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迷惑な王サマが復活したらしい

本日投稿、1/3

「おい、なんだよその話。どっから入手してきた……って、ここの警備兵しかいねえか」

「そうそう。なんか、ここを離れる予定があるのか? とか聞いてくるからさ、そんな予定はないって言ったんだけどな。その話がどっから出たのか気になったから、聞いてみたんだよ。そしたら、リンドアに侵入しようとしている奴を片っ端から攻撃してるのはリンドアを手に入れようとしてるからですか? って聞かれた」

「……あぁ~」


 あれ、ただの暇潰しだったんだけどな。


 そうか、他の国からしてみたら、俺の国に勝手に入んじゃねえ! って見えるのか。


 それは気付かなかった。


 周りの国のことなんか気にしてねえからな。


「一応、そんなつもりはないと思うって言っといたけど、それで良かったか?」

「ああ。そんなつもりは更々ないからな。その答えで正解だよ」


 俺がそう言うと、アイバーンはホッとした顔をした。


「そうか。ああ、良かった。お前が旧リンドアの農村に米の畑を作ったりするから、リンドア征服の足掛かりにしてんのかと思った」

「畑じゃなくて水田な。っていうか、なんで俺があんなデカい不毛の土地を支配しないといけないんだよ? どう考えたって俺の労力がデカすぎるし、支配する意味ねえだろ」


 リンドアを支配したとしてよ。


 俺含めて八人でなにしろってんだ。


 なんで少し考えたら分かることが分からねえのかな?


 この世界の人間の思考回路に首を傾げていると、荷物を受け取りに来たエヴァが苦笑しながら話しかけてきた。


「この世界の王族や貴族たちは、土地は支配すれば勝手に利益を生むものと考えている者が多いですから。そこにいる市民たちは数に入っていないのですわ」

「マジで腐ってんな」


 俺の言葉に、エヴァは「あはは」と苦笑した。


「これは耳が痛い話ですわ。正直、私も王城にいたころはお城から出たことが殆どありませんでしたから、そういう考えがあったことは否定できませんもの」

「へえ、そういうもんか」

「はい。ここに来てからですわ。アイバーンさんが色々と買い物をしてきてくれたり、ミツヒコ様が一生懸命お米を作っているのを見て、今まで使っていたものがこうして作られて売られていたり、食べていたものはこうして作られていたんだと気付きましたもの」


 王族や貴族ともなるとそんなもんなのかね?


 で、国の方針を決めているのが、そうした現場の現状をしらない王族や貴族と。


 そりゃあ、なにも考えてないように見えるわけか。


「そういう人たちからしてみれば、マヤ様の行動は自分の支配する土地に人を侵入させないように見えるのでしょうね」

「そういうことか……」


 そうかそうか。


 なら。


「もう国境超えてくる奴の的撃ち止めるわ」


 そんな勘違いされるくらいならもうやらねえ。


 そもそもただの暇潰しだったし、今は奈良君が転移魔法を覚えたから時々育成魔法をかけに行くだけでいいもんな。


 今まで結構な数の人数を的撃ちしたけど、ああいう輩は後から後からワラワラと出てくるので今後も沢山国境を越える奴らは出てくるだろう。


 まあ、頑張ってくださいなと。


 そういう訳で、俺はその日から、旧リンドアの国境を超える人間の的撃ちを止めた。


 それから数週間後、アドモスとリンドアの国境にほど近い街が犯罪組織に占拠された。


 そしてその数日後、アドモスがすぐに討伐隊を編成。


 国境にほど近かったこともあり、あっという間にアドモス軍に殲滅された。


 実はその様子を近くからリアルタイムで見ていたのだけれど、正直、俺を笑い殺すつもりなのかと勘繰ってしまった。


 だって、俺が的撃ちを止めた瞬間にアドモスの国境警備隊は国境越えを許しまくるし、犯罪組織も国境近くの街を占拠するし。


 もうね、馬鹿なのかと。


 例の、ワイマールの王女サマを監視していた魔法で見ていたんだけど、腹を抱えて過呼吸になりそうなくらい笑い転げてしまった。


 正直、この世界にき来て一番死にそうって思ったわ。


 で、この出来事に俺が一切出てこなかったもんだから、リンドアを俺が支配しようとしてるって噂は立ち消えになった。


 それどころか、俺が国境越えの犯罪者たちを止めていたのでは? という話がようやく出てきたらしい。


 で、そのときに気付いた。


 ああ、ワイマールが感謝してたのはこれか。


 ワイマールだけは、俺が国境を超える犯罪者を止めていたのに気付いた。


 だからアイバーンを通して礼を言ってきたわけだな。


 なら、ワイマールとリンドアの国境だけは通さないようにしてやろうかね、


 他の国はフリーパスだよ。


 散々、俺がリンドアを支配しようとしている! とか喚いてたのに、急に手のひら返されてもね。


 あれだ。


 もう遅い、ってやつだ。


 ワイマールとリンドアの国境と、奈良君のいる農村周辺にはここの森と同じような結界を張ったので、ワイマール側から国境を超えることはできないし、例え他の国の国境を越えて来てもあの農村に辿り着くことはない。


 他の国は知らね、ってスタンスでいたら、なにを勘違いしたのかアドモスが自分たちの国の国境にもワイマールと同じ結界を張るべきだと言い出した。


 それを聞いたエヴァは「恥ずかしい……」と言って真っ赤になった顔を手で覆って隠し、奈良君は「さっさと逃げて良かった……」としみじみと呟いていた。


 その主張を無視していたら、またアドモスとワイマールの関係が悪くなってきた。


 やれやれ、なんでこうすぐに関係が悪くなるのかね?


 っていうか、こんだけアドモス関連の噂があるってことは、もしかしてアドモスの王サマ、復活したのか?


 なんて迷惑な。



カクヨムにて先行投稿しています

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― 新着の感想 ―
つくづく自分本意な王族なんだな 良く続いたもんだw
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