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無敵探偵活劇 アケチ大戦争  作者: anurito
玉村一族編
84/169

運命の双子

 こうして、玉村善太郎殺しの謎は解け、犯人の一郎も、この応接室から退場した訳なのだが、それでも、まだ、集会は続行する事になったのだった。

「アケチさん。そう言えば、一郎兄さんは、妙子も、オヤジの犠牲者だったような事を口にしていた。もしかして、それって、21年前の、妙子が生まれたばかりの時に起きたと言う事件の話なのかい?」と、ふと、二郎がアケチにと質問した。

「それについては、私の方から説明します」そう言って、口を挟んできたのはフミヨだった。

「フミヨさん。君も何かを知ってるのかい?」

「本当は、私が玉村家の娘で、妙子さんが魔術師の娘だったのです。二人は、生まれてすぐ、取り替えられていたんです」

「何だって!」フミヨのいきなりのカミングアウトに、当然ながら、二郎は大いに驚いたのだった。

「これは、ほんの少し前に、妙子さんから聞いた話です。間違いありません」と、フミヨ。

「ちょっと、君!妙子嬢は生きておったのかね?つまり、どこかで会ったんだね?」ナカムラ警部も、この初耳の話に、びっくりして、思わず、乗り出してきたのであった。

「皆さん、待ってください!その話も、すぐに受け入れてはいけません」と、急いで、皆の会話の腰を折ったのは、アケチ探偵だった。

「なぜです?確かに、私は、妙子さんの口から、その真実を聞いたのです」フミヨが言った。

「いいや。その情報も、とんでもないフェイクだったのです。騙されてはいけません」

「アケチくん。どうして、フェイクだと言い切れるのかね?」と、ナカムラ。

「だって、僕は、生前の善太郎さんから、もっと正確な話をお伺いしましたから」

 アケチのこの一言に、皆は、ハッとしてしまったのである。なるほど、当事者である善太郎から聞いた話ならば、それが一番、信頼できるのだ。

「でしたら、妙子さんが、わざと、私に嘘を吹き込んだのでしょうか?」と、妙子。

「いや。可能性としては、妙子さんも、魔術師にデタラメを信じ込まされていたのかもしれません。そうじゃなければ、彼女が、あそこまで豹変してしまうとも思えませんし」

「妙子さんは、どうかしていたのかね?」ナカムラが聞いた。

「妙子さんは、ジゴクの道化師と名乗って、賊の仲間入りをしていたのです」

 フミヨの衝撃的な発言に、皆は、再び、大きく、どよめいてしまったのだった。

「ああ、妙子。せっかく生きていたと思ったのに、なんて事になってしまったんだよ」二郎が嘆いた。

「まずは、21年前に何が起きたかを、正しく知っておく必要があります。善太郎さんの告白によりますと、21年前、生まれたばかりのフミヨさんは、まさに、魔術師の一味に誘拐されたのです。魔術師の目的は、二つ、ありました。一つは、誘拐した赤ちゃんを無事に返す代わりに、善太郎さんは、自身の口で過去の犯罪を自供する事、もう一つは、瑠璃子さんの娘であった綾子さんと、魔術師を会わせる事です。と言うのも、綾子さんは、魔術師こと奥村源造氏の娘だと考えられていたからです」

「そのへんの話は、魔術師自身も、まるで同じ事を喋っていたな」二郎が呟いた。

「二郎さんが知っているのは、ここまででしょう?実際は、この続きが大変な事になっていたのです。魔術師に、赤ちゃん誘拐をダシにして脅迫された善太郎さんは、その二つの要求を聞き入れませんでした。つまり、フミヨさん誘拐の事は全く無視して、放置してしまったのです」

「ほら!私が聞いた通りじゃありませんか!代わりに、魔術師の娘だった妙子さんが、私の替え玉として、玉村家に置いていかれたのです。彼女が、玉村家の令嬢として、育てられる事になったのです!」フミヨが叫んだ。

「いえ。その筋書きも、ほんとは事実ではありません。正解は、あなたと妙子さんは、そもそも、双子として生まれてきたのです。間違いなく、血の繋がった、玉村家の姉妹です。一卵性双生児というヤツですよ。つまり、どちらも魔術師の娘などでは無かったのです。遺伝子の構成まで同じ二人なんだから、そりゃあ、一方がもう一人の完璧な影武者にだって化けられたはずさ。二人とも、同様の珍しい三重渦状紋を持っていた理由も、然りだ」

 アケチの衝撃的な種明かしであった。この真相を聞かされて、この場にいた皆が、水を打ったように、静まり返ってしまったのである。

「当事者の善太郎さんから聞いた話ですから、これ以上、信頼できる話はありません。21年前の事件の正しい形は、『双子のうちの一人だけが誘拐された』と言うものだったのです。しかし、それが悲劇でもありました。魔術師から、誘拐した子供の件で脅迫を受けた善太郎さんは、つい魔が差してしまったのです。彼は、過去の罪の自白をしたくないものだから、思い切って、自分の新しい赤ちゃんは、最初っから一人だったと言うように、事実をねじ曲げてしまう事にしたのです。この出産に立ち会った関係者全員の口封じを行ない、はじめっから子供は一人しか産まれなかったと言う事で口裏を合わせて、フミヨさんの存在そのものを抹消してしまったのです。よって、魔術師の要求も飲まずに、蹴ってしまったのです」

