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魔王国の宰相  作者: 佐伯アルト
Ⅷ エイジの女難

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306/312

プロローグ:兆し

 遂に拙作も、中盤の山場を迎えた。これはハーレムもの故な、その関係性をそろそろ決さなければならない。生憎と、終盤までヤキモキさせるような焦ったい雰囲気を続けるつもりはないのだよ。この絆こそが、鍵を握る要素なのだからね。

 無論、フォーカスされるのは女性陣だけではない。世界観は当然そうなのだが__今までぼかし続けてきた主人公、エイジの真相というべきか。心根、闇の面にもスポットが当たる。これを乗り越えなければ、彼らは先へと進めないからな。

 さあ、苦難と救済を経て、彼らがどのような関係性へと至るのか。他では中々見れないその行末を、是非見届けてくれ。


 時期は十一月。屋内にいようが肌寒く、厚着するか暖房をつけないと辛抱堪らない。更には日も短くなり、北風も強くなる。冷帯に位置する魔王国では、もういつ雪が降ってもおかしくない。


 そんな、ある寒い朝のことだ。


「おはよう、レイエルピナ。今日はちょっと重要なお話があるんだ」


「あら、おはよう……話って、何よ」


 彼女は寝起きでまだ少しぼんやりしているのか、頭がフラフラ揺れ、小さな欠伸までしてしまっている。まったく、可愛らしい。


「実は……君の探しているものが、見つかった」


「ッ……!」


 その瞬間、目を見開き、鋭くエイジに詰め寄る。その勢い、胸ぐらを掴まんというほどだ。


「アイツらが見つかったの⁉︎ あの忌々しい機関が!」


「落ち着け、レイエルピナ。落ち着いてもらえなきゃ、この話は出来ない」


「見てわかるでしょ! わたしは過去一落ち着いてるわよ‼︎」


「……」


 とてもそうは見えない。だが、飽くまで今、主導権を握っているのは、情報を持っているエイジの方だ。彼が話そうとしないなら、レイエルピナにはどうしようもない。


「一つ言うことを聞いてくれたら、話を続けよう」


「……何よ」


「目を瞑って」


 その要求に、ぴくりと体を震わせる。そして、どこか意を決したように目をキュッと瞑る。


「息を大きく吸って……ゆっくり吐いて〜……よろしい。では、話をしよう」


 だが最初の指示で頭に疑問符を浮かべた彼女は、直ぐに思い違いを察し、吐く息は溜息になっていた。


「これに見覚えはあるか」


 エイジは大きな亜空間の孔を広げると、そこから何かを取り出す。


「ッ……! ええ、あるわ」


 ズズンという重々しい音を出したそれは、嘗てルイス王国で或る事件に巻き込まれた時に鹵獲したもの。魔力で動く機械兵器、仮称“魔導タンク“だ。


 既視感がある、という言葉に偽りはないように、彼女の息は荒くなる。


「これをアリサーシャに見せたところ、心当たりがあると。そしてつい昨日、デモンズハウンドからの情報で関連施設が見つかった。だからその直後……つい先程までだ。大陸中を探し、施設という施設を潰して回ったが、その中に奴等の本拠地と思しき施設を発見した」


「まさか、もう破壊したの⁉︎」


「いや。見つけただけだ。君に譲ろうと思ってね」


「それは良い心がけね。で、場所は、どこ」


「帝国、王国、そして共和国の国境が接する一点。そこに近い」


「……」


 レイエルピナは、考え込むように息を止める。思ったより遠く、更に魔王国の手も届かない場所だ。その足ですぐ向かうことはできないだろう。おまけに、情勢的にもおいそれとは向かえない。共和国からの帰還時に、帝国軍から襲撃を受けかけたばかりだ。


 その事実を整理すると、彼女は苦々しく歯噛みする。


「おや、思ったより冷静だね。形振り構わず、直ぐにすっ飛んで行こうとするかと思った」


「流石に、わたしもそこまで軽率じゃないわよ」


 それから、思案するように目を固く閉じて、眉間に皺を寄せていると……暫くして、エイジの目をじっと見つめた。


「ねえ、お願い。わたしをそこまで連れて行って。……難しいかな」


 不安そうな顔、加えて伝家の宝刀上目遣い。こんなの、断れる筈がないだろう。


「そう言うと思って、仕事はもう終わらせた。留守にするって連絡も各方に入れてある」


「それって……」


「今の君は危なっかしいからね。一人にはできないよ」


「……ありがとう」


「ふ、今日はやけに素直だ。……待っているから、決戦の準備をしておいで。なに、奴等も逃げられはしないだろうから」


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