表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無敵探偵活劇 アケチ大戦争  作者: anurito
玉村一族編
82/169

意外な犯人

 アケチ探偵とコバヤシ助手が、やつれたフミヨを連れて、玉村邸へと戻ってきた時、その屋敷内は、すでに、戦場のように殺気立ち、慌ただしくなっていた。

 でも、アケチたちも、屋敷に帰って来る前に、善太郎が殺された事については知らせを受けていたので、そのような状況になっていようと、特にうろたえはしなかったのである。

 アケチたちは、まっすぐに、ナカムラ警部のもとへと向かって、彼と合流した。

「警部。大変な事になってしまったみたいですね」と、アケチはナカムラに声をかけた。今のアケチは、粗野なコゴローから、知的なアケチにと、すでに戻っているのである。

「そうなのだよ。君の留守中に、こんな事になってしまうなんて、本当にめんぼくない」ナカムラが答えた。

「まだ、犯人は捕まえていないそうですね。まずは、僕にも、現場を見せてもらえませんか」

「ついてきたまえ」

 フミヨだけは、いったん、警官へと預けて、アケチとコバヤシは、ナカムラに連れられて、善太郎の寝室へと直行したのである。

 殺人現場の鑑識は、すでに終わっていた。さすがに、善太郎の死体は置かれていなかったが、彼の寝室の中は、他の部分は、ほぼ、そのままの状態で保存されていたのだ。

 この変わった殺人の執行現場を、アケチは、とても興味深げに観察したのである。

「第一発見者は、わしだ。その時点で、窓は開いておった。恐らく、賊は、この窓から侵入して、再び窓から逃げ出したか、あるいは、入り口のドアから逃走したのだろう。入り口も鍵はかかっていなかったからね」ナカムラが、軽く説明した。

「犯人の目撃情報とかは無いのですか?」

「残念ながら無い。あいにく、フミヨ嬢の捜索の方に人員を割いた為、今夜は、屋敷内の警護はかなり散漫だった」

「すっかり油断してしまいましたね」

「屋敷の周辺の警備は変えていなかったので、絶対に賊には潜入されない自信はあったのだが。もしかして、賊は、事前に、屋敷の中に忍び込んでいたのだろうか」

「いえ、その可能性はないでしょう。僕も、ギリギリまで、この屋敷の警備には携わっていました。不審な人物や物などを邸内に入れないように、細心の注意を払って、僕もチェックしましたので、賊がすでに屋敷内にいたなんて事は、まず、あり得ないです」

「では、どんな方法を使って、賊は善太郎氏を殺したのだ?全く、連中ときたら、どこまでも魔法使いのような奴らだよ」ナカムラは、悔しそうに、訴えたのだった。

 その時、この場所へ、二郎もやって来た。彼もまた、身内の不幸が続いているものだから、すっかりゲッソリとしていて、苛立っている様子なのである。

「アケチさん!やっと帰って来たのかい。遅すぎるよ!」二郎は、アケチの顔を見るなり、そう怒鳴った。

「そのようですね。僕も、まさか、このような事になるとは、予測していませんでした。善太郎さんには、実に気の毒な事をしました」アケチは言った。

「それだけじゃ済まないよ!妙子の時と違って、今度こそ、オヤジは賊によって本当に殺されちゃったんだぞ!この不始末を、アケチさんは、どう責任を取るつもりだよ」

「まあまあ、二郎くん、落ち着いて。アケチくんも、フミヨさんを助けるのに忙しかったのだ。そのように責めるべきではないよ」ナカムラが、アケチを擁護してくれたのだった。

「関係ないよ!ここは、凶悪犯の娘なんかよりも、依頼者の家族を優先して守るべきだったんだ!」

「ちょっと、二人とも、待ってくださいよ」と、ここで、アケチが、慌てて、口を挟んだ。「確かに、善太郎さんは僕の力不足で死なせてしまいました。でも、賊に殺されたのではないのです。だから、僕も、事前に、この凶行を予知できなかったのです。それに、フミヨさんも、まんざら、玉村家とは無縁の人間ではないのです」

