↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王国の宰相  作者: 佐伯アルト
Ⅱ 魔王国の改革

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/367

10節 宰相の受難 ⑥

「……ねえねえ、嫌な予感しない?」


 四階への階段を下り始めた時、エイジが唐突に口を開く。


「嫌、と言うほどではありませんが__」

「何か起こりそうな予感はしますわね」


 エイジは後ろを振り向く。


「君はどうだ、アーヴ?」


 問われた彼は冷や汗をかきながら。


「い、いや……どうでしょうか、ね……」


 千里眼を持っているなどと知ってしまえば、見透かされているような気がして、あまり良い気分はしないだろう。そして、そんな彼が嫌な予感とか言ったら、それはかなりの確率で当たることは想像に難くない。アーヴは緊張で顔色が悪くなり始めた。


 そんなこともあり、警戒を強めた四人は四階に降りるが、円卓の部屋が見えたところで足を止める。部屋の前で、廊下を塞ぐように魔族が一人、彼らを待っていたからだ。


「ん? 君、何か用か? そうでないならそこ、どいて欲しいのだが」

「宰相殿、ついて来ていただきたいのですが。見ていただきたいものがあるのです」

「……ああ、分かった。だがこの後用事がある。早めに済ませてくれ」


 エイジの了承を得ると、その魔族は歩き出した。エイジは素直についていく、その前に後ろの三人に目配せする。秘書二人は何かを感じ取り表情が引き締まった。アーヴは何のことかイマイチ分からず、オロオロしていたが。




 五人は三階に降りる。そのまま通路を真っ直ぐ進み、フロアの中央に着いた辺り……どこまでいくことになるだろうか、と考え始める頃、案内役が足を止める。その先には数人の魔族が。


 __突然、目の前の魔族が横に飛び退いたと思うと、奥の魔族たちがエイジに魔術を放った!


「やったぞ!」


 上級と見られる魔族が勝ち鬨をあげる。ランク4相当の魔術を、計十発撃ち込んだのだ。これでタダで済むはずがない、と思ったのだろう。しかし__見込みが甘過ぎる。


「なっ、バカな…」


 噛ませ犬の典型のような台詞を吐きながら、後ずさる魔族たち。その視線の先には、凄まじい殺気を帯びた眼光がギラついていた。


 煙が晴れると、状況が分かる。獣のように獰猛が過ぎる鬼気迫る表情であり、今にも飛び掛かり首を掻き切らんと短刀を構える秘書二人と、その手を掴み留めるエイジがいる。そして、彼らの正面には結界が張ってあった。後方で怯えるアーヴ含め、当然の如く全員無傷。


 攻撃の予兆を察知し、魔術が放たれる前に投擲で殺そうとしたシルヴァ。結界用の呪布を構え、最悪自らを盾としてでも守った後、煙に紛れて始末しようとしていたダッキ。それらを全て察して、何れをも未然にエイジが防いでいた。


「離してくださいまし。貴方様をお守りし、あの不忠者を誅殺するのが、妾の仕事なのです」

「ええ、あの者達を葬らねば、私の気が収まりません」

「オレの問題だ、君らに解決してもらっちゃ意味がない。自分でなんとかするさ」


 彼の説得で、得物を下げる秘書兼護衛の二人。そこで漸く、エイジは二人の腕から手を離す。しかし__


「テメェらが、犯人か……! よくも、やってくれやがったな?」


 落ち着いていたように見ていたエイジの方が、遥かに激甚な憤怒を湛えていた。


 右手を払って煙を払い、その灼眼を煌々と輝かせ、腹から響くような低い声を伴い、極大の敵意と非常に重いオーラを放ちつつ、それでいて静かなまま。怒りの臨界点を超え、一周回って冷静になっている程だった。


「オレと話をつけてぇんだな? いいだろう、受けてやるよ。だがここではダメだ、地下の鍛錬場、そこでヤり合おう。安心しろ、オレは逃げも隠れもしねえし、テメエらはどんな手を使っても構わん。……アーヴ、ベリアルとレイヴンに伝えといてくれ、少し遅れるってな。じゃあ、行こうか」


 その途方途轍もない威圧感に気圧されて、テロリストも秘書さえも、彼に逆らうことができなかった。




「魔王様! 将軍様!」


 玉座にアーヴが駆け込んでくる。呼ばれた二人は焦っている様子の彼に、また事件かと身構えた。


「何事だ」


 ベリアルは至極落ち着いた調子で問う。魔王ともあろうものが焦っていては、示しがつかないばかりか焦りが波及し、パニックが起こってしまうからだ。


「それが__」

「まず深呼吸して、息を整えたまえ。話すのはそれからでよい」


 アーヴが息を整えるのを待ってから顛末を聞く。エイジが一連の事件の犯人グループと思われる連中に襲撃を受け、地下の鍛錬場で決闘することになった、と。


「そうか……つくづくエイジも大変だな」


 レイヴンが同情するように、溜め息を吐く。


「うむ、了解した。遅れるとして、まあ一時間か」


 報告を聞いても、二人は特に何もしない。その様子に、アーヴはどうしたものかとオロオロしている。


「む、どうした? 報告は聞き入れた。もう戻って良いぞ」

「あ、あの、お二人は行かれないので?」


「あ? 何故俺達が行く必要がある」

「で、でも、お二人は彼に懇意にしていますし……」


 そのことを聞くと二人は、一瞬顔を見合わせると__


「ふはははは!」

「ふふっ、くっ、ははっ!」


 笑い始めた。その様子に、アーヴは更に混乱する。


「な、なぜです!!?」

「だってお前、そりゃあ、結果なんぞ見に行くまでもなくわかるだろう」


「え……?」

「ああ。それに、アイツを知っている我々だからこそ、だな。にしても、最初はあんなに煩わしそうにしていたくせに、レイヴン、随分とアイツが気に入ったようだな」


「い、言わなくても良いじゃないですか……悪かったとは思っています、私もあの時は意固地でした」

「……そうだな。我々は早くから彼を見ていたから知っているが、他はそうにもいかんからな……では、円卓部屋に向かうとするか。アイツへの差し入れに、おやつの甘味でも用意しながらな」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。