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ワイマール王家3

 ケンタが転移で帰ったあと、いつまでも土下座を止めないヴィクトリアに、ケンタの相手をしていた検問官が声を掛けた。


「で、殿下、マヤ殿はもうお帰りになりましたが……」

「……本当ですか?」

「はい。目の前で転移されていきました」


 検問官がそう言うと、ヴィクトリアはようやく顔を上げ、ホッと息を吐いた。


「マヤ殿がいよいよ王都を攻め込みにきたのかと思いましたが……違ったようでなによりです」

「は、はぁ……それにしても、マヤ殿はそこまで丁重に扱わなくてはいけない人なのですか? ヴィクトリア殿下が頭を下げられるのを見るのは、臣下として思うところがあります」


 検問官がヴィクトリアに苦言を呈すると、ヴィクトリアは悔しそうな顔をした。


「……相手が悪すぎます。マヤ殿は一人でこの国を壊滅させることができる人です。我々はそんな彼の不興を買っているのです。これ以上マヤ殿の機嫌を損ねてみなさい、我が国は跡形もなく消し飛びますよ」

「……」


 ヴィクトリアのケンタ評を聞いて、検問官はゴクリと唾を飲み込んだ。


「と、いうことは、殿下のあの行動は、我々を守るために……」

「ふ……みっともないと思うでしょうが、ああするしか方法はなかったのです。幻滅させましたね」

「そ、そんなことはありません!」


 検問官はそう叫ぶと、片膝を付いて頭を垂れた。


 周りにいた人々も、同じようにしている。


 その光景を見て、ヴィクトリアはホッと胸を撫で下ろした。


「皆さんに真意が伝わってなによりです。それでは、私は陛下にこのことを報告しにいきます。誰か! その狼藉者とアドモス兵の遺体を王城まで運んで頂戴! それと、殉職した我が国の兵士は教会に運んで丁重に弔いなさい!」

『はっ!』


 ヴィクトリアの号令で周囲の兵たちは機敏に動き出し、それを見届けたヴィクトリアは馬車に乗って王城へと帰還した。


 そして、国王と謁見したヴィクトリアは、アドモスへの宣戦布告を国王に進言した。


「せ、宣戦布告だと!? たかだか末端の兵士が殺されただけでか? いくらなんでもやり過ぎだろう。精々賠償金を請求するのが妥当なのではないのか?」

「……それだけではないのです」

「……まさか、マヤ殿絡みか?」


 国王の質問に、ヴィクトリアは無言で頷いた。


 その反応を見た国王は、顔に手を当てて天を仰いだ。


「アドモスの兵士は、警備兵を殺しただけでなく、マヤ殿の知人を人質に取り家に押し入ろうとしたそうです」

「!? ば、馬鹿なのか? アドモスは……」


 ケンタ相手にそんな手段を取るとは思いもしなかった国王は、心底アドモスの行動が理解できなかった。


「馬鹿なのでしょう。その行動に、マヤ殿は大層ご立腹でした。顔は笑っておいででしたが……私は、あんなに恐ろしい笑顔を見たことがありません」


 先ほどのケンタとの邂逅を思い出したヴィクトリアは、身体を小刻みに震わせていた。


「それほどか……」

「……私たちは、一度マヤ殿を裏切っています。そして、やはりマヤ殿はそのことを知っていました」

「……そうか」

「知っていて、見過ごされています。もし、また私たちが温い策を講じれば、今度こそマヤ殿が敵に回ります。そうなると……」

「……それがマヤ殿に伝わった日が、この国の終焉の日か……」

「間違いなく」


 そう断言するヴィクトリアを見た国王は、しばらく考え込んだあと、深い深い溜め息を吐いた。


「はあぁ……分かった。我々は、私利私欲のために我が国の兵を惨殺し、手を出してはいけない相手に手を出して我が国を危険に晒したアドモスに対し、宣戦布告する! そうアドモスに伝えよ!」

「生き残りのアドモス兵はどうしますか?」

「首にして他の兵共々送り届けろっ!!」

「かしこまりました」


 ヴィクトリアはそう言うと、部屋を出て行った。


 こうして、ワイマールは魔族との紛争から日を置かず、今度の人族の国である隣国アドモスに宣戦を布告した。


 これにより、人族の国は、増々混迷を深めていくことになった。


 そして同時期、ある噂が人族の国に流れ始めた。


 それは、ワイマールが最凶の召喚者ケンタ=マヤの手に落ちた、という噂だった。



カクヨムにて先行投稿しています

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― 新着の感想 ―
ぶっちゃけ国としてはマヤに直接滅ぼして貰った方が手っ取り早いのではなかろうか?それを後ろから支援する形をとるのが安全な気もする。
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