新人召喚者との会談
予約投稿をミスってたみたいです
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「おし。じゃあ、皆揃ったな。それじゃあ、奈良君。こっちの状況も話すから、君の方も話をしてくれるか?」
「あ、はい」
アイバーンたちを連れて帰ると、俺たちは同じテーブルについて話を始めた。
ちなみに、レオンは家に帰ってくるなりメイリーンに抱っこをせがみ、俺から離れていった。
今も、メイリーンのことを俺のとき以上にしっかりと掴んで離さない。
おいおい息子よ。俺のときと態度違くね?
やっぱ母親には勝てねえのか。
「さて、まずこっちから聞きたいんだけど、奈良君は召喚されてからどういう風に過ごしてた? そんで、どんな話を聞いた?」
俺がそう聞くと、奈良君は話しづらそうに視線を泳がせた。
「言葉選ばなくていいよ。大方の予想はついてるから」
「え、そうなんスか?」
「ああ。どうせ、リンドアを破壊した極悪人。今じゃワイマールを手中に収めて世界を牛耳ろうとしてる……ってとこか?」
俺がそう言うと、奈良君は大きく目を見開いた。
「凄い……ほぼそのまんまッス」
「まあ、巷に流れてる情報を集めたら、それくらいは予想できるさ。それで、奈良君は同郷の人間として、悪の道に堕ちた俺を倒すために訓練してきたってとこか?」
「……はい、そうっス。俺、摩耶さんに破壊されたリンドアを見ちゃったんで、それで、その言葉を信じてしまいました」
あー、あれ、見たのね。
「それはまあ、しょうがないんじゃね? アレ見たらそう思うでしょ」
奈良君がアドモスの言うことを聞いてしまった理由を聞いて、俺は納得したのだけどアイバーンは首を傾げた。
「そういや、俺リンドア行ったことないんだけど、どんな状況だったの?」
そうか、いくら情報通のアイバーンとはいえ、見てないものは想像できないか。
「その、王都が半分破壊されてたッス。話によれば、王城を中心に、一回更地になったとか……」
「あー、なったねえ」
そういやそうだったなと思い出しながらそう言うと、奈良君とアイバーンはギョッとした目をした。
「や、やっぱ摩耶さんって、極悪人なんじゃ……」
「……逃げるときに王都を半壊させたってのは聞いたけど、そういう状況だったのか……」
奈良君は、俺が本当にリンドアを破壊していたことで、極悪人説が再燃したようだが、アイバーンの方は一連の流れを知っているため、予想以上に酷い状況だったことに驚いていたようだ。
そして、奈良君はアイバーンのその様子にも驚いていた。
「アイバーンさん……でしたっけ。その話を聞いても、あんま驚かないんですね」
「ん? ああ、そこに至るまでの話を聞いてるからな。まあ、今は疑念が浮かんでるだろうけど、最後までコイツの話を聞けば納得できる話だよ」
「……分かりました。摩耶さんの友人が務まるほどの人の言葉だったら信用します」
「おい、待てコラ」
俺の友人が務められるってなんだ?
俺の友人はそんなに過酷なのか?
「あ、いや! そういう意味じゃなくて! 全部の事情を知った上で友人をやってらっしゃるのなら信用できるなって!」
「……まあ、そういうことにしといてやる。それで? アドモスに連れて行かれてから、今日までどうしてたんだ?」
「それは……」
そうして、奈良君はアドモスでの暮らしを話してくれた。
俺の感想としては、予想以上に歓待されているということ。
衣食住は最高レベルで保証されているし、最高の指導者も付いている。
おまけに、なんだよお姫様に懐かれたって。
コイツ、マジで主人公じゃねえかよ。
「それで、魔族が俺たちを排除するために戦争を吹っ掛けて来て……それに駆り出されました」
「そうか」
「……無我夢中でした。殺さなきゃ殺される。そんな極限状態の中で……俺は、何人斬ったんだろう……? 気が付いたら、魔族が撤退していくところでした……」
奈良君が、今まで経験したことのない極限状態にあったことは想像に難くない。
俺も、そうだったから。
辛そうな奈良君を励ましてやろうか? なんて思ったときだった。
「フッ……フフフフフ」
メイリーンが、もう我慢できないという感じで笑い出した。
それには、さっきまで悲痛な顔をしていた奈良君も驚いた顔になった。
「メ、メイリーンさん?」
「フフ……ああ、ごめんなさいナラさん。あなたを笑ったのではないの。武力だけを持って知性を持たない弟が失敗したのがおかしくて」
ああ、メイリーンは自分の弟に玉座を奪われたからな。
魔族国の現政権は全員死ねばいいのにと、臆面もなく言ってのけるメイリーンだからこそ、現政権の失敗がおかしくて仕方ないのだろう。
その後しばらく、メイリーンの少し狂気を孕んだ笑い声に、奈良君は話が続けられずにいた。
「……メイリーンのことは一旦置いておこう。それで奈良君。戻ってからここに来るまで随分早かったけど、一回戦闘を経験してもう大丈夫だと思った?」
「そんなはずないです……正直、もう戦闘は懲り懲りだと思いました。けど……」
「けど?」
「……実は、その命令が下される前日に、エヴァ……王女様と深い関係になってしまって……多分、それを知った王様が怒ってここに派遣したんだと思います」
「ヒュー」
王女様に懐かれただけじゃなくて手を出しちゃったのか。
やるねえ。
「口振りは怒ってなさそうでしたけど……目が笑ってなかったッスからね。あれ、絶対相討ちになってでも討ち取ってこいって顔でしたよ」
「まあ、この世界の王族ならそれくらいはしそうだよな。なんせ、腐ってるから」
俺がそう言うと、奈良君は神妙な顔になった。
「……やっぱ、そうですか?」
「そうだよ。奈良君はアドモスの王族としか関わりはないだろうけど、この世界の王族……というか貴族も含めた支配階級の人間は本当に腐ってる。自分が良ければ平民なんか死んだって構わないって考えの奴ばっかりだ」
そう言う俺の顔には相当な嫌悪感が浮かんでいたんだろう。
奈良君は、少し怯えたような顔で俺に話しかけてきた。
「摩耶さんがそこまで言うってことは……王族とかと相当揉めたんスか?」
「ん? ああ、まあ、そうだな」
さて、奈良君のことは大体聞けたし、今度は俺の話もしてやるか。
「じゃあ、今度は俺の話をしてやるよ。この話を聞いて、信じるかどうか、そんで、その上で俺の行動が許せるか許せないか、奈良君が判断しな」
「……はい」
こうして俺は、この世界に召喚されたからのことを話し始めた。
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