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無敵探偵活劇 アケチ大戦争  作者: anurito
玉村一族編
47/169

アケチ探偵、大海原に死す!?

「フミヨ!その男の足かせを元に戻すんだ!そして、さっさと、その男のそばから離れろ!全く、お前は使えない娘だよ」ショットガンの銃口をアケチたちの方に向けた魔術師が怒鳴った。

 フミヨは、モタモタしていて、すぐには言う事には従わなかったのだった。

「おいおい。魔術師くん、物騒じゃないか。そんなものまで持ち出したりして。それにしても、どこから僕たちの動向を見張ってたんだい?」魔術師の気をそらそうとして、アケチが話しかけた。

 彼が、チラッと壁のお面の方を見ると、相変わらず、道化仮面の場所があった位置には、黒い穴があいたままなのである。少なくても、さっきのように、魔術師が自らアケチたちを監視していたのではないのだ。

「仮面のフリをして、この部屋を覗いていたのは、私だけじゃない。他の仮面の後ろにも、私の部下が潜んでいたのだ。名探偵なら、もう少し、警戒すべきだったな。この部屋で何が起きているのかは、最初っから最後まで、何もかも、私には筒抜けだったのだ。なあ、分かったかい、フミヨ」

 フミヨは、アケチの横で、ガクガクと震えていた。彼女は、ずっと一緒にいるだけに、魔術師の怖さを、とことん知っているのだ。それでも、今は、必死に、アケチを助ける側につこうとしているのである。

「この銃は散弾式だ。広範囲に弾は飛び散るから、おぬしが、どんなに上手に避けたつもりでも、間違いなく、弾のどれかは当たるだろう。もっとも、私は射撃の名手だから、確実に、おぬしを射止める自信はあるのだがね」魔術師がうそぶいた。

 まさに、今のアケチは逃げ場のない状態なのである。

「さあ!降参して、おとなしく、また足かせをつけるのだ!」魔術師は命令してきた。

 ところが、その時、アケチではなく、フミヨが意外な行動に出たのだった。彼女は、決心して、立ち上がり、ゆっくりと魔術師の方に寄っていったのである。

「フミヨ。一体、どうしたんだ?」魔術師はおののいた。

 フミヨは、真剣な表情で、両手を大きく開き、まるでアケチの前で盾になるかのように、魔術師の方に迫っていったのだった。魔術師は、なかなか銃を撃とうとはしなかった。

「アケチさん、逃げてください!父の言ってる事はハッタリです。この部屋の中では、発砲なんて出来るはずがないのです。だから、逃げて、早く!」フミヨは訴えた。

 確かに、魔術師は、うろたえたまま、いっこうに、銃の引き金を引こうとはしなかったのだった。

「あ、ありがとう」

 アケチは、フミヨを信じて、バッとベッドから飛び下りた。そして、部屋の入り口むかって、ダッシュしたのだ。フミヨの体が邪魔になって、魔術師は、すぐにアケチを追う事ができなかった。

 アケチは、まんまと、入り口のドアをくぐり抜けたのである。

 部屋の外には、短い廊下があった。廊下の左右の壁は、どちらもドアだらけで、やはり、窓は見当たらない。そして、廊下の一番奥には、上階へと上がる階段があって、アケチは、直感で、この階段の先こそ出口だろうと判断したのだ。

 彼は、さらに、力を振り絞って、疾走した。急に体を動かしたからなのか、またしても、平衡感覚がずれたような気分に襲われたが、それでも、アケチは走り続けた。

 彼は、ドタドタと階段を上り始めた。上の階は真っ暗だったが、どうやら、広く開けているようなのだ。同時に、波の音も聞こえてきた。つまり、この場所は海岸沿いなのだろうか。

 アケチは、ついに、階段の上にまで到達した。そこは屋外だった。暗い真夜中なのである。波の砕ける音も、すぐ間近のものとなった。

 アケチは、その平らな地帯を、もう少し、走ってみた。すると、すぐ、柵にぶつかって、行き止まりになってしまったのだった。柵の向こう側は、えんえんと、夜の海が広がっていた。

