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ある意味自業自得な王サマ

本日投稿 2/3

◆◆◆


 リンドアの召喚魔方陣遺跡でケンタの魔法に巻き込まれたアドモス王は、大怪我を負いながらもなんとか生きていた。


 慎重にアドモスまで搬送されたアドモス王は、王の私室で治療を受けていた。


 その治療方法とは、人族には珍しい魔法使いの中でも治癒魔法を得意とする人間を集めて、治癒魔法をかけるというもの。


 人族の中で治癒魔法が使えるものと言えば、ほぼ平民の町医者。


 治癒魔法が使え、市井では重宝されている町医者とはいえ、その実力はケンタや魔族からすれば本当にささやかな効果しかない。


 だというのに王宮は、金にものを言わせて大量にそうした町医者を王宮に呼び寄せた。


 いくら大金を積まれたとはいえ、自分の医院を放り出して駆け付けるのかと言えば……。


 大量に集まった。


 彼らは治癒魔法が使える町医者が儲かることを知っているので、町医者をやっている人間たちである。


 そんな町医者たちであるから、王宮の示した高額の報酬に、自分の医院を放置して誰も彼もが飛び付いたのだ。


 そうして集められた町医者たちは、毎日交代でアドモス王のために治癒魔法を使い続けた。


 一人ではささやかな効果しか生まない人族の治癒魔法だが、人数が集まるとそれなりの効果を発揮した。


 ただ、あくまでもそれなり。


 アドモス王が回復するには時間がかかり、数ヶ月経ってようやくアドモス王は自力で動けるまで回復した。


 まだ万全ではないとはいえ、ようやく身体が動かせるようになったアドモス王は、ベッドから出て自室のソファーに座り、紅茶を飲んでいた。


「ふぅ。ようやく身体が動かせられるようになったわ。全く、あの無能の医者どもめ。大した腕前でもないくせに金の無心だけは一丁前だな」


 アドモス王のその言葉に、側近たちは苦笑した。


「ですが、彼らがいなければ陛下の御身に後遺症が残っていたかもしれません。それを考えれば、彼らの功績は大きいと思います」


 側近にそう言われたアドモス王は、不機嫌そうに舌を鳴らした。


「ちっ、まあいい。それより、結局あの爆発はなんだったのだ?」


 アドモス王はそう聞くと、側近の一人がそれに答えた。


「リンドアが発表したところによると、我々が再度異世界人を召喚しようとしたことを嗅ぎつけたケンタ=マヤが、あの遺跡ごと爆破したそうです」


 その報告に、アドモス王は持っていたティーカップを床に叩きつけた。


「あの異世界の野蛮人め!! 奴のせいで私はあんなに苦しい思いをしたというのか!?」


 確かにケンタのせいではあるのだが、そもそもこの短期間で二度も異世界人召喚をしようとしたのはアドモスである。


 しかもその理由がケンタの討伐であるのならば、それを阻止しようとケンタの邪魔が入るのはごく自然なことだとも言える。


 なのだが、この世界で王族として生まれ育ってきたアドモス王にとって、自分の行動を阻害する者は、誰であっても、どんな理由であっても許し難い輩なのである。


「おのれケンタ=マヤめ……今に見ておれよ」


 アドモス王としてはすぐにでも実力行使に出たいところではあるのだが、流石にそれはマズイという自制心は持ち合わせていた。


「おい! すぐにリンドアに連絡を取り、また異世界人を召喚するように言え!」


 アドモス王は側近にそう命令するが、側近たちは困惑した顔で即答しなかった。


「なんだ? どうした?」

「いえ、それが陛下……」


 側近は言い辛そうにしながらも、アドモス王が大怪我をしてからのことを説明した。


 召喚陣遺跡はケンタの放った魔法によって破壊されてしまったこと。


 あの後、リンドアを中心に草木の生えぬ不毛の大地が広がり、リンドア王国民は王族から平民に至るまで国を捨てて出て行ってしまい、今リンドアには人がいないこと。


 その人のいなくなった旧リンドア王国内に入り込もうとする犯罪組織が多数存在すること。


 それを、どうやらケンタが魔法で迎撃しているらしいこと。


 それらを告げると、アドモス王は唖然とした顔をした。


「な……で、では、もう異世界人を召喚できぬと申すか!?」


 唖然とした顔から一転し、また怒り始めたアドモス王は、今度はテーブルに置かれていたティーカップのソーサーを側近目掛けて投げつけた。


「ひっ!」

「しかも、無人となったリンドア国内に入り込もうとする輩を迎撃しているだと!? そんなもの、ケンタ=マヤがリンドアを乗っ取ろうとしているに決まっているではないか!!」


 これは思い込みの偏見であったのだが、アドモス王の中ではケンタが旧リンドアを手に入れようとしていることは紛れもない事実になってしまった。


 そのアドモス王の発言が城外に広まり、例の噂になっていく。


 噂の出所は、実はここだった。


 それがケンタの耳に入り、ケンタが国境を越えようとする犯罪組織の迎撃を止めた。


 ケンタによる迎撃が無くなった犯罪組織は、悠々とアドモス側の国境を突破していく。


 巡り巡って、これも自業自得と言えるのかもしれない。


 そんな風に王城ではケンタを巡ってまた騒がしくなっていたのだが、市井ではまた別の騒動が起こっていた。


 それは王宮が国中の町医者を長期間王城に留め、市井から治癒魔法の使える町医者がいなくなってしまった頃の話。


 その状況に目を付けた者がいた。


「ふむふむ。へえ、王族は王様の怪我を治すために国中の治癒魔法使いを王城に集めたのか。それは酷いねえ」


 そう言ったのは、治癒魔法が使える医者が王城に行って不在になった医院に、それを知らずに集まった人から話を聞いた太田だった。



カクヨムにて先行投稿しています

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― 新着の感想 ―
「革命だー、アドモス王になるー」とか言い出しそうだな。
素人童貞、太田の、ねっとり口調が気持ち悪いwww 吉岡先生w よほど「太田」なる名字の人物がキライなんだな~www
あ 生きてたんだこいつw 何か問題起こしそうな予感がビンビンとw
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