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無敵探偵活劇 アケチ大戦争  作者: anurito
玉村一族編
81/169

善太郎の死

 フミヨが拉致誘拐されたと言う事で、その晩、玉村家の事件に携わっていた警察のチームの大多数が、フミヨの捜索にと駆り出されていた。玉村邸の警護に当たっていた警官や刑事らも、もちろん例外ではなく、多くの人員がフミヨ捜索に回された結果、必然的に、玉村邸の警護は、かなり甘くなってしまったのだった。

 とは言っても、敵は、これまでにも、さんざん、陽動作戦を繰り返してきた暗黒星である。今回も、玉村邸の警護がユルくなった隙に、奇襲で攻めてこないとも限らないのだ。

 アケチ探偵も、ナカムラ警部へと、くれぐれも、玉村邸の外回りの警備レベルだけは下げないようにと、入念に注意して、それから、自身もフミヨ探しにと出かけていったのだった。

 さて、そうなると、否が応でも、玉村の屋敷の内側の警護の方が、人数も減らされて、ぐんと心細くなってしまったのであった。各所に常駐の見張りを立てておけるほどの頭数あたまかずもいない。屋敷内の巡回の回数も大幅に減らされて、司令塔であるナカムラ自身も、定期巡回に加わらなくてはいけなくなってしまったのである。

 そして、このような状況下で、その事件は起きたのだ。

 夜の遅い時間。ちょうど、ナカムラ警部が屋敷内の巡回を行なっている最中の話であった。起きているのは、彼ら警護の者だけであり、屋敷の住人や使用人たちは、おのおのの部屋で、眠りについていた。

 警備員の人数が減らされた分、あちこちの明かりだけは、目いっぱい、付けっぱなしになっていたのだ。ナカムラも、単独で巡回を行なっていたのだが、これなら、ちっとも不安はなかった。これほど明るい屋内ならば、仮に曲者が侵入していたとしても、コソコソと暗躍する事は、まず不可能だったに違いあるまい。

 ところが、廊下を歩いていた途中のナカムラは、ふと、物悲しい笛の音を耳にしたのだった。音は小さく、ナカムラがいた位置より、だいぶ遠くの方で奏でられていたようである。

 それにしても、なぜ、こんな真夜中に笛が吹かれていたのだろう?

 ナカムラは、耳を澄ました。そして、この僅かな音色を頼りに、音の発生場所を探ってみたのである。怪しい事は、とにかく、手を抜かずに、確認しておくべきなのだ。

 しばらく笛の音が続いた為、やがて、ナカムラは、その発生源を突き止める事に成功したのだった。

 その謎の笛の音は、当主の善太郎が寝ている居住区の方から聞こえていたのである。善太郎の身に、何か、あったのだろうか?ナカムラは、善太郎の寝室へと急いだ。ナカムラが、善太郎の部屋に近づいた頃には、すでに笛の音は聞こえなくなっていた。

 うかつにも、善太郎や一郎、二郎らの部屋の前にも、見張りは置いていなかったのである。ついに、ナカムラが、善太郎の部屋の前にまでやって来たが、善太郎の部屋の入り口のドアは、だらしなく開いていた。

 ナカムラは、焦って、顔をしかめた。なんて、マズい失敗しくじりであろうか。

 だが、あくまでドアが開いていただけで、中は何事もなかった可能性もあるのだ。そもそも、このドアは、厳重に鍵を掛けていたはずなので、誰もが安易に開けられないのである。内側から、善太郎が、何らかの事情で、ドアを開放していただけだったのかもしれない。

 ナカムラは、ドアの前へと走り急いだ。しかし、そこで、彼は悲鳴を挙げかけたのだった。

 と言うのも、ドアの隙間からは、いきなり、小豆色の蛇が顔を出したからである。小さな蛇だったが、その蛇は、スルスルと、部屋の中から廊下に飛び出して来て、ナカムラの足元にすり寄ってきたのだ。

 思わず、ナカムラは、腰に下げていた拳銃を引っこ抜いた。その銃口を蛇へと向けて、考えるより先に、発砲したのである。

 何発もの弾丸を受けて、蛇は頭部を粉々に打ち砕かれて、息絶えたのだった。

 よく見ると、この蛇は、いつだったか、妙子の部屋に現われた蛇みたいなのだ。あの時は、直後に妙子の蒸発という大事件が起きてしまったので、この蛇の捕獲についてはウヤムヤになってしまったのだが、その蛇が、今ごろになって、また出てきたようなのである。

 そして、同時に、ナカムラは、コゴローが魔術師の爆発事故現場で大量の蛇を目撃した、と言う話も思い出して、ひどく嫌な気分にもなったのだった。

 ナカムラが発砲した音を聞いて、別の場所にいた警備員たちも、慌てて、ここに駆けつけてきた。その中には、まだ傷心の方も癒えきらぬ二郎の姿も混ざっていた。

「警部。何があったのですか?」やって来た警官の一人が、ナカムラに尋ねた。

「見ろ!蛇だよ!善太郎さんの部屋から蛇が出てきたのだ」

 そう訴えながら、うろたえるナカムラは、射殺したばかりの蛇の死骸を指さしたのだった。

「で、善太郎さんは?」

「これから、確認するところだ。皆で一緒に部屋に入ってみよう」

 ナカムラに促されて、集まったメンバーは、そうする事にしたのだった。

 善太郎の部屋には、明かりが付いておらず、真っ暗な有様であった。誰かが電灯のスイッチを付けた。瞬時に、部屋の中は明るくなったのだ。

 善太郎は、奥にあるベッドの上に眠っていた。だが、どこか様子がおかしいのである。

 近くにある窓は、がらんと開きっぱなしになっていた。外からは、冷たいそよ風が吹き込んでいる。

 それから、どう言う訳か、善太郎のベッドの周りには、大量の桜の花びらが散らばっていた。まるで、棺桶の死者に供えた別れ花みたいなのだ。

 明らかに、この部屋の内部の様子は異常なのである。

 ナカムラたちは、急いで、善太郎のそばに走り寄った。そこで、彼らは、がく然としたのだった。

 善太郎は、すでに、ベッドの上に寝た状態で、こと切れていたのだ。その喉笛は、バッサリと横に切り裂かれていた。傷口からは、まだ、ドクドクと鮮血が溢れ続けている。切られて間もないのである。

 もちろん、ナカムラたちは、急いで、屋敷内にいたお抱えの医者を、この部屋にと呼び寄せた。しかし、救命はとても間に合いそうになかったのであった。

 これが、財界の怪物と呼ばれた大資産家・玉村善太郎の最期の光景だったのだ。

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