表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無敵探偵活劇 アケチ大戦争  作者: anurito
玉村一族編
64/169

海岸での再会

 トーキョーのスミダ川の川口であるツキシマ海岸の船着き場に、その怪しい小型のフェリー船は、ひっそりと停泊していた。

 実は、この船こそは、アケチ探偵を監禁していた魔術師のアジトの船だったのだ。しかし、そんな事は誰にも気付かれていなかった。と言うのも、魔術師は、この船を、牛原耕造の偽名で、きちんと船舶登録をしていたからだ。よって、この岸壁に堂々と停めていようと、何ら問題はなかったのである。たとえ、その裏の使用目的が犯罪がらみのものばかりだったとしても。

 暗黒星による玉村邸襲撃事件が起きてから、2日後の話であった。真昼間である。空はよく晴れており、海もさほど波立ってはいないのだ。

 岸壁には、このフェリー船以外は繋がれてはおらず、人の姿もまるで見掛けなかった。実にのどかな情景のようにも感じられたのである。

 やがて、この岸壁に、ボチボチと、人が集まりだした。地上の三方から、一人ずつ、時間もずらして、少しずつ、人々が集結しだしたのである。

 その人のタイプも、様々だった。男もいれば、女も混ざっている。屈強そうな男もいれば、凡庸なムードの男だって一人や二人ではなかった。

 さて、この連中こそは、実を言うと、魔術師ひきいる強盗組織の「魔術団」だったのだ。このように、普通の格好をしてしまえば、彼らが凶悪な犯罪者集団だなんて、つゆほども分かりはしなかったのである。

 同時に、彼らは、魔術師が仮の姿として経営しているサーカス団のメンバーでもあった。だから、よく観察してみると、数日前の偽の「グランド=サーカス」の殺人魔術ショーにと出演していたピエロの大男や美女にと扮装していたらしき人物の姿も、確認する事ができたのである。

 こうやって、岸壁のフェリー船の前にまで集合した人間は、大体10人あまりとなった。

 最後に到着したのは、大きなコートを羽織って、頭もどでかい山高帽の下に隠してしまった、アヤシイ人物である。そう、この最後の人物こそが、連中の大ボスである魔術師だったのだ。

「親分。ほぼ全員が時間どおりに集まりました」と、先に来ていた男の一人が、コートの怪人物、すなわち、魔術師へと報告した。

「諸君、ご苦労であった。で、まだ到着していないメンバーは?」魔術師が、威厳を込めて、尋ねた。

「それが、フミヨお嬢さんが、姿を見せておりません」

「また、あの子か!やれやれ。本当にしょうがない奴だな」魔術師は、呆れたように言い放った。「ところで、最新の新聞の記事は、誰か、確認してくれたかね?」

「はい。各社の新聞やニュースをチェックしましたが、玉村邸に関する続報は入ってないみたいです。玉村親子は、依然、行方不明のままなのかと思われます」

「そうか。なるほど、なるほど。無能な警察め。まだ、善太郎の居場所を見つけられないでいるのか。さすがに、2日も経った事だし、はっきりと死亡のニュースが流れなくても、善太郎どもは確実にくたばっているかな。よし、我らも、これにて、日本から出航する事にしよう。諸君、すぐにでも出発するぞ」

「え?でも、フミヨお嬢さんは?」

「あんな奴、放っておけばいいのだ」

 フミヨを置き去りにする指示には、部下たちも、さすがに戸惑っていたようだが、しかし、この組織においては、ボスの魔術師の意見が常に絶対なのである。

 統率の取れた彼ら魔術団は、群がって、フェリー船の手前にまで向かったのだった。

「おい、三次!皆が乗船するぞ!外に出てきて、船に乗る為の準備を始めろ!」子分の一人が、フェリー船の方へ向かって、大声で呼びかけた。

 どうやら、この船には、三次と言う名の留守番が残っていたらしい。しかし、呼び出しても、その留守番の男は、なかなか、船の甲板にと姿を現わさなかったのだった。

「こら、三次!何をやっている?親分がお待ちかねだぞ!」イラつきながら、子分が、再度、船の方へと怒鳴った。

 すると、船の方からは、快活な笑い声が聞こえて来た。若い男の哄笑なのである。

 そして、船室から、ドアを開いて、ようやく、一人の男が甲板へと出て来たのだが、その人物は、どうやら、三次ではなかったのだった。

「あ!おぬしは!」と、魔術師が驚いた。

 同時に、他の魔術団のメンバーたちも激しく動揺していた。

 そうなのだ。彼らの船の上に颯爽と登場した人物は、彼らもよくご存知の宿敵・アケチ探偵だったのだ。いや、その顔つきや態度を見たところ、アケチの第二体質の方のコゴローらしいのである。

