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【BL】学校一のイケメンとひとつ屋根の下  作者: おもちDX


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4.見たな!?

 放課後になると、瑞は秀治たちと廊下でだべっていた。テスト期間が近く今日は秀治の家で勉強会をする予定だが、メンバーがあと一人揃っていないので待っている。


 この高校は一応進学校のため、部活動はそれほど活発ではない。特に文化部なんて毎日活動しているところの方が少ないくらいだ。

 そのため瑞も、運動神経抜群な桔都でさえも帰宅部だ。ま、桔都は早く家に帰ってあのスタイルに戻りたいだけなんだろうけど。


「あ」


 そんなとき、華やかな友人たちを引き連れた桔都が廊下の向こうからやってきた。顔面偏差値高めな集団の中でも、桔都は飛び抜けている。なんていうか、オーラも含めて格好いいのだ。


 瑞は桔都の顔を見て伝えたいことがあったのを思い出した。連絡先は知っているけど、話した方が早いと咄嗟に考える。

 桔都の真実の姿はもちろんのこと、一緒の家に住んでいるという事実は隠さないといけない。けれど存在を無視するとか話しかけてはいけないとか、そこまでではないと思うのだ。


「き……お、逢坂」


 秀治のギョッとした気配と友人たちの視線が横顔に突き刺さる。あまり大きな声ではなかったため、桔都の取り巻きは聞こえていなかったか無視したかだったが、桔都の足はそこで止まって振り返ってくれる。

 周囲の様子なんて気にせずに瑞は桔都の方へと近づいていった。


「話が……えっと、先生からの伝言!」

「……」

「桔都? なにしてんだ?」


 なにこいつ、みたいな驚いた表情で桔都が見てくる。なかなか演技派だ。

 取り巻きたちも気づいて立ち止まる。サッカー部のエースみたいな顔をした男が声を掛けてくるが、桔都はそちらを振り向かずに答えた。声に不機嫌さが滲んでいる。


「職員室に呼ばれてるらしいから、ちょっと行ってくるわ」

「えー、カラオケは?」

「今日はパスで」


 桔都が来ないとつまんないじゃん! という女子の声が聞こえてくる。王子様ってカラオケとか行くんだぁ……と瑞がぼんやり考えていると、さり気なく背中を手のひらで押された。

 あ、そうだった伝言伝言。とりあえず、会話を人に聞かれない場所まで移動しないといけない。


「瑞……?」

「すぐ合流するから、先に行ってて!」


 秀治たちは明らかにポカンとした顔をしていた。伝言? お前が? って疑問が顔に書いてある。なんか上手い言い訳を考えておかないと。


 瑞は廊下の途中にあるフリースペースまで歩いていき、隅っこの方に桔都を呼ぶ。後ろをトコトコついてくるのは家と同じで微笑ましいけど、立ち姿や見た目が王子様なので違和感しかない。


「ごめん、学校で話しかけられるのも嫌だった?」

「いや、全然。で、話ってなんだった?」


 わあ、話し方も違う……! 瑞は間抜けな顔で口を開けて驚いた。当然なのだが、家みたいにぼそぼそしていない。

 昼休みほど混んでいないフリースペースの端で、桔都が腰を曲げ瑞の方へ顔を寄せてくる。キラキラしたオーラが眩しくて、顔が熱くなってくるのを感じた。


「今日うちの親たち、デートだろ? 夕飯適当に食べてって言ってたけどさ、外食と買ってきて家で食べるの、どっちがいい?」

「家」

「あはは、即答。じゃあさ、ピザでも取らない?」

「いいじゃん。瑞、天才かよ!」


 眩しい笑顔が向けられる。この顔で「瑞」って呼ばれるの、て、照れるな~……

 瑞はポッポと火照る頬を両手で隠した。


「おけ、じゃあおれは友だちん家で勉強会してから帰るわ。桔都はカラオケ、行かなくてよかったのか……?」

「ああ、ぶっちゃけ家でジッとしてる方が百倍マシ」

「ぷっ」


 この顔でインドア発言もおもしろすぎる。昼休みにサッカーをしていた人とは到底思えない。瑞はお腹を抱えてひとしきり笑ってから、桔都に手を振った。


「じゃあな!」

「あんまり遅くなるなよ。待ってるから」

「は、は~い……」


 やっぱり顔が熱い。桔都のギャップに振り回されて、心臓の動きも変だ。

 なんて罪な男なんだと心の中で文句を言いながら、瑞は秀治たちと合流するために急いだ。




 桔都に話しかけたことに対する追及もなんとか逃れ、勉強会という名のお喋り会を終えた。

 秀治には「瑞って、わりと積極的なんだな~」としみじみ言われてしまった。恋する乙女の設定は早々に解除してほしい。


 宅配ピザなんていつぶりだろう。ふんふん鼻歌を歌いながら帰ると、桔都はわざわざ宅配ピザのチラシを用意して待っていてくれた。学校とは真逆の、相変わらずのボサスタイルにもはやホッとする。


