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無敵探偵活劇 アケチ大戦争  作者: anurito
玉村一族編
56/169

大消滅マジック

 一夜のうちに、立て続けにトーキョー都内で起こった二つの猟奇事件については、すぐさま、警視庁の方へと通報される事になった。すると、担当の刑事や鑑識らが、至急、事件現場へと派遣されたのである。

 やはり、専門だけに、彼らの仕事は早かった。たちまち、これらの事件に関する、もっと詳しい事実が判明していったのである。

 まず、ギンザの百貨店デパートで見つかった人間の左腕であるが、どうやら、女性の手だったらしい事が、鑑識の分析により判明した。おかしな事に、この左腕には、人さし指がついていなかったのだった。指の付け根のあたりから、人さし指だけがゴッソリ欠けていたのだ。

 そして、スミダ川で拾われた指の方も、調べた結果では、人さし指みたいだと判断されたのだった。

 二つの事件の調査は、もともとは別々に進められていたのだが、間もなく、この二つは関連づけられて、捜査されるようになった。説明するまでもなく、スミダ川の指は、デパートの左腕とくっつくのではないかと、誰もが考えたからである。

 少なくとも、ちょっと目にした限りでは、二つの肉片の断面部分はピッタリ繋がるようにも思われた。だが、それを断言しきるには、より正式な司法解剖の結果を待つしかないのである。

 そして、人さし指に関して言えば、司法解剖に頼る必要もなく、鑑識の段階で、すぐに解明した事があったのだった。

 指紋である。この千切れた人さし指は、保存状態も良く、バッチリと指紋を確認する事ができたのだ。

 しかし、この指紋が、新たな波乱を巻き起こす事になったのである。あまりにも、特殊な指紋だったからだ。

 三重渦状紋。

 この名称を、皆さんも、以前に聞いた事があったはずだ。そう、玉村家の妙子が持っていた、非常に変わった種類の指紋のことだ。この切断された人さし指には、まさに、この特徴的な指紋が備わっていたのである。

 分析した鑑識員も、この指紋を見つけて、さぞギョッとした事であろう。それも、指しかない状態で、指先の部分が三重渦状紋になっていた訳なのだから、その形状は、ますます悪魔の顔のように見えたに違いあるまい。

 とても幸いだった事に、分析を任された鑑識の中には、玉村家の事件についても担当していた者がいた。彼は、この怪しい三重渦状紋の指紋が、妙子と関連している可能性に、すぐピンときたのだ。

 ご存知のように、妙子の持っていた三重渦状紋は、ちょうど良く、警察の方にも採取されていた。この人さし指の事件の担当者は、すぐさま、この妙子の三重渦状紋のデータを取り寄せたのである。

 照合した結果、すぐに結論は出た。やはり、この二つの三重渦状紋は完全に一致したのだ。すなわち、この人さし指の持ち主は、妙子だったと確定されたのである。そもそもが、こんな珍しい三重渦状紋を持っている人間が、他にも何人も居るはずがないのだ。

 これは、玉村家の人々にとっては、あまりにも辛い凶報だった。でも、だからって、身内の人々に秘密にし続けている訳にもいかないのである。

 この事実は、翌日の朝がた、ナカムラ警部を通して、玉村家にも伝えられる事になったのだった。

 まだ何も知らなかった玉村の家族のもの、善太郎、一郎、二郎の三人が、善太郎の書斎へと呼び出された。あと、その場に同席したのは、ナカムラ警部とコバヤシ青年の二人だけである。まず間違いのない情報だとは言っても、まだ、急いで、必要以上の人間にまで知らせておく事はないのだ。

 とは言え、妙子が行方不明になって、ほんの半日しか経っていなかった訳だし、皆も、まだまだ、妙子の無事をかたく信じていた状況だったので、そこで、いきなりの、この不幸な知らせは、確かに、家族にとっては強烈にこたえた出来事だったであろう。

 ナカムラ警部も、なるべく穏やかな口調で、できるだけ明言を避けた言い回しで、善太郎らには報告したつもりだったのだが、それでも、彼らは、当然のように、激しいショックを受けた反応を示したのであった。

 一番繊細だった一郎は、話を理解した途端、すっかり青ざめて、放心した状態で、立ちすくんでしまった。反対に、感情的な善太郎と二郎は、報告内容を拒絶したい気持ちからなのか、顔を真っ赤にして、ものすごく攻撃的になってしまったのだった。