 ここで、ようやく、アケチは、全ての真相を知ったのである。

 今、彼がいる場所は、船の上だったのだ。恐らくは、個人所有の小型のフェリー船であろう。そう、アケチは、これまでは船室の中に閉じ込められていたのである。

 なんて事ない。アルコールの酔いが醒めてなかったのではなく、本当に、部屋そのものが揺れていたのだった。先ほど、魔術師がショットガンを撃てなかったのも、壁や船底に穴を開けてしまうと、沈没してしまう危険があったからなのであろう。

 アケチが、甲板のはじで戸惑っていると、やがて、フミヨが、走って、近づいてきた。彼女は、アケチの前までたどり着くと、彼の手を持って、引っ張った。甲板の船尾のもっと暗い場所へと、アケチを誘導しているのである。まだ困惑していたアケチは、とりあえず、フミヨに身を委ねる事にした。

「バカめ!逃げ場はないのだ。おとなしく、諦めろ!」

 甲板の上を走るアケチとフミヨの後ろから、魔術師のそんな声が聞こてきた。甲板の船尾の方は、灯りもなく、ますます暗くて、追ってくる魔術師の姿も大きな黒い影にしか見えなかった。さらには、魔術師以外の数人の人影も確認できたのだった。さては、魔術師の子分たちも、追っ手にと加わったらしい。

 とうとう、アケチとフミヨは、甲板の船尾のとがった地点にまで、追い込まれてしまった。魔術師たちは、左右に広がって、追いかけてきていたので、今度こそ、完全に逃げられるルートを塞がれてしまったのだ。

 アケチたちは、立ち止まって、魔術師の方に振り返った。魔術師たちの姿も真っ黒で、よく見えなかったが、彼らの方も、アケチらの姿は、黒く、ぼんやりとしか見えてないはずなのである。

「この暗がりでは、どうせ、銃の照準も定まらず、命中はしない、と安心でもしてるのかね。残念だな。さっきも言ったが、私はショットガンを持ってきたのだ。適当に撃ったって、必ず、おぬしらに弾は当たるし、それに、甲板の上ならば、散弾であっても、思う存分にぶっ放せる。アケチよ、万に一つも、ここから逃げ出せる望みはないのだ」魔術師は、勝ち誇って、主張した。

 その時、フミヨが、こそっと、アケチに耳打ちしたのだった。

「アケチさん。策があります。海に飛び込むようなフリをしてから、急にしゃがんで、身を潜めてください」

 今のアケチは、何の手もなかったので、フミヨに言われたようにするしかなかったのだった。

 彼は、バッとジャンプして、そのあと、巧みにしゃがみ込んだのである。その様子は、魔術師たちには、暗がりの中のシルエットしか見えておらず、本当に、海へと飛び下りたように錯覚したはずだった。

 しかも、タイミングよく、海面の方から、重いものがバチャンと落ちた音が聞こえてきたのだ。実は、フミヨが、この場所に隠して用意しておいた大きな荷物を、バレないように、海へ投げ入れたのであった。

「いやだ!アケチさんは、飛び下りちゃったわ!」と、フミヨは、大声で騒いだ。

 魔術師の子分たちは、たちまち、どよめき始めたのだった。

 ああ!このフミヨという娘は、なんて、度胸もあって、機転もきくのであろうか。

 このフミヨたちの小芝居を信じてしまったのならば、追っ手たちは、あとは、アケチを求めて、海面ばかりを探してくれたであろう。そして、甲板の方の警戒が手薄になってくれたら、隙を見て、あらためて、アケチを避難用のミニボートにでも乗せて、逃してしまえば良いのである。

 だが、現実には、そうも上手くはいかなかったのだった。

「フミヨよ。下手くそな小細工はヤメなさい。お前に手品マジックのイロハを教えてやったのは、この私なのだ。お前の考えそうな事は、私にも、すぐ見抜けるのだよ。アケチは、まだ、そこに居るのだろう?隠れてないで、さっさと出てきなさい」魔術師は、力強く、命じてきたのであった。