「え~なににしよ~! 『発酵爆弾! 納豆キムチピザ』とか『スーパーデトックス ケールとチアシードピザ』とか、意味わからんけど気になるよな!?」

「え……そ、それはちょっと」


 期間限定のメニューを見てわくわくしながら提案すると、桔都は眼鏡の奥で目をキョドキョドさせた。レンズが分厚いせいで目が小さく見えるのが、キラキラ感半減に一役買ってるなぁと思う今日この頃である。


「あっ。このクォーターってやつでさ、二種類ずつ選ぼうぜ! 苦手なものあったら遠慮なく言えよ?」

「う、うん……僕は定番のが、いいかな……」


 ちゃんと桔都の許可も取って、瑞は『和風出汁香る 梅茶漬けピザ』と『エベレスト・モンブランピザ』を選んだ。

 桔都は『マルゲリータ』と『ペパロニ』を選択していて、不思議な人もいるものだなと感心する。こういうのって、ちょっと変わったやつを試すのが楽しくない?


 ネットで注文すると、すぐに店から電話が掛かってきた。自分のスマホで注文した瑞が応対すると、電話口の店員さんは外国の人らしくちょっと片言の日本語で注文内容を再確認してきた。


「ホントに、ホンットーに、この組み合わせで間違いないデスカ?」


 オンラインで全て済ませてしまうような昨今、驚くほど丁寧な店だ。『和風出汁香る 梅茶漬けピザ』は食べる直前で温かい出汁をかけるらしく、「ちゃんとピザを切り分けてからカケテネ」と教えてくれた。

 確かに『エベレスト・モンブランピザ』はデザート系だし、出汁がかかるのは少し嫌だよな。


 注文が込み合う時間帯だったようで、配達には一時間ほどかかるみたいだ。瑞は反省してしょんぼりと項垂れた。


「ごめん、もっと早く帰ってくるべきだったよな」

「ううん、全然、気にしてない! ピザが届くまで……なにかする?」


 素晴らしい問いかけに目を輝かせて、パッと顔を上げる。そっか、この一時間は家族かつ同級生の桔都と何して過ごしてもいいんだ!


「つってもな~。おれ、ゲーム機とか持ってないし。スマホでなんか対戦する?」

「ぼ、僕が持ってるから!」


 桔都は突然立ち上がり、二階への階段を駆け上がっていく。瞬発力はさすがと言うべきか、すぐにリビングへ戻ってきた手には任天堂の某ゲーム機が握られている。


「お……お、おお~~~!!」


 はわわ、と両手を震わせてしまった。あの開かずの部屋には、こんなものが隠されていたのか!

 夢中で遊ぶゲームを決め、瑞がやっと操作に慣れてきた頃には家のインターホンが鳴る。本当に、あっという間の一時間だった。協力プレイのできる攻略ゲームで、桔都ともさらに仲良くなれた気がする。


 新食感かつ未知の味のピザを「変だな!」「うん」と言い合いながら食べ、その後もゲームの続きをしたかったけどさすがに遊びすぎかな……と自制心が働く。


 瑞は普段のんびりしているぶん、テスト勉強は一週間のテスト期間だけでは絶対に間に合わない。だからこそ今日は秀治たちと勉強するつもりで集まったのだが、結果はお察し。

 夜は今度こそ勉強しようと、珍しく自分に厳しくいくことにした。


 瑞が先にシャワーをさせてもらうと、洗い物まで全部済まされていた。リビングは一緒片付けたのだが、キッチンの洗い物は風呂上がりにしようと思っていたのだ。


 母子家庭、父子家庭だったからこそ自分たちは結構しっかりしているのかもしれないな、と思う。なんだかこのまま二人で暮らしていけ、と言われてもなんとかなりそうだ。そんなことにはならないだろうけど。


 風呂が開いたよ、と伝えるべく桔都を探す。一階にいなかったため、二階の自室にいるのだろう。


「おーい。桔都、風呂あいたぞー」


 コンコンとノックをして声を掛けるも、反応はない。ドアに耳を当ててみたけど物音ひとつ聞こえない。ここにいない? 外に出たとか?

 わからないけれど、この部屋にいるかどうかを確認してしまいたい。瑞は「ごめん!」と心の中で謝罪してからソッ……とドアを開けた。


「……わぁっ」


 瑞の部屋と同じ広さの六畳一間は薄暗く、ベッドがあり、テーブルにパソコンが置かれていた。しかしなにより驚くべきものが視界に入ってくる。

 壁に沿って置かれた透明のコレクションケースには、無数のフィギュアが飾られていたのだ!


 数の多さに思わず声が漏れる。部屋の主は探すまでもなくベッドで横になっていた。耳にはイヤホンがついていて、モニターではスパイダーマンがビルの上を飛び回っている。映画を見ているうちに眠ってしまったらしい。


 瑞は起こそうと思ったが、廊下から差し込む光で桔都が自分で目を覚ましたようだ。しぱしぱと目を瞬かせる桔都に向かって声を掛けた。


「桔都、風呂……」

「うわあああああ! み、み……見たな!?!?」


 寝起きでボサボサ髪の桔都は絶望を顔に浮かべ、大声で叫んだ。

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