「警察は何をやっておるんだ!この能無しめ!こんな事になる前に、娘を助け出す事はできなかったのか!」善太郎は怒鳴った。

「そうだ、そうだ!ああ、かわいそうな妹!こんな奴らを頼ったばかりに、妙子は死んでしまったんだ」二郎も、むせび泣きながら、そう訴えた。

「待ってください。まだ妙子さんが殺されてしまったと決まった訳ではありません」コバヤシが、慌てて、彼らを慰めたのだった。

「その通りだ。まあ、少し、落ち着いて!」ナカムラ警部も言う。

「でも、その切られた左手は妙子のもので間違いないんだろ?」と、善太郎。

「片腕を切断されたからと言って、必ずしも死んでしまったとは限りません。やがて、この腕の司法解剖の結果が届いたら、この腕は生きている状態で切られたのか、あるいは、死体から切り取られたものなのかが分かるでしょう」

「ふざけるな!生きていたとしても、妙子は片手を丸ごと無くしてしまった事になるんだぞ。たとえ助かっていようと、この先、不便な体で一生を過ごさねばならんのだ。親として、娘のそんな不幸が、どれだけ辛いものなのか、お前たちに分かってたまるものか!」

 怒涛のごとく、わめき立てる善太郎と二郎を前にして、ナカムラ警部もコバヤシも、すっかり、返す言葉を無くしてしまったのだった。

「ああ、そうだ!待てよ!もしかしたら、妹は、俺たちが見物した、あのサーカスの舞台の解体ショーで殺されたのかも知れない。あの時、うっすらと嫌な感じはしたんだ」と、二郎が言い出した。

「おお!二郎よ、やはり、お前もそう思ったか?わしも、何となく、そんな気はしたんだ。間違いない。あのサーカスは、賊の傀儡だったんじゃ。悪趣味な事に、妙子のことを、わしらが見ている前で、堂々と殺しおったんだ!」

「畜生!何てこったい!ナカムラさん、コバヤシくん!あんた達だって、あのショーの現場には、一緒にいたんだよ!どうして、事前に気が付いて、この凶行を阻止してくれなかったんだよ!」

「これこれ、ちょっと待ってくれないか。落ち着きなさい。あの奇術ショーが、本当に殺人現場だったと言う証拠は、どこにも無いじゃろう?そもそも、解体マジックでバラバラにされた女は、最後に元どおりになって、元気に姿を現わしたじゃないか。とても、あれが殺人現場だとは疑えそうにはなかったし、誰であろうと途中で邪魔に入る事は出来なかったよ」

「うるさい!そこを何とかするのが、警察や探偵の役目だろ!被害者一人、満足に助ける事ができないのか!全く、この役立たずどもめ!」

 善太郎と二郎の罵倒は、いっこうに収まりそうにないのだった。

「お二人とも、もう、いい加減にしてください!」と、その時、コバヤシが、急に大声で怒鳴ったのであった。

 その声に驚いて、善太郎たちは、一瞬、おとなしくなった。

「あのね。行方不明なのは、妙子さんだけじゃないんです。ぼくの大切な師匠であるアケチ先生だって、もう、5日以上、音信不通なんです。こんな事は、今まで、一度もありませんでした。先生は、どんな危機だって、コゴローの力で切り抜けられたのですから。それなのに、今回だけは、本当に、いっさいの連絡もなく、プツンと消息が途絶えちゃったんです。不死身と思われた先生も、今度こそは、悪人たちの手にかかって、完全に抹殺されてしまったのかもしれません。それを想像すると、ぼくだって、怖くて怖くて、仕方がないんです。でもね、ぼくは、それでも、最後まで先生のことを信じたいと思っています。必ず、生きて戻ってきてくれるって。せめて、身内だけでも、希望を持って、待っていてあげないと、先生が可哀想じゃありませんか。だからさ、善太郎さんも二郎くんも、きっと、妙子さんはまだ大丈夫だって、信じてあげましょうよ」

 コバヤシが、目を潤ませて、そんな事をしみじみと語ったものだから、善太郎たちも、ようやく、戸惑った表情を浮かべながら、おとなしくなったのだった。


 玉村の家族には、このように説明したものの、実際には、疑わしき点は何でも調査してみるのが、警察の捜査と言うものなのである。

 あのサーカスの美女解体ショーのことが気になっていたのは、ほんとは、ナカムラ警部も同じだったのであり、彼は、念のために、グランド=サーカスにも問い合わせてみる事にしたのだった。

 すると、いきなり、とんでもない事実が発覚してしまったのであった。

 なんと、グランド=サーカスでは、現在、オオモリ区での興行は行なっていない、と言うのである。

 これはまた、一体、どうした事なのであろうか。ナカムラたちは、間違いなく、20日の夜に、オオモリ区で開催されていたサーカスを見物してきたのである。証人も沢山いるのだから、決して勘違いなどではないのだ。

 じゃあ、果たして、あのサーカスは何だったのであろう?グランド=サーカスの名を語った偽サーカスだったと言う事なのか?だとすれば、あのサーカスの本当の主催者とは?

