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無敵探偵活劇 アケチ大戦争  作者: anurito
玉村一族編
76/169

透明怪人

 恐るべき強敵の出現に、言うまでもなく、アケチもコバヤシも完全に戸惑っていた。

「先生。あいつは、どうやって、透明になってしまったのでしょう?まさか、本当に体が無色になってしまった訳じゃありませんよね?」コバヤシが口にした。

「考えられる可能性としては、あの変身スーツに、保護色の機能がついているのか、あるいは、光の流れを屈折させるステルス効果があったのか、多分、そんな感じの仕組みだろう。でも、今は、そんな原理の話は、どうでもいい。いかにして、あの透明人間を攻略するかだ!」アケチは怒鳴った。

 ニジュウ面相が変身した不気味な透明人間は、喋らなければ、どこに居るかすら、判別できないのである。もしかすると、もう目の前にまで近付いていて、いきなり飛びかかってくる事だって、考えられなくはないのだ。

「先生。ここは、ひとまず、逃げましょうか?」

「バカ言え!わざわざ挑戦してきた敵に、背中など見せられるものか。きっぱりと返り討ちにしてやるさ。分かってるね、コバヤシくん?」

「じゃあ、コゴローさんになって?」

「そうだ。コバヤシくん、君は、この解剖室の出入り口の前に陣取っていて、奴を逃さないようにしてくれ」

「分かりました」

 見えない相手を前に、アケチとコバヤシは、迅速に行動に移ったのだ。あくまで応戦するつもりなのである。

「ふふふ。コゴローになったって、無駄です。透明人間に勝てると思っているのですか?」ニジュウ面相のあざ笑う声だけが、解剖室の中に響き渡った。

 この解剖室は、手術に邪魔な影を作らない為に、四方にライトが設置されていて、部屋全体を平等に照らす事で、中にあるものの影を全て消してしまっていた。その点でも、この部屋は、透明人間にとっては有利だったのだ。

「逃げ口は塞ぎました!」部屋の出入り口にと到着したコバヤシが叫んだ。

「よおし!では、コバヤシくん、頼んだ!」と、アケチ。

「目覚めよ、コゴロー!」コバヤシは、大声で怒鳴った。

 そして、次の瞬間、アケチ探偵も豹変したのだった。彼も、戦闘に向いたタイプのコゴローにと変身したのである。やはり、透明人間を倒したいのなら、その原理を理解しているよりも、腕力で戦う方がいいのだ。

 何よりも、コゴローは、抜群の運動神経を持っていた。透明人間のニジュウ面相が喋れば、その声を手掛かりに居場所も判断できたし、あるいは、見えないニジュウ面相が接近してきても、わずかに動く空気の流れから、相手の位置を察知する事もできただろう。そう、まだまだ、コゴローの勝算は高かったのである。

 ところが、ニジュウ面相の方も、それらは想定内だったようなのだ。

「案の定、コゴローになりましたね。これで、私も、少しは楽しむ事ができそうです」

 ニジュウ面相の嬉しそうな声が聞こえてきた。だが、その声は、どこか天井の方から聞こえてくるのである。どうやら、部屋に設置されていたスピーカーから出てきた声らしい。なんたる事か、ニジュウ面相は、声から居場所を見破られる事を予想して、自分の声を小型マイクに通して、部屋のスピーカーから流し、その発声場所を分からなくしてしまったようなのである。

 しかも、それだけではなかった。解剖室の中は、急にいっせいに、あらゆる換気装置が動き始めた。レベルも強に設定されているらしく、部屋のなか全体の空気が、激しくウネっているのだ。本来なら、解剖室内に死体の腐臭や毒素をこもらせない為のシステムなのである。

「しまった。これじゃ、空気の動きで相手の気配が読めなくなってしまった」コバヤシが、悔しそうに、呟いた。

 そうなのだ。用意周到なニジュウ面相は、このようにして、コゴローが透明人間を察知する手段を、どれも封じてしまったのである。

「さあて。それでは、拳闘バトルを始めましょうか」天井のスピーカーからは、ニジュウ面相の楽しそうな声が響き渡ったのだった。

 自分が圧倒的に不利になってしまったとも知らずに、お気楽なコゴローは、慌てる様子もなく、見えぬ敵を相手に、ただファイティングポーズを取り続けていた。

 すると、いきなり、コゴローの頭は、背後からポカリと叩かれたのである。殴った鈍い音だけが、辺りにこだました。びっくりしたコゴローは、素早く、後ろを振り返った。

「あ、このう!やりやがったな!」

 彼は、すかさず、両手を振り回して、殴り返そうとした。しかし、相手の姿が見えていない以上、完全に当てずっぽうなのである。そんな攻撃が、当然ながら、巧みに動き回っていたニジュウ面相に命中するはずもないのだ。

