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無敵探偵活劇 アケチ大戦争  作者: anurito
玉村一族編
44/169

一寸法師と妖虫

「おいおい。こないだはコウモリで、今度は大サソリかよ。一体、何を考えてやがるんだ?仮装大会じゃないんだぞ!」相手の姿をはっきりと見切ったコゴローが、呆れたようにヤジったのだった。

 彼の目の前には、ニジュウ面相が変身した巨大サソリが構えていた。

 その内部には、確かに、ニジュウ面相が潜り込んでいるはずなのだが、外見のフォルムは、完璧にサソリなのである。人間並みの大きさの、赤いお化けサソリなのだ。

「コゴローくん。そんな事を言ってられるのは、今のうちだけですよ。前回のバトルの反省点は、全て改善してあります。今度こそは、君にだって負けはしませんよ」ニジュウ面相が化けた赤サソリは、巨大な二つのハサミを揺らしながら、豪語したのだった。

 そんな赤サソリの手前に、女装姿の一寸法師が、スーッと移動してきて、盾のように身構えた。

「一寸法師くん。あなたも、今日は、好きなだけ暴れても構いませんよ。コゴローくんを血祭りにしなさい。私が許可します。そして、黒トカゲくんの義手を取り返すのです!」ニジュウ面相が命令した。

 それを聞いて、暴れる事ができるのが、よほど嬉しかったのか、一寸法師は、満面の笑みを浮かべて、奇声をあげたのだった。

 こうして、赤サソリと一寸法師のコンビ対コゴローの変則マッチが始まったのである。

 最初に動いたのは、一寸法師だった。彼は、自慢の身軽さに物を言わせて、軽やかに飛び跳ねながら、コゴロー目がけて飛びかかっていった。その両手には、いつの間にか、鋭い刃物がガッチリと握られていた。

「観自在菩薩、行深般若波羅蜜多時!」

 一寸法師は、例によって、お経を唱えながら、コゴローへと切り掛かった。

 しかし、コゴローの方も、今は、運動神経が抜群の状態なのだ。たとえ、一寸法師が本気モードで襲ってきても、そんなのは、巧みに横にかわしてしまったのだった。

 もっとも、一寸法師が突き出した刃は、紙一重で、コゴローの服の表面をかすめていた。一寸法師の暗殺テクニックが、それだけ優れていたせいとばかりも限らない。どうも、コゴローの方も、ゴルフクラブケースなんかを背負っていたものだから、やや動きが鈍っていたようなのだ。

 思わぬ誤算だったらしく、コゴローは、チッと舌打ちした。

 だが、敵は、そんな事にはお構いなしなのである。

 すぐさま、一寸法師は、攻撃の第二弾として、再び、襲いかかってきたのだった。

 コゴローが、懸命に、一寸法師の刃物から大きく身を避けた。

 ところが、いつの間にか、ニジュウ面相の大サソリも、コゴローのすぐ背後にまで近づいていたのである。

「もらったあ!」

 そう怒鳴って、大サソリは、コゴロー向かって、両腕がわりの巨大バサミを振り下ろした。

 瞬時に、その殺気に気付いたコゴローは、素早く振り返って、自分へと向かってきた二つのハサミをがっちりと受け止めたのだ。

 ニジュウ面相のサソリも、けっこうな怪力であった。コゴローに押さえ込まれたハサミを、なおもグイグイと振り下ろそうとするのである。しかも、この赤サソリには、もう一つの恐ろしい武器があった。尻尾の針である。

 サソリのハサミとがっぷりと組み合って、身動きできなくなっていたコゴローを狙って、サソリの尻尾の先がジワジワと迫ってきた。

 本能で危険を感じたコゴローは、ハッとして、サソリとの力比べをやめ、サソリの両方のハサミの下を滑りくぐるようにして、その位置から逃げ出したのだった。

 次の瞬間、たった今までコゴローがいた場所めがけて、サソリの尻尾が突き出された。コゴローにギリギリ逃げられてしまった尻尾の先は、空振りして、地面の表面をえぐり破ったのである。

 この尻尾にしても、あるいは、両腕のハサミにしても、かなりの硬度なのだ。ニジュウ面相の変身スーツは、色が変わるだけではなく、その固さもまた、部分部分で、自由に調整できるみたいなのである。

 とにかく、今回のこの赤サソリは、こないだのコウモリなんかよりも、はるかに手強いようなのだった。加えて、一寸法師も、なかなかのコンビネーションぶりを発揮しているのだ。

「照見五蘊、皆空。度一切苦厄!」と唱えながら、またもや、一寸法師が襲いかかってきた。

 その攻撃を、かろうじて、受け流したかと思うと、間を置かずに、今度は、赤アソリが襲撃してくるのだ。この二人組のチームワークの前では、コゴローも、すっかり防戦一方になっていた。

「ええい!こんなハンディ戦、やってられねえよ!」と、とうとう、コゴローはブチ切れた。

 彼は、背負っていたゴルフクラブケースを、苛立ちながら、地面に下ろしてしまったのだ。ゴルフケースの死守よりも、自分の敏捷さの方を優先する事にしたのである。

 だが、それこそが、ニジュウ面相たちの狙いでもあったのだった。

 最初こそは、コゴローも、地面に置いたゴルフケースのそばから離れないようにしながら、戦っていた。でも、次々に攻撃を仕掛けてくる赤サソリと一寸法師を相手にしながらでは、ゴルフケースにずっと注意を傾け続けてもいられなかったのだ。