 もはや、嫌な予感しかしなかった。

 慌てたナカムラ警部は、警官隊を率いて、急いで、あのオオモリ区のサーカス会場へと向かってみたのである。それは21日の真昼のことであった。こんな日中ならば、絶対に見間違えたりはしないはずなのだ。

 相手は、正体を詐称していた上に、無許可営業のサーカス集団である。そんな奴らを取り締まるに当たっては、わざわざ、捜査令状を用意する必要もないのだ。ナカムラも、張り切って、乗り込んでいったのだった。

 昨夜は、まだ賑やかに運営されていたサーカス会場だ。それから僅か半日しか経っていないので、今すぐ突撃すれば、この謎のサーカスの団員どもは、逃げる間もなく、一網打尽で引っ立てられるのではないかと思われた。

 ところが、ここで、またしても奇怪な事態が起こったのだった。

 ナカムラたちが、サーカス会場のあった場所に到着すると、そこは、ガランとした空き地にと変わっていたのである。そう、たった一夜で、あのサーカスの巨大なテントは消えて、無くなってしまったのだった。

 ナカムラや警官たちは、呆気にとられて、広い空き地の前で立ちすくんでしまった。全く、悪魔にでもたぶらかされたような気分なのだ。

 昨日の晩、本当に、ここにサーカス会場はあったのだろうか。もしかしたら、あれは全て幻だったのでは?いわゆる集団幻覚と言うヤツだったのか。

 しかし、結論を出すのは、まだ早かった。ナカムラ警部たちは、ひとまず、ほんとに何の形跡や手がかりも残っていないか、この空き地を調査する事にしたのである。

 空き地の中をグイグイ奥へと進んでいくと、その空き地の中央の付近で、丈の高い雑草に混じって、二本の棒状のものが立っているのが見えてきた。白くて、1メートルほどの長さの、丸太のような物体なのだ。

 ぐんぐん近づいていく事で、その物体の正体は、すぐに判明したのだった。

 ナカムラ警部たちは、ギョッとした。

 足なのである。そこに突っ立っていたのは、人間の両足だったのだ。つま先の方を上に向けて、そこには、ニョキッと左右の足だけが存在していたのである。それは、まるで、風変わりな形の植物が、雑草の中に混じって、まっすぐ生えていたかのようにも見えたのだった。

 この格好から推察すると、胴体部分は、地中に埋まっているのであろう。誰かが地面にと埋められていて、足だけが地表に飛び出していたようなのだ。

 全く、ヒドい事をするものなのである。この様子だと、この足の持ち主は、すでに死んでいるであろう。そして、この人物こそが、妙子なのかも知れないのだ。

 さらに接近して、分かった事なのだが、この二つの足は裸で、その表面には、覆い尽くすように、無数の「2」の数字が書き込まれていたのだった。まさしく、これは暗黒星の犯罪声明のカウントダウンなのである。やはり、全ては、暗黒星が仕組んだ、大掛かりなパフォーマンスだったのだ。

 鑑識が入る前ではあったが、万が一の話ながら、この足の本体が、まだ息をしている可能性もある。そこで、警官の一人が、ひとまず、この埋められた人物だけでも、地上にと出してみる事にしたのだった。彼は、それぞれの足首を持つと、力を込めて、引っ張ってみたのである。

 だが、ここでまた、ビックリする事が起きたのだった。

 両足を引っ張った警官は、呆気なくバランスを崩して、ひっくり返ってしまったのである。

 それもそのはずだ。彼の手は、足しか引っこ抜けなかったのだから。と言っても、足だけが、体からもげてしまったと言う事なのでもない。最初から、そこには、足しか無かったのである。二つの足だけが、切断面を下にして、地面にと刺さっていただけだったのだ!

 この実に残酷な死骸を前にして、この場にいた皆が、がく然としてしまったのであった。

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