだ分かってないけど、俺が見つけただけでも5箇所、血の跡があったんだ。もしかしたら他にもあったのかもしれないし、5箇所に血の跡があったからといって、被害者が5人とは限らない。」

 良も桜を思い浮かべたのか、少し落ち着きがなかった。だけど、逆に俺は落ち着いていた。昨日とは違い、すぐに思いついた

「もしかしたら、血の跡は10箇所あるのかもしれない。」

「……どういうことだ?」

 落ち着かずにブツブツ呟いていた良だが、俺がそう言うと、瞬間、怖い目つきになって俺を見た。

「前に、グラッジという人とメールをしているって言っただろ?」

「ああ。あの文通か。まだ続いてるのか?」

「いや、続いてるって言うかは分からないけど、最後のメールに気になることが書かれてるんだ。」

「気になること?」

 説明するより見せたほうが早いと思い、携帯を取り出して、パソコンのメールボックスを開いて、そのメールを見せた。

≪To Χ From グラッジ

 始まるのは6時。1日1回。最後の6回目に貴方。

最初は地獄の炎が身を焼き、その体は二度と動くことはなくなる。自らが招いた炎によって、灰になる。

次は連続殺人、殺すのは10人。残すのは10の跡。近くじゃないけど近くにいる人。知らないけど知っている人。さあさあ次に死ぬのは10人。

3つ目。後ろめたいことがないならば、前を見て歩け。もし非があると思うなら、その頭を下げ過去を悔い改め、罪を償え。

4つ目。泥棒は物を盗むだけ。強盗はもっと大切なものを取っていく。さあ気をつけて、今度は死神が貴方の命を取りに来るよ

5つ目だゴールは近い。早く見つけてご覧。奪う命はあと2つ。次は裏切り者。お金は大切。でも、絶対のものではない。お金に眩んだその目はいらない目

最後に貴方。永遠に感じられる日も終わりが来る。さあ、貴方の元へ参ります≫

確信はもてないけど、おそらく間違いない。


『近くじゃないけど近くにいる人。知らないけど知っている人。』


 学校の人なら、近いとも近くないとも言える。それに知っているとも知っていないとも言える。

「昨日の火事も時間はともかく、内容は一致してる。」

「……確かにそうだけど、問題は快の言うように時間だ。今回は分からないけど、昨日の火事は深夜3時だ。9時間の差がある。」

 良も俺と同じ考えのようで、悩んでいる。もしこの内容が本当なら、明日にはまた誰かが死ぬ。次は今までのように分かりやすくは書いてないが、何か後ろめたいことがある人。つまり、何か犯罪を犯した人だと思う。

「良。次のことを考える前に、まず今回と前回のことを考えよう。」

 次のことを考えていると顔に出ていたのか、良はそう言い、一文一文指差しながら確かめた。

「まず昨日の火事。時間は置いておくとして『地獄の炎が身を焼き、その体は二度と動くことはなくなる』。」

「これはそのままの意味で、丸焦げになって発見されただろ?」

「ああ。次は『自らが招いた炎によって、灰になる』。」

「これは……灰とまではいかなくても、誰か分からないほどに焼けてたんだろ?」

「ああ。じゃあ、1つ目は正しいってことか。」

 もう既にこの時点で、俺も良もこの文が全てこれから起こることだということをなんとなく予感している。でも、そうでなくて欲しいと思いながら、次を確かめる。

「『続殺人、殺すのは10人。残すのは10の跡。近くじゃないけど近くにいる人。知らないけど知っている人。さあさあ次に死ぬのは10人』。」

「まだ10人死んだかは分からないし、血の跡も分かってるので5箇所だな。」

「……つまり、これで残り5箇所が見つかって、死んだのも10人だと分かったら……」

 良は最後まで口にしなかったが、お互いに分かっている。……いや、この結果が出る以前に、今の時点で、この文が本物だと分かっている。

「じゃあ、次は今日のやつか。」

「ああ、そうだな。」

「『後ろめたいことがないならば、前を見て歩け。もし非があると思うなら、その頭を下げ過去を悔い改め、罪を償え』。」

「良……意味、分かるか?」

「よくは分からないけど、おそらく、犯罪を犯した人だ。でも、捕まっていない人だな。」

「なんで捕まってない人なんだ?」

 途中までは俺と同じだったが、良は『捕まってない人』と断言した。

「グラッジ自身も、わざわざ刑務所に入って殺すわけがないから、対象が犯罪者だと仮定すると、まだ捕まってないか、釈放されたかだ。だけど、文の後半に『過去を悔い改め、償え』て書いてある。釈放されたからといって悔い改めてるとは限らないが、償えってことはまだ償ってないって事だ。だから、たぶん捕まってない人だ。」