「そ、そんな・・・」フミヨは、呆然としていた。

「フミヨさんにとっては、本当に、お気の毒な話でした。善太郎さんに無視されてしまい、怒り狂った魔術師に、その時点で殺されていても、おかしくなかったでしょう。でも、魔術師は、あなたを殺しませんでした。代わりに、あなたを、自分の娘として育てる事で、新たな復讐計画を練り始めたのです」

「もしかして、一郎兄さんは・・・」と、二郎。

「まだ幼かった二郎さんと比べて、当時の一郎さんは、もう小学生で、だいぶ分別がついていたでしょうからね。何となく、生まれたばかりの妙子さんを巡って、奇妙な事件が起きていた事にも気付いていたかも知れません。そのモヤモヤが、さらに、一郎さんの暗いトラウマの一つとなっていた可能性も否めないでしょう」

「ああ。つくづく、可哀想な兄さん。それで、ますます、オヤジへの不信感が強まっていったのか」

「妙子さんも、それとなく、両親の自分への愛し方が中途半端に感じられていたらしいですね。特に、母親の君代さんの態度が。でも、君代さんが妙子さんを存分に愛せなかったのは、フミヨさんへの申し訳なさからでした。見捨てられたフミヨさんが可哀想すぎて、妙子さんだけに十分に愛情を注ぐ事ができなかったのです。どうやら、妙子さんは、それを『自分は、玉村家の人間じゃないからだ』と勘違いしてしまったようなのですが」

「ねえ、アケチさん。ちょっと待ってください。善太郎さんの話の方が嘘だった事はあり得ないのですか?私は、やっぱり、どうも、すぐには信じられません」フミヨが口を挟んできた。

「いいや、フミヨさん。やはり、善太郎さんの話の方が真実なのです。あなたと妙子さんが双子だった件については、当時の関係者を探し出す事ができず、善太郎さんの証言しか得られませんでしたが、代わりに、僕は、もっと重要な証人の話を伺う事ができたのです」

「誰の証言ですか?」

「かつて、奥村源造氏の主治医を務めていたと言う医者の証言です。その人の診断によれば、源造氏は子供を作れない体だったのです。まあ、源造氏本人には、色々と事情があって、その事は内緒にしていたそうなのですがね」

 これぞ、決定的な証拠なのであった。

「と言う訳で、源造氏の愛人・瑠璃子さんが産んだ綾子さんも、実際には、源造氏の娘ではありませんでした。善太郎氏が、瑠璃子さんと浮気して出来た子が、綾子さんだったのです。だったら、善太郎さんが、綾子さんの身を、進んで引き取ったのも、当たり前の話だったのです。でも、源造氏の財産を根こそぎ奪いたかったものだから、書類上は、綾子さんは源造氏の子供として、扱っていたのです」

「そう言えば、魔術師は、自分の子供だと思ってたからこそ、綾子姉さんに会いたがってたんじゃ?」と、二郎。

「魔術師も、とことん、哀れな男です。実際には、綾子さんは、彼の娘でも何でもなかったんですからね。魔術師は、綾子さんが玉村家に無理やり引き取られて、ずっと冷遇されて生きていた、と考えていたようです」

「え!そんな事はないよ。綾子姉さんは、我が家で、十分に幸せに、楽しく、暮らしていた。花崎さんと結ばれたのだって、熱烈な恋愛結婚だったし」

「魔術師は、そのようには見ていなかったようですね。綾子さんが検事の花崎俊夫氏のもとに嫁いだのも、一種の政略結婚で、魔術師が安易に綾子さんに近づけないように、花崎氏をボディガード代わりにする為だと、魔術師は誤解していたみたいです。もっとも、確かに、魔術師は、綾子さんには、いっさい、手を出せなかった訳ですが」

「何だか、よく分からなくなってきたよ。これも、全ては、何もかも、自分の都合のいいように、現実を作り変えてしまったオヤジのせいなのか」二郎がぼやいた。

「私もです。私は、結局、何者だったのでしょうか。ずっと、自分は極悪人の魔術師の一人娘だと信じて、生きてきたのに。それを否定されて、これから、どうやって、生きていったらいいのでしょう?」フミヨも嘆いた。

「フミヨさん。あなたは、正真正銘、玉村家の娘だ。自信を持っていいのですよ。身体検査を行なっても、DNA鑑定をしても、全ての診断結果が、あなたと妙子さんが双生児である事を証明してくれる事でしょう。あなたは、これからは、生れ変わるべきなのです。悪夢のような過去は忘れて、新しく、第二の人生にと踏み出すべきです」アケチは、フミヨの目をまっすぐに見つめて、優しく、そう告げたのであった。

 そんな時、屋敷のお抱えの医師が、この応接室にと戻ってきたのである。

「残念ですが、一郎さんは手遅れでした。たった今、死亡を確認しました」と、医師は告げた。

「ええ!兄さんが!嘘だろ!いやだよ、兄さん!死なないでくれよ!」

 もっとも激しく動揺していたのは、二郎であった。たとえ、父殺しの犯人であっても、二郎にとって、一郎は、唯一の大切な兄だったのである。

 二郎は、顔を真っ赤にして、半泣きで、この部屋を飛び出した。どうやら、亡くなったばかりの一郎のもとへ向かったらしかった。

 被害者と犯人。一夜のうちに、いっぺんに二人もの人間が死んでしまった訳である。それも、どちらも、玉村家の家族のものが。賊の魔の手からは、アケチ探偵の必死の活躍により、無事に助かってきた命だったのだが、なんて皮肉な結末なのであろうか。

 応接室に残されたアケチたちは、あらためて、いたたまれない気持ちとなっていたのだった。

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