 コゴローが、無駄に、何もない空間を攻めまくっている最中に、またしても、彼は、敵からの攻撃を脇腹に受けたのだった。けっこう痛かったのか、コゴローは、うめいて、前のめりになった。

「この野郎!また、やったな!逃がさねえぞ!」

 コゴローは、真っ赤な顔で、本気で怒りながら、手探りで、透明になったニジュウ面相の居場所を探し回っているのだ。でも、冷静さを失えば、ますます、相手の動向など読めなくなるのであり、すっかり、ニジュウ面相の術中にはまってしまったみたいなのであった。

 透明のニジュウ面相が、上手にスキをついて、コゴローをぶん殴る。怒ったコゴローは、攻撃された側へと体を向けて、すぐさま反撃するが、すでに、その場にニジュウ面相はいないのだ。コゴローの攻撃が、むなしく空を切ると、その間に、再び、ニジュウ面相が次の攻撃を仕掛けてくる。またまた、その攻撃は一方的に当たって、コゴローがムキになって、怒り出す。そのような攻防戦が、繰り返し、続いたのだった。

 コバヤシも、その様子を、なかば呆れながら、傍観していたのである。いやはや、コゴローになったアケチは、ここまで芸のない戦い方しか出来ないのだろうか。

 とは言え、コゴローの耐久力の方も、なかなかのものだったのである。こんなに受け身状態でやられまくっていたにも関わらず、コゴローは、いっこうに弱らなかった。馬鹿力なだけではなく、打たれ強さでも、コゴローは常人をはるかに超えていたのだ。たかがニジュウ面相ごときの素手のパンチや蹴りを連続で受けたところで、ちっともダメージにはなっていなかったのである。

 そして、その事が、まさかのコゴロー側の好機を生み出したようなのだった。

 まるでビクともしないコゴローを相手に、とうとう、攻め立てた側のニジュウ面相の方が、疲れてきてしまったらしかった。その姿は見えなかったものの、彼の動きは、明らかに鈍っていたのである。

 ついに、その時がやって来た。

 そう。ヒットアンドアウェイ戦術で、これまでは一方的にコゴローばかりを殴っていたニジュウ面相であったが、その動作に僅かな遅れが出て、勘で反撃してきたコゴローのパンチが、ついカスってしまったのだ。

「あ」と、ニジュウ面相は、つい声を漏らしてしまった。他方のコゴローも、かすかに当たったパンチの感触を、決して見逃しはしなかったのである。

「そこかあ!」と怒鳴ったコゴローは、いきなり、突進した。

 全身を使った体当たりである。拳だけを振り回すよりは、はるかに相手に当たる面積は広いのだ。

 かくて、タックルしたコゴローの体は、再度、見えないニジュウ面相の肉体にと、見事にぶつかったのだった。今度は、けっこう強く衝突したらしかった。コゴローも、バッチリと手応えを感じたのだ。

「こ、このう!」と、透明のニジュウ面相は、急いで、態勢を立て直そうとしたが、コゴローの行動の方が、はるかに早かった。

 コゴローは、ニジュウ面相の位置さえ分かってしまえば、もはや、こっちのもんとばかりに、相手が移動しないうちに、次から次へと、その場所にばかり突進タックル攻撃を仕掛けていったのである。

 完全にペースを乱されてしまったニジュウ面相の方は、なかなか、逃げ出す事も、立ち上がって構える事すらも出来なかったらしくて、立て続けに、コゴローの体当たりを受けてしまったようなのだった。コゴローがタックルするたびに、体と体がぶつかる激しい音が、周囲へと響いたのだ。それが、何度も繰り返された。

「ちょっと、待った!降参、降参!こら、いい加減にヤメなさい!」ニジュウ面相の疲れ果てた声だけが、何もない空間から聞こえてきた。

 そして、その場所には、ジワジワとニジュウ面相の姿が浮かび上がってきたのだった。あの黒い全身スーツの格好のままである。彼は、すっかりヤル気が失せていたようで、床の上に、だらしなく座り込んでいた。

「全く、なんて、透明人間の攻略の仕方なのですか!何のひねりも無く、力押しだけで、見えない相手を圧倒しちゃうだなんて、コゴローくんの脳筋ぶりには、ほとほと、呆れちゃいましたよ」ニジュウ面相は、ゲンナリしながら、そう告げたのだった。

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