 全く、この魔術師という男は、なんて恐ろしい相手なのであろう。せっかくのフミヨのアイディアも、この男には、いっさい通用しなかったのである。

 やむなく、アケチは、ゆっくりと立ち上がって、再び、その姿を追っての前にと現わした。

「ふふふ。やっぱり、まだ居たか。おい、アケチ。これで、良く分かっただろう?今のおぬしに逃げ場所はないのだ。この船の周りは、一面が海だ。こんな場所で、船から下りたって、どうする事もできんだろう?」

「さあ、どうだろうね。僕には、まだ奥の手が残ってるんだぜ」アケチが、強気に言い返した。

「コゴローへの変身の事を言ってるのかね?そう言えば、黒トカゲから、おぬしの武勇伝は聞いた事があるよ。す巻きにされて、岸から海に突き落とされても、無傷で生還したそうだね。つまり、それがコゴローの体力パワーと言う訳か。だが、ここは、トーキョー湾からずっと沖に出た、太平洋のど真ん中だ。果たして、こんな場所で、海に飛び込んだあと、コゴローになっても、泳いで、無事に日本にまで戻ってこれるのかな?」

 アケチは言い返す事ができなかった。全て、魔術師の指摘した通りだったからである。コゴローだって、何でも可能な訳でもないのだ。

「うぬぼれ屋の名探偵くん。良いのだよ、そこから海に飛び込んでも。私の好意を無下にして、そこまで逃げたいのであれば、さっさと死ねばいいのだ。生かしておいてあげる約束も、もう取りやめだ」

 もはや、完全に、魔術師の一方的なペースなのであった。

「自分で飛び込まないのなら、私はショットガンを撃つ。おぬしは、死体か半殺しになってから、海に沈むのだ。その際は、役立たずのフミヨも、一緒に散弾の犠牲となって、おぬしの道連れになるであろう。私は復讐の鬼だ。復讐の為だったら、娘の命を差し出す事だって、ためらわないのだ」

 アケチは、すっかり進退きわまっていた。

 この悪魔のごとき魔術師には、親子の情さえ無いのだ。しかし、今は、アケチの方こそ、こんなに健気に自分を助けてくれたフミヨを、一緒に死なせたくない心情になっていたのである。

 アケチは心を決めた。柵に足をかけ、自主的に海へ飛び込む事にしたのだ。

 それを察知したフミヨは、素早く、アケチの手に、何かを握らせた。金属製の小さな円盤状のものだった。暗かったし、いきなりだったから、それが何だったかは、アケチも、すぐには確かめなかったのである。

 そして、アケチは、ドボンと音を立てて、海中へと落ちていったのだった。魔術師たちは、その様子を、しかと見届けた。フミヨも、泣きそうな顔で、身投げするアケチのことを見送ったのだった。

 今度は、トリックなどではない。間違いなく、アケチ本人が、海の中へと消えてしまったのである。

 それを確信した魔術師は、嬉しくなってきたのか、思わず、大笑いしてしまったのだった。でも、ちっとも油断はしておらず、次の行動も早かったのである。

「よし!すぐ、この船を、この辺の海域から移動させろ。コゴローになったアケチが、船体に掴まって、甲板まで這い上がってくるような事も、絶対にないとは言い切れないからな。それから、全速力で、トーキョーに戻るのだ。玉村家の復讐計画、我らのライフワークであるショーを再開するぞ!」

 魔術師は、テキパキと子分たちに指示を与えた。それから、彼は、まだ放心したように突っ立っていたフミヨの方へと、顔を向けたのだった。

「おい、フミヨ。今日は、とんでもない事をしてくれたな。お前には、父の無念の気持ちが分からぬのか?なぜ、私の復讐に、もっと協力的になってくれないのだ?私の敵であるアケチをかばうなど、もっての外だぞ。よいか。今日、私に逆らった分は、このあと、きっちりと働いて、返してもらうからな。決して拒否などはさせんぞ」

 魔術師は、厳しい口調で、フミヨに告げたのだった。フミヨは、この父には、相変わらず、逆らう事はできなさそうなのであった。

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