モナの処分
本日投稿 4/4
家に戻り、ここに魔族の諜報部隊がやってきた理由が、モナを見かけここに入るのを見たからだと告げると、モナは真っ青になって土下座した。
「申し訳ございません! 私の不注意のせいです!」
まあ、そうなんだけどな。
「いや、そもそも俺がお前をアドモスに偵察に送り込んだんだ。それなら、俺にも責任がある」
俺が本心からそう言うと、モナは土下座のまま叫んだ。
「いえ! 情報収集があまりにも簡単にいきすぎたので気が抜けていたのです! 全て私の責任です!」
モナは、元々王女であったメイリーンに仕えていた人物だ。
当然魔族国内での家柄もいいし、メイリーンに対する忠誠心も相当なものだ。
そんなモナが、メイリーンに迷惑をかけるかもしれない行動を取った。
それはまあ、責任を取りたくなるのも分かるんだけども。
「責任ねえ。それで? どういう責任を取るつもりなの?」
「もちろん。この命をもって……」
『それは困るっ!!』
モナの責任の取り方を聞いたこの家にいる全員が声を揃えてそう言った。
そう、全員が、である。
「いやいや、モナがいなくなったらこの家のことどうすんだ?」
「そうですよ。いてくれないと困ります」
「モナさんのお陰でユリアも助かってるんだよ」
「そうだよ! モナさんがいてくれたから、私はちゃんとアイラのお世話ができてるんだよ! 居なくなったら私が困る!」
「モナさんって、元王宮の侍女だったんスよね? そのお陰でエヴァも助かってるんで、本当にいなくなったら困ります」
「そうですよ! そんなこと言わないで下さいませ!」
全員が、モナがいなくなることを拒絶していくと、土下座の体制から顔をあげて見なの顔を見ていたモナの目に、みるみる涙が溜まっていった。
「み、みなさま……」
「そういうわけだから、そういう責任の取り方は無しな」
「で、では……私はどうすれば……」
あー、どうしようか?
俺が皆の顔を見ると、皆も困っている様子が分かった。
どうしようかなと思っていると、メイリーンがスッと手をあげた。
まあ、元々メイリーンの侍女だしな、彼女に決めてもらおうか。
「では、しばらくの間……」
メイリーンがどんな裁定を下すのか、皆が注視する中で、メイリーンはこう言った。
「お茶の時のおやつを一品増やしてくださいな」
『?』
一瞬、俺たちにはメイリーンがなにを言っているのか分からなかったのだが、モナを見ると、メチャメチャ焦った顔をしている。
「そ、それはっ!」
「ダメとは言わせません。これは、あなたへの罰なのだから」
「……くっ……分かりました……」
えー? モナは、なんでそんな辛そうな顔で頷いてんの?
本当に罰みたいになってんじゃん。
「……えーっと、モナはそれでいいんだ?」
俺が一応聞くと、モナはキッと俺を睨んできた。
「いいはずが御座いませんでしょう!? メイリーン様の美しい体型を維持するために、提供している食事は量を全て計算しているのです! それなのに、おやつを一品増やす? なんて恐ろしい……」
……どうやら、これだけ苦しむってことは、これがモナにとっては十分に罰になっているようだ。
それにしても、さすがに付き合いが長いだけあってメイリーンはモナの扱いが上手い。
王女として幼い頃から付き従われているんだもんな。
生まれも育ちも庶民の俺には思い付かんわ。
「はぁ、さすがメイリーンお姉様。見事な裁きですわ」
あ、同じ王女のエヴァからしてみても、今のメイリーンの裁きは上手いのか。
流石はメイリーンだな。
当の本人は、おやつが増えるということで、純粋に喜んでいるようだけれども。
そういう訳で、モナへの処分は決定した。
それから数日の間、嬉しそうにいつもより一つ多いオヤツを食べるメイリーンと、それを苦し気な顔で見詰めるモナという姿が見られたのだった。
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