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無敵探偵活劇 アケチ大戦争  作者: anurito
玉村一族編
35/169

妙子の隠し事

 玉村家の食堂で、次に、重要な対策会議が開かれたのは、コゴローがクモ男たちを相手に乱闘してから、2日後のことだった。

 クモ男たちと戦ったあと、コゴローは、半日以上、眠ってしまい、元のアケチに戻るのにも、それだけの時間を要したのである。それだけではなく、新たに手に入った情報を十分に整理するのにも、そのぐらいの時間がかかったのだった。

 よって、2日後の対策会議の様子を覗かせてもらう前に、それまでの期間にどんな新発見があったのかを、我々も先におさらいさせてもらう事にしよう。

 アケチ探偵たちが、庄太郎の死体を発見して、クモ男たちと戦う事になった直前、アケチとコバヤシは、妙子によって、ようやく、外部から玉村邸の敷地内に忍び込む為の秘密のルートを教えてもらっていた。それは、非常にトリッキーな仕掛けの抜け道だったのである。

 その抜け道は、二重三重のカムフラージュによって隠されていたのだ。

 その偽装の一つが、塀に完全に隣接した物置小屋だった。この物置小屋の中に、抜け道にと繋がる隠し扉が仕込まれていたのだ。

 物置小屋の中のこの隠し扉が今まで見つからなかった理由として、この物置小屋の奥の方(つまり、塀のある側)には、大量の木箱が、天井まで積み重ねられて、ずっと放置された状態になっていた事が挙げられる。この木箱こそが、抜け道を隠す擬態だったのであり、この木箱の側面の一部分が、実は隠し扉になっていたのだ。

 これらの木箱は、一辺が50センチ程度の小さなものばかりだったし、中に人が隠れられるとは思われなかったので、警察の捜査の際などでは、いつも、見落とされていたのだった。もし、よく調べていれば、複数の木箱がくっついていて、それらの木箱の側面が、大きな扉にと変わって、パカッと開くのが、きちんと分かったかもしれないと言うのに。

 だが、そこまで徹底してチェックされなかった原因としては、そもそも、そんな手品のようなカラクリが物置の木箱に仕掛けられているとは、普通は誰も疑わなかったし、さらには、この物置小屋自体に、通常は、入り口に鍵が掛かっていた為でもある。その時点で、この物置小屋の内部に侵入口ルートがあると言う可能性は消去されてしまい、事件が起きても、いちいち、物置小屋の中が家探やさがしされる事もなくなっていたのだった。

 さて、塀にぽっかりと開けられた抜け道のうち、内側は、このような方法で隠されていたとして、では、この塀の外側がどうなっていたのかと言うと、そちらは、実は、小規模な雑木林が、塀にと密着していた。つまり、雑多な木々が、塀のすれすれに繁っている事で、やっぱり、隠し扉と塀の境目が、絶妙に分かりづらくなっていたのだ。「ここに扉がある」と前もって知っていないと、なかなか見つけにくい状態だったのである。

 とは言え、塀の内側には小屋が隣接していて、塀の同じ位置の外側にも雑木林が密接しているとなると、普通だと、何となく違和感を感じて、勘のいい人ならピンと来そうなものだろう。だが、そうならなかった事情としては、実のところ、塀に繋がった建物や、塀のそばにある雑木林と言う地形は、玉村家の敷地では、ここだけではなかったのであった。他にも、あちこちに、何