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魔王国の宰相  作者: 佐伯アルト
Ⅰ 宰相始動

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6節 訓練の日常 ①

 エイジがこの世界に来て、一週間が経ったその日。


「どうでしょう、ここまでできるようになりましたよ!」


 エイジは体に魔力を漲らせ、指先に魔力を集中しビームを撃つ。すると、狙った先の石壁が少しばかり焼き付いた。先日教わって以降、ちょくちょく魔王様にアドバイスを乞いつつ練習したところ、魔力の制御がかなり上達したようだ。


「おお、素晴らしい!」


 滾らせた魔力の割にはしょぼい威力の攻撃だが、勿論城を傷つけないために加減されている。そのままの魔力で撃てば外まで貫通しただろうし、彼等がそれを察せないわけもない。ベリアルは賞賛し、幹部達も感嘆する。


「ここまで早く、しかもそれ程のレベルにまで上達するのは、かなり稀だ。いやしかし、制御が上達したからといって、ここまで魔力量が伸びるものなのか?」


「いえ、恐らくですが、今まで無意識に抑えていたのでしょう」


__……嘘だけど__


 無意識などではなく、これもまたチート級能力による恩恵だ。


「まあいい。では、これから中級魔術の練習と、魔術を使用した戦闘訓練を始めよう。モルガン、メディア!」

「ハァイ、どうぞ」

「んっ……」


 二人に抱えられていた魔導書が、ドサッと卓に積み上げられる。因みに、図書室での一件以来、お互いどのように接すればいいか分からなくなってしまったのか、エイジとモルガンの距離感はギクシャクしている。メディアとは特に関わりナシのままだが。


「中級魔術は、初級とは全く別物と言っていい程に複雑さが違う。見れば直ぐに分かるぞ。初級魔術が簡単に習得できたからといって、油断すると挫折する。気を引き締めることだな」


 そして魔王は一冊の魔導書を手に取り、エイジに広げて見せた。


「術式一つを見てみても、このように非常に複雑になっている。因みに上級は、これより複雑になるどころか、あまり整然としていない、汚い形になる。研究が進んでおらず、術式が簡略化されていないのが要因だ」


 ベリアルは魔導書を閉じると、後ろに控えている二人に顔を向ける。


「これからは私だけでなく、彼女達にも手伝ってもらう。たまにフォラスやノクトも手が空いたら手伝ってくれるだろう。では教える……が、その前に、再び講義の時間だ。今回は魔術の種類について」


 エイジは魔導書に伸ばしかけていた手を止め、席に着く。


「一概に魔術といっても、攻撃魔術だけではない。まずは『黒魔術』と『白魔術』について。これらは定義が曖昧だが、黒魔術が攻撃や呪い、弱体など敵に害を与えるもので、白魔術に回復など支援する魔術が分類される。しかし、『死霊術』や『錬金術』などといった簡単に定義できない分野もあり、あまり使われない表現だ。だがな、更に細かくすれば分かりやすく分類できる。攻撃や防御、支援に妨害。回復、霊術、錬金といった風にな」


 エイジはベリアルの言ったことをモゴモゴと復唱する。


「そして、この魔術の分類は重大な役割がある。魔術は九つの属性×魔術の分類によって決まる。例えば火属性の攻撃、風属性の支援、闇属性の妨害、水属性の回復、といったようにだ」


 エイジは顎に手を当て考える。今まで扱ってきた魔術を振り返ると、確かにその傾向があった。


「まず最初に、学ぶ魔術がどの系統のものなのかを術式から把握することが大事だ。やることが全く違うからな」

「ふんふん、成程。よし、じゃあやるか!」


 ベリアルの話は程々に聞いて、取り敢えず適当に魔導書を一冊取り、開いて読んでみるが__


「うわぁ……」


 全然分からず、厭そうな声が漏れてしまった。例えるなら、算数が数学に変わった感じだ。然れど、その気持ちには理解を示したのか、ベリアルは慰めるようにエイジの肩を軽く叩く。


「まあ、そうなるだろうな。特にお前は習得が早かったが故に、ギャップが大きいのだろう。しかし、二週間程ゆっくり時間をかけて習得していくから安心しろ。ここからは、あまり急ぐ必要はない。寧ろ、急いではいけないと思え」


 エイジは本を閉じ、目を瞑って、背もたれに体重を預け天井を仰ぐ。なんかめんどくさくなった、というオーラが溢れている。まあ、必要なことだからちゃんとやるけれど。


「ああ、そうだ! そこまで魔力の制御ができるなら、応用編を始めよう」

「うへぇ、また高等なことを学ぶのか……」


 今まではやる気に満ちていたのが嘘のように、弱気なセリフを吐く。そんなエイジに憤ることはなく、寧ろ励ますような声音でベリアルは続ける。


「これは、午後の戦闘訓練にも役立つことだ。いいか、魔力を身体に意識して流せると身体能力が向上する。強化したい部分に魔力を集中することで、力や防御力が上がる。無論、身体強化魔術の方が有効だが、いちいち魔術を使わずに強化でき、重ねがけもできるから便利なのだ。更に、手に持つ武器に魔力を流すと、丈夫さや威力の向上が望める。幹部達の戦闘を見て、あんな戦闘がしたいと憧れたのだろう? その熱意を今再び燃やす時だ。中級魔術は明日からにして、今から今日一日中魔力制御の訓練をするぞ!」




 二週間目からは、訓練の段階が上がる。今までのように素振りや打ち込みだけでなく、相手側からも攻撃が来るのだ。無論、相手となる幹部達は手加減しているが、それでも彼らは想像を絶するほど強い。身体能力だけでなく、技の冴えや気迫といったものが段違いなのである。だが、そんな彼らを相手にするということは、並々ならぬ経験値を積めることでもある。


 更に、これは実戦形式である。戦闘に使うのは武器だけではない。戦闘訓練に魔術や魔力を用いていくのだ。午前に学んだ中級魔術や魔力制御を、午後の戦闘で実践する。


 エイジの訓練進捗は、最初の方は魔術を扱うのはかなり辛かった。魔力制御も、相手の動きに囚われ乱れがちだった。だが三週間目の中頃に入る頃には、中級魔術の一部を戦闘に軽く織り交ぜながら戦えるようになった。


 実際、近接戦闘をしながら魔術を使うのは、相当難しい。魔術を発動するには魔術陣や詠唱を覚えなければならないし、更に敵の動きに集中しながら素早く展開したり、噛まずに早口で唱えたりで余裕がないのだ。慣れれば漫然と使ったり、手順を省略したりできるのだが、そこに至るまでがかなり難しい。とどのつまり、エイジは相当できる部類である。彼曰く師が良いから、だそうだが。


 そして、魔術を発動直前で維持し、好きなタイミングで展開する『ストックキャスト』、複数の魔術を紐づけて連続発動する『連鎖魔術』などといった細やかな魔術技もある。これを上手く扱えれば、前者ならば戦闘中に悠長に展開できないような高位の魔術を繰り出す、後者ならば複数展開による波状攻撃などなど、不意打ちに使うことができる。結局三週間のうちに、彼がこの手の技を使い熟すことはできなかったが。


 しかし、彼の戦う術はこれだけではない。このハードな鍛錬の間にも、特殊能力の扱いを練習していた。着々と、誰にも気取られぬように__


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