「残念だったな、魔術師!お前の子分の三次は、とうに捕らえておいた。今、この船に乗っているのは、俺だけだ」と、コゴローは、威勢よく、魔術師たちに話し掛けた。「おい、魔術師。お前、もともと、海賊の子分をしていたそうだな。それで、船をアジトとして使っていたのか。でもな、いくら自分の目的が達成できたからと言って、暗黒星の仲間は見捨てて、自分たちだけが国外逃亡しようだなんて、ちょっと卑怯すぎやしないかい?」

「アケチめ。おぬし、生きていたのか?しかも、なぜ、おぬしが、ここに?」と、魔術師はうろたえた。

「そうそう。太平洋では、お世話になったっけな。でも、俺は、立派に、泳ぎ抜いて、日本に戻って来てやったぜ。どうだい、これこそ、最高の脱出マジックショーだと思わないか?」

「だが、太平洋のど真ん中だったんだぞ。どうして、迷わずに、日本を目指す事ができた?」

「そのカラクリは、これさ!」

 そう叫んで、コゴローは小さな円盤状の金属を取り出し、魔術師たちに見せたのだった。それは、ごくごく普通の方位磁石であった。

「俺が海に飛び込む瞬間、フミヨさんは、この磁石を俺に渡してくれたのさ。俺が飛び込んだ場所が太平洋だと分かっていた以上、日本は西側にあったと言う事になる。だったら、あとは、この磁石で確認しながら、ひたすら西へ西へと泳ぐだけで良かったのさ」

「だとしても、あれだけの長距離を人力だけで泳ぎ通すとは・・・」

「まあ、それがコゴローのパワーって訳さ」コゴローも自慢げなのである。

 魔術師らも、いささか、呆然とした感じなのだ。

「ああ。それから、玉村家の家族も死んではいないからね。お前の罠で危うくなっていたところを、俺たちが直前で救い出してやった。全員無事で、誰一人、死んではいない」

「な、何だと!そんな話は、どこにも報道されていないぞ!」魔術師が、焦りながら、怒鳴った。

「お前らを油断させる為に、わざと、おおやけでは秘密にしておいたのさ。おかげで、お前らはまんまと引っ掛かって、この逃走の待ち合わせ場所にと集まってくれた。俺の方では、最初っから、ここで、お前ら全員をしょっ引いてやる作戦だったのさ」

 もはや、魔術師らは、ぐうの音も出ない様子なのであった。

「そう言う事だ、魔術師さんよ。これで、お前さんの仕組んだ世紀の犯罪ショーは、全て、失敗に終わってしまったのさ。最高峰のマジシャンどころか、とんだ道化師ピエロに成り果てちまったようだな。お前と対面するのは、これで二度めだが、三度めはない。お前は、ここで捕まって、そのまま刑務所に入るんだ」

「黙れ!まだ、私の負けだと決まった訳ではない!」

「いいや。お前には、もう勝ち目はないのさ。あと10分も経てば、いっきょに警察の援軍が動き出して、この海岸を四方八方から取り囲む手はずになっている。お前らに、この海岸からの逃げ道はないんだ。かと言って、この船で逃げ出そうとしても、水上警察にも手配してある。トーキョー湾のあちこちに、警察の船が巡回しているから、絶対に逃げ通せはしないよ」

「ちくしょう!」とうとう、魔術師が、憤怒した声で唸った。「ならば、最後の悪あがきだ!アケチよ、捕まる前に、おぬしだけは、この場で仕留めてやる!それが、せめてもの、私のプライドだ!」

「へっへ。そうこなくっちゃな!俺だって、お前に一方的にやられっぱなしで終わりにはしたくない。俺自身の手でお前を捕まえたかったからこそ、わざわざ、こんな舞台をお膳立てしてやったのさ!」

 コゴローも、楽しそうに、笑っているのであった。

 彼は、武器にするつもりなのか、バッと、金属製の長い棒を手に持った。それから、驚異の跳躍力で、船の甲板から岸壁めがけて、ぴょんと走り跳び超えてみせると、魔術師の目前へと鮮やかに下り立ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