「何だって!何を言っておるのかね?」

 アケチの予想外の発言に、ナカムラも二郎も驚くのは、無理もないのであった。

「じゃあ、もしかして、善太郎氏の殺害は、賊の仕業ではなくて、屋敷の中にいた身内の犯行だと言うのかね?」と、ナカムラ。

「はい、その通りです」

「君には、犯人の目星もついているのか?」

「ええ」

 いやはや、恐るべきアケチの頭脳なのである。簡単に犯行現場を検分しただけで、彼には、もう、事件の犯人が分かってしまったらしいのだ。

「まだ、鑑識の結果も届いてないのだよ」ナカムラは言う。

「まあ、鑑識の報告を聞けば、より裏付けされる事でしょう。ただ、現時点でも、善太郎さん殺しの加害者ホシは明確ですし、先に種明かしをしたところで、さして問題はないでしょう」

「では、アケチくん、どうするのかね?」

「この屋敷の主だった人物を、応接室にと集めてください。そこで、説明を行ないたいと思います。一郎さんも、この集会には出てこられるでしょうか?」

「兄さんは、相変わらず、部屋に引き篭ったままで、親父の死んだ事を教えたら、ショックを受けたらしくて、ますます閉じ篭もっちゃった感じだけど、必要とあれば、無理やり連れ出す事もできるとは思うよ」二郎が言った。

「では、そうして下さい。あと、フミヨさんにも、この集会には参加してもらう事にします」

 こうして、アケチによる殺人事件の説明会が、急きょ、実施される事になったのだった。

 参加者は、アケチにコバヤシにナカムラ警部。それに、玉村家の身内として、一郎と二郎の二人。さらに、フミヨも加えられた。念のために、彼らの警護をする任務で、数人の警官も付き添う事になったのである。

 彼らは、手早く、応接室にと集まった。

 久々に、皆の前に姿を現わした一郎は、かなり衰弱していたようだった。だが、非常に重要な内容の集会ゆえに、彼にも立ち会ってもらわねば困るのである。

 そして、メンバーが揃うと、いよいよ、アケチの独断場が始まったのだ。

「では、これより、玉村善太郎氏の殺害事件についての解明を行ないます」アケチは宣言した。

 その場にいた誰もが、アケチの方を注目したのである。

「今回の凶行は、賊である暗黒星の攻撃が続く最中さなかに起きました。その事が、ますます、この事件の真相を分かりにくくしてしまったのです。確かに、善太郎氏殺害の残虐さや奇妙な殺しの演出を見ちゃいますと、暗黒星の仕業のようにも思えてしまうでしょう」

「そうは言うものの、アケチくん。善太郎氏が殺害された部屋の窓は、はっきりと開いていたのだよ。そこから犯人が忍び込んだと考えるのが、やはり、もっとも妥当だと思わないかね?」ナカムラが口を挟んだ。

「それこそ、犯人の偽装工作ですよ。常識的に考えれば、なるほど、犯人は窓から入ってきたと想像するものでしょう。しかし、それは、犯人が、身内以外の第三者だった場合に限ります。身内でしたら、部屋の入り口からだって、苦労せずに侵入できる訳です。その入っていく瞬間を目撃した人さえ、一人でも居てくれたら、この事件は、もっとラクに解決していたのですけどね」

「じゃあ、アケチくん。君は、あくまで犯人は身内だと言い張るのだね?しかし、善太郎氏を殺さねばならないような身内が、果たして、いるのだろうか。わしには、さっぱり、見当がつかないのだが」