「今です!一寸法師くん!」と、ニジュウ面相が大声を出した。

 次の瞬間、一寸法師は、素早く、地面にあったゴルフケースを奪い取ってしまったのだった。

「あ!この野郎!」コゴローが怒鳴った。

「へへい!やったぜい」と、ゴルフケースを抱えた一寸法師は、有頂天なのである。

「よし、良くやりました!お見事です!これで、当初の任務は達成されました。一寸法師くん、あなたは、その義手を持って、すぐにアジトに戻ってください。あとの始末は、私が引き受けます」

「合点だ!任せとけ!」褒められた一寸法師は、嬉しそうに、ゴルフケースを抱きしめたまま、ピョンピョン跳ねて、この一本道を走り去っていったのだった。

 コゴローは、慌てて、そのあとを追いかけようとした。

 ところが、そこへ、ニジュウ面相の赤サソリが突撃してきたのである。

「君の相手は私です。さあ、トドメを刺してあげましょう!」

 赤サソリは、隙を見せていたコゴローの上に、ここぞとばかりに、のしかかってきたのだった。

 一見、コゴローの方が、圧倒的にピンチのようにも見えた。しかし、とうとうゴルフケースを奪われてしまったコゴローは、今、猛烈に憤っていたのである。

「うるせえ!お前なんて、初めっから、オレの敵ではないんだよ!」

 赤サソリの二つのハサミに、グイグイと押しつぶされている状態でも、コゴローは強気の態度で怒鳴った。そして、いきなり、馬鹿力を出して、赤サソリの巨体をいっぺんに押し返してしまったのだ。

 あまりに急な反撃だったものだから、赤サソリは、思いっきり、ふっ飛ばされてしまった。背中から地面に叩きつけられてしまい、思わぬ展開に、赤サソリのニジュウ面相も、ちょっと驚いているのである。

 だが、機嫌の悪いコゴローの怒りは、まだまだ、少しも収まっていなかった。彼の腹いせの矛先は、全て、赤サソリにと向けられる事になったのだ。

「まだまだあ!そんな簡単にへたばるんじゃねえよ!」

 コゴローは、まだ体勢が整っていない赤サソリ向けて、飛びかかっていった。そして、ハサミの一つを両手でグイと持つと、またもや怪力を発揮して、赤サソリの体をグルグルと振り回してから、投げ飛ばしたのだ。

 すっかり、バトルの主導権は、コゴローにと握られていた。豪腕の上に、敏速さも加わったコゴローの前では、もはや、赤サソリがどんなに強力であっても、ただのハリボテに過ぎないのである。

 コゴローによって、さんざん、地面に叩きつけられまくった赤サソリは、もう完全にグロッキー状態であり、やり返してくる気配もなくなっていた。その真っ赤なボディも、すっかりボロボロなのである。

 最後に、コゴローは、そんな瀕死の赤サソリを、道路の横にある川の間際へと、放り投げたのだった。

 地面にドサリと叩きつけられた赤サソリは、最後の力を振り絞って、必死に逃げようとしていた。だが、逃げる方角がマズかったものだから、その体は、道の端から外れて、ボチャンと川の中へと落ちてしまったのだ。体の全部までは沈みはしなかったものの、半身をプカプカと水面に浮かべたままで、すっかりバテていた赤サソリは、川下へと静かに流れ下りていったのであった。

「どうだ、参ったか!オレと張り合うなんて、100年早いぜ!」川の中を去っていく赤サソリを見送りながら、コゴローは、威勢よく、怒鳴ったのだった。

 だが、ここで、コゴローの体の方にも、いきなり、不調が発生したのである。

 コゴローは、急速に、眠気をもよおしてきた。これは、お酒を大量に飲んだ時に現われる症状である。さては、福田博士がくれた丸薬の副作用なのだろうか。

(ちっ。あの薬は、もう少し、改良の余地がありそうだな)と、コゴローは心の中で苦笑した。

 意識があったのは、そこまでだった。このあと、コゴローは、ちょっとヨロつくと、そのまま、崩れるように、路上にと倒れてしまったのである。それっきり、彼はピクリとも動かなくなった。

 福田博士の薬を服用してから、きっかり5分後の話である。つまり、この薬は、一気にコゴローに変身させる事はできても、そのあとの活動時間は5分が限度だという事なのだろう。

 コゴローが地べたで眠り込んでしまうと、その時を待っていたかのように、10人以上の怪しい人影が、群がりながら、ゾロゾロと、コゴローのそばに近づいてきたのだった。

 その先頭に立つ人物は、ピエロの化粧と扮装をしていた。そう、この男は魔術師なのだ。そして、彼のあとに付き従っていた連中こそは、魔術師が率いる精鋭部隊の魔術団なのであった。

「ニジュウ面相よ、ご苦労であった。おぬしの活躍はムダにはせぬぞ。さあ、このショーの続きは、この私が引き継がせていただこう」魔術師は、ふてぶてしく、言い放った。

 それから、魔術師は、倒れているコゴローの間近にまで歩み寄ると、真上から、熟睡しているコゴローを見下ろして、ニンマリと微笑んだのである。

 さて、それっきり、アケチ探偵は行方不明になってしまったのだった。

 福田博士のもとへ行ったアケチの帰りがあまりに遅いので、コバヤシ青年も、さすがに心配になってきた。彼は、自らも、師を探しに歩き回ったが、やはり、アケチはどこにも見つからなかった。この一本道にだって、コバヤシは、何度も調べに来てみたのだが、その時には、もう何の手がかりも残されてはいなかったのである。

正式な本編を公開する前の予告期間(2022年9月〜11月上旬)は、

この先は、以下の章だけを公開していました。


「悪魔のおくりもの」完全版 (2022年9月22日掲載)

「消えた令嬢」 (2022年9月26日掲載/10月6日削除)

「サーカスへの招待」 (2022年10月6日掲載)

「二つの変事」 (2022年10月11日掲載)

「1000人のエキストラ」前半部 (2022年10月20日掲載)

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