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無敵探偵活劇 アケチ大戦争  作者: anurito
玉村一族編
54/169

二つの変事(その1)

 大トーキョー・シティのスミダ川では、もう秋も終わりを告げると言う11月半ばになっても、まだ、ボートを川に浮かべて、レジャーに勤しむ強者つわものたちがいた。

 11月20日。その夜もまた、一組の若いカップルが、スミダ川へと小さなボートで乗り出して、二人っきりのロマンチックなひと時を楽しんでいたのだった。さすがに、他のボートの姿は見かけない。今夜は、彼らだけで、完全にスミダ川は独占なのである。

 多少は風も冷たかったかもしれない。遠方に街の光は輝いていたが、川そのものの周辺は真っ暗なのだ。水面も、どす黒い色の液体と化していた。どこか不気味さも漂わせてはいたのだが、それでも、愛し合う二人にとっては、十分に幸せな空間だったようなのである。

 このボートが、ちょうど、アヅマ橋の真下を通った時のことだった。

「あ」と、カップルの女の方が声をあげた。

「どうした?」乗り合わせていた男が尋ねる。

「何かが落ちてきたわ。橋の上からよ」

「危ないな。誰かが、橋から何かを放り投げたのかな」

「そうみたい。ほら、そこ。ボートの中に落ちたわ」

「どれ」

 男は、ボートの底をまさぐった。暗かったが、異物はすぐに発見できた。彼は、それを拾い上げた。

 落下物の正体は、小さな長方形の木箱であった。貴金属でも納めていそうな箱なのだ。

「何か、入ってるぜ」男は、箱を揺らしながら、笑った。

「要らないものを捨てたのかしら」

「だとしたら、俺たちで貰ってもいいのかな?」

「やめなさいよ。それって、きっと、こっそりと捨てたかったものなのよ」

 だが、男は相手の言葉に耳を貸さずに、面白半分に、強引に、箱のフタを開けてしまったのだった。

 その中に入っていたものに触れた瞬間、その物体の触り心地に、男はややギョッとした。

「こ、これは」

 男は、恐る恐る、その物体をつまみ出した。しかし、その物体を見た途端、男も女も悲鳴をあげたのだった。男は、慌てて、その物体を放り出してしまった。

 ボートの底にペタンと落ちた、その物体とは、人間の指だった!切断したばかりだったのか、まだグニャッと柔らかくて、切り口からは血も垂れていたのである。

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