「そこが、この事件の難しい部分でもあるのです」

「アケチさん、ちょっと待ってよ。そもそも、オヤジの部屋は、入り口も窓も、中から鍵がかかってたんだぜ。身内が犯人だったとしても、さすがに、これは開く事ができないだろう?」と、今度は、二郎が質問してきた。

「いえいえ。だからこそ、身内が一番怪しいんですよ。善太郎氏の部屋の中に入りたければ、まず中から開錠してもらわなくてはいけません。部屋の中の善太郎氏を油断させて、鍵を開けさせる事ができるのは、善太郎氏のごく親しい人間に限られます。また、善太郎氏が、まるで抵抗する事もなく、あっさりと喉を切られてしまったのも、相手の事を信用していて、何も警戒していなかったからなのです」

「ああ、なるほど。そう言えば、最近のオヤジは、ベッドに寝たきりとは言っても、多少の、室内を歩く程度だったら、回復していたもんな。自分で入り口のドアを開いて、まんまと犯人を部屋の中に入れてしまうような事もやりかねないか」二郎も、納得したのだった。

「アケチくん。推理の過程はよく分かったよ。それより、早く、君の考える犯人が誰なのかを教えてくれんかね?」ナカムラが急かした。

「いいでしょう。僕は、犯行現場や犯行時の様子などを知って、すぐに、ある事にピンときました。犯行時に鳴らされていたと言う笛の音や、喉を切り裂くと言う殺害手口、それに、死体の周囲を桜の花びらで飾ると言う演出。実は、これらは、全て、ある呪的儀式を執り行うのに必要な小道具だったのです。西洋の方の未開民族にと伝わっていた儀式です。この儀式を行なえば、対象となった死体は二度とよみがえらない、と言うものなのです」

「犯人は、なぜ、そんな儀式を?」

「そう。普通だったら、そのように思うでしょう?暗黒星の奴らだって、猟奇的な連中ばかりかもしれませんが、こんな宗教的儀式を大真面目に実践するような輩はいません。大体、彼らは、こんな外国のマイナーな儀式自体を、知りもしなかったはずでしょう」

「だけど、アケチさんは、この儀式を知っていたんだよね?どうして?」と、二郎。

「たまたま、捜査の資料として読んだ、ある専門的な民俗学の本に載っていたのです。ただし、このような特別な学術書は、よほど、この分野に興味のある方でないと、本来なら、手には取らないでしょう。すなわち、相当な、他民族の風習好きか、あるいは、呪術的な宗教儀式に関心を持つ人間だけです」

 ここで、アケチは、一郎の方に顔を向けたのだった。

「一郎さん。残念でしたね。あなたの読んでいた本は、偶然、僕も読んでいたのです。以前、あなたの部屋を見物させてもらった時、あなたもこの本を持っていた事を、しっかりと確認させていただきました」

 アケチにビシリと言われて、元より弱っていた感じだった一郎は、ますます、しおれてしまい、その場に、がくんと膝をついて、座り込んでしまったのであった。その顔は、すでに半泣きである。

「兄さんが犯人だなんて!まさか!」

「アケチくん!それって、本当なのかね?」

 と、アケチの推理には、誰もが半信半疑だった。

 だが、その時、一人の警官が、外から、この応接室に、飛び込むように入ってきたのである。

「アケチさん!指示された通りに、一郎氏の部屋の中を探してみたら、すぐに見つかりましたよ!凶器と思われるナイフと、犯行時に吹いたらしい横笛が!ナイフには、まだ血痕がついたままです。多分、善太郎氏の血で間違いないものと考えられます」その警官は、大声で告げたのであった。

 この報告を、アケチは、とても満足げに、頷きながら、聞いていたのである。

 一郎をこの集会に無理にでも出席させたのは、このように、彼のいない間に、彼の部屋に隠してある証拠品を見つけ出す為でもあったようなのだ。

 こうして、物的な証拠まで発見されてしまった以上は、もはや、一郎が善太郎殺しの犯人だった事は、ほぼ確実みたいなのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