「なら、余計に探すのは無理じゃないか。」

 まだその犯行を止めると決めたわけじゃないが、誰かが死ぬと分かってるのに、みすみす見逃すようなことはしたくない。でも、警察でも捜しきれていない人を探すことなんてできるわけがない。

「いや、そうとは限らない。例え犯罪を犯していても、犯罪が起こったことを知られていなければ捕まることはない。」

 良のいうことはもっともだ。……でも

「なら、なんでグラッジはそいつが犯罪を犯したことを知っているんだ?」

「それは……」

 良もそれを考えていなかったのか、すぐには答えられず、考え込む。可能性としては、対象が犯罪者ではないということだけど、他に考えられない。ここまでストレートに書かれていたのに対して、いきなり趣向を凝らした文にするとは思えない。

≪キーン!コーン!カーン!コーン!≫

 しかし、そこでチャイムが鳴ってしまい、考えは中断させるしかなくなってしまった。

 ……けど、それはちょうどよかったかもしれない。今は考えることが多くて、頭がいっぱいだ。桜は無事なのか?グラッジの目的は?殺されるとしたら次に殺されるのは誰?

 頭の中で考えるが、余計分からなくなる。先生が何か言っているが、それも右から左に抜けていく

「え~、皆も知っていると思うが、この学校の至る所に血の跡があった。」

 たまたま聞こえた先生のその言葉に、クラスの人は

「あ、やっぱり血の跡だったんだ」「ねえねえ。じゃあ誰か死んだの?」「いや、死んだとは限らねぇだろ」「でも、怪我はしたってことでしょ?」「案外、動物の血かもよ?」

 皆、好き勝手に喋りだした。俺としても、動物の血であってほしいし、例え人のものだったとしても、怪我で済んでいてほしい。

「血については警察の方が調べてくれているが、とりあえず、念のために今日の欠席の家庭には連絡するように職員会議で決まった。今日の欠席は……天野と増田か。誰かすぐに連絡が取れる人はいるか?」

 俺はすかさず手を挙げた。桜は携帯を持っていないので、直接家に電話をかけることになるが、とにかく一刻も早く無事を確認したかった。

「じゃあ深峰。天野にはお前が連絡を取れ。他のクラスもホームルーム中だから、あまり大きな声で話すなよ。」

 俺は先生の注意を聞き流しながら、早足で廊下に出て、携帯の電話帳から桜の家の電話番号を見つけ、ボタンを押した

≪プルルルル!プルルルル!プルルルル!≫

 ……でない。いくら待っても、誰も出なかった。時間を見てみるが、携帯電話の時計は8時45分と表示されている。この時間なら、少なくとも両親のどちらかは起きているはずだ。なのに、なぜ誰も出ないんだ?

 ついには留守番電話の声が聞こえてきて、焦りが増す。俺はすぐにもう一度桜の家に電話をかけた。

≪プルルルル!プルルルル!プルルルル!≫

(頼む桜。出てくれ)

 心の中でそう願いうも、また留守番電話の声が聞こえてくる。

 俺は急いで教室に戻り、先生に早退をしたいと言った。

「だが、まだ何かあったと決まったわけじゃあ……」

「そんな!お願いします。早退させてください!」

 俺は先生に頭を下げて、そうお願いした。もし、ただ単に寝坊して寝ていただけなら『よかった』で終わる話だ。でも、もし何かあったなら、探すなり何なりしないといけない。こうして話している間にも桜がヤバイかもしれないと、落ち着いてなどいられない。

 そしてとうとう、未だに迷っている先生に向かって、「すみません」と叫んで教室を飛び出した。後ろからは先生が俺を呼ぶ声が聞こえるが、そんなものは無視して走った。

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