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驚異の回復、希望の光

 手術翌日、仕事を済ませ病院へ向かいました。


 面会受付をすると、看護師にICUへと案内されました。

 妻は目を覚ましていました。


 妻はワタシを見ると何か言いたそうでしたが、

人工呼吸器が取り付けられている為に言葉を発する事ができません。


 看護師が準備してくれた「筆談用具」に、

 妻が弱弱しく字を書きました…


 「子供たちは大丈夫?」


 ワタシは「大丈夫。何も問題ない。」と

溢れ出そうになる涙を堪えて答えました。


 看護師は「もう一日ICUで様子見て、問題なければ特別病室へ移動、その後は一般病室に移動します。」と今後の予定を説明しました。

 長居すると体力消耗させてしまうので、妻に「また明日来る」と伝えて帰宅しました。

 

 その後、出社して仕事、仕事が終わって病院へ行くパターンが二週間ほど続きました。



 舌と左顎を摘出した事で、呼吸と食事に障害が出ました。

 呼吸(特に吐き出し)が困難となった為に、首を切開して(穴を開けて)気道確保の開閉弁を付けました。

 その為に食事に関しても段階的な調整となりました。


 術後1週間は点滴、その後は流動食、小粒の固形物、通常の固形物と変化しましたのですが、流動食に対して妻の「泣き」が入りました。


 流動食…乳児用の薄味のペーストを想像したのですが、実際には「ペースト状にした通常食」だったそうです。


 白米はお粥ですが、オカズは病院食で味付けが薄いモノをミキサーでペースト状にしており…


 「ものすごく不味い」

 「不味すぎて飲み込めない」


 味付けのないほうれん草のおひたしのペースト


 蒸した白身魚(軽い塩味)のペースト


 これは匂いを嗅いだ瞬間に食欲が無くなるツートップとの事でした。


 さらに誤飲防止で「水」飲み禁止だったので、水で流し込む事すらできず食事は苦痛だったそうです。


 手術から三週間後、

 世間はゴールデンウィーク。


 ワタシは妻の手術後に初めて子供たちを連れて病院へ面会に行きました。

 それまで子供たちを面会に連れて行かなかったのは妻に禁止されていたからでした。


 「子供達には直ぐにでも会いたいが、

 自分の痛々しい姿を子供たちが見たら

 ショックを受ける。

 チューブが全部外れて、喋れるようになるまで

 子供たちを連れてくるな」


 と強く言われていました。


 5月になって短時間ではあるものの喋れるようになったので、妻から子連れ面会の許可がでました。

 三週間ぶりに母親に会える子供たちは朝からご機嫌でした。

 ほんの一時間の面会でしたが、妻も子供たちも元気になってくれて嬉しかったです。


 その後の妻の回復は医師も驚くほどに順調で、

手術から一ヶ月後には無事に退院となりました。


 退院後、

 日常生活に戻るにはリハビリが必要でしたので、

ワタシの母にサポートをお願いしていました。

 ところが妻の性格上、義理母に家事をお願いするのは心苦しく、サポートされる前に自分で家事をやろうと無理してしまい、身体への負担が大きくなるという悪循環に陥ってしまいました。


 結局、家事はマイペースでやるのが心身ともに負担が少なくて済むという結論に至り、母のサポートは退院後十日で終了する事になりました。


 母のサポート終了後、

 退院後に初めて自炊した時の第一声が


 「自分の好物を

  自分の味付けで食べれるのは超幸せ」


 満面の笑みで伝えてきました。


 退院から二ヶ月。

 活動量は徐々に増えて、日常生活であれば、

 それなりにできるまでに回復しました。


 時期を同じくして念願のマイホームへの引越しもありましたが、こちらはワタシが全て対応して何とか予定通りに終了。

 マイホームでの新生活が、妻の心の回復の一助になったと思います。


 その後も少しずつ体力回復し、年明けにはクルマで遠出できる様になりました。


 懸念だった食生活への影響(飲み込み時の痛みや味覚障害)もなく安心しました。


 病院への定期検査も一人で行けるくらいまで回復し、平穏な生活を取り戻す事ができました。


 退院から十ヶ月経過、体調も体力も安定したので子供たちの春休みに中国へ里帰りすることにしました。

 両親や親族たちとの再会で元気を得たようで、以前と同じような生活に戻りました。


 ワタシも妻も「癌」とは決別できた

と思っていました。


 ところが、そんな「癌」を気に掛けない生活も

束の間でした。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

次回は 2026年1月 7日 公開予定です。


ep12:一進一退の攻防戦

ep13:負けられない戦い


癌摘出/再建手術から回復し

日常生活を取り戻した家族に

再び病魔が忍びよります。


束の間の日常のなかで、

家族は再び試されることになります。


宜しければ引き続きお読みください。


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