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3)概念ドレスやで!

 そして爽やかな朝を迎えた――。

 カーテンの隙間から漏れる朝日に浮かび上がるクラン様の美しい横顔をガン見していると、クラン様の長い睫毛がゆっくりと開いた。そして薄い唇が言葉を紡ぐ。


「朝、か……」


 やだ、美しいッッ!! と感動に震えるあまり、クラン様に抱きついてしまった。


「おはようございます! クラン様ぁぁああぁあああああ♥♥」

「な、なんだ!? もう起きていたのか君は!」


 クラン様にベリベリと引き剥がされたが、私は頷く。


「はい♥クラン様の寝顔を見ていたら、朝が来てしまいましてぇ~♥」

「……フン! 朝から媚びるのに必死だな!」

「好きな人に媚びるのは当たり前です!」


 ずずぃっ! と近づくと、クラン様は目を逸らしてしまった。


 そんなこんなで朝食となったわけだけど、勿論クラン様と一緒がいいと私は言う。

 昨日の食卓では私が一方的に喋ってばかりだったので、今朝はクラン様のお話が聞きたいなー♥なんて思った次第なのだけど……。


「ふ、ふふ……。この僕の話を聞きたいだと? なら望み通り、話してやろうじゃないか……」


 そう言いながらクラン様はボソボソと何か話していたけど、声が小さすぎて早口すぎて聞こえない。


「~~……で、……も、だから~~」

「……ククク。~~どうしても……~~」

「~~そうすると……~~で、……~~」


 く、くそっ! 推しの声を一声も漏らさずに聞きたいというのに!

 仕方ないので私は立ち上がる。

 クラン様がぎょっとしていたけど、ええい! 構わん!


 そのまま近づいて、クラン様の足元にちょこんと座った。


「何だ君は! 食事中にマナー違反じゃないのか!」


 めっちゃ怒られたけど、マナー違反よりクラン様の声が聞こえない方が寂しいのだ。


「申し訳ありません! マナー違反ですけど、愛しのクラン様の会話が聞こえない方が辛いんです!」

「……なっ……!?」


 戸惑うクラン様に更に続ける。


「クラン様のウィスパーボイスも大好きですけど、会話が聞こえないのホント無理辛い! ってなっちゃいまして! だからクラン様のお声が聞ける位置にいさせてください!」

「……????」


 クラン様は本気で困惑していた。

 でも愛情を信じられなくなっている推しに愛を信じてもらえる為なら、何だってやるぜこちとらよぉ~!!


 そうして私の食事の時の席はイレギュラーだけど、クラン様の真横という構図になった。


 社交界では有り得ない、マナー違反だ、信じられないとクラン様はブツブツ言っていたけどね!

 でも推しを至近距離で眺めながら食事できるとか、考えてみて? 最高じゃない?


 そんなこんなで私は毎日のようにクラン様に愛情アピールを続けた。


 貴方の顔も声も性格も好きです! と恋文を何十枚かしたためてみては追い出され、お昼にはお弁当を作ってきましたーと突撃しては追い出され、お風呂の時にはお背中を流しますー(鼻血)と侵入しては追い出された。


 そういう毎日を繰り返していると、ようやくクラン様も『こいつ本当に僕のこと……?』と僅かに思ってくれたのか、最初みたいにぞんざいな扱いはしないようになってきた。

 何でこんな純粋な人なのに、嫁が2桁も逃げたのかしら……。


 そんな日々の中、クラン様から話があった。


『舞踏会があるので参加しろ』という、お達しだった。


 勿論ですぅ♥とヤル気まんまんで答える。

 ドレスの予算もデザインも好きにしろとのことだったので、好きにさせてもらった。


「クラン様ぁ~! ドレス予定図ができました!」(バァン


 クラン様の執務室に飛び込むなり、私は彼にテレテレしつつ予定図を見せる。

 そこには……。


 推しの髪色の灰色のドレスに、推しの瞳の色の金色がアクセントに使われたドレスだった。

 それを見たクラン様が予定図を手で叩いて即座にツッコむ。


「何だこの根暗なドレスは! 我が家の財政が疑われるかのような地味なデザインじゃないか!」

「クラン様の概念ドレスに根暗とか地味とか失礼なこと言わないでください!」

「僕のイメージだったのかコレは! その方が失礼だろうが!」

「安心してください! 痛バもデザインしてみました!」


 とクラン様の肖像画がズラリと並んだバッグのデザインをドヤ顔で見せる。


 クラン様は少し笑うと、暗い顔で告げた。


「クク……社交界の死神と呼ばれた、この僕の顔を晒して恥をかかせようというわけか……」

「は? 違いますけど? 社交界の女神と呼ばれた(※私だけが読んでる)クラン様の肖像画100選でバッグ作って、社交界のメスどもにマウントとりたいだけです」

「……ッッ!」


 何故かハチャメチャに気持ち悪がられたし怒られた。


 その後『君に任せておくとロクなデザインにならない! というか、そもそも何故、プロにデザインを頼まずに自分でやろうとした!』と延々とお説教された。


 けど……


 推しにお説教されるのって、幸せ~♥(周囲に舞い散る花)

 とウフウフしていると「聞いているのか!」と叱られたので、大きく頷く。


「わかりました! プロに頼んで概念ドレスと痛バをデザインしてもらいます!」

「聞いてないじゃないか! 特にイタバ? とかいうのは絶対に止めろ!」


 こうして、すったもんだの末に社交界編へと続くのだった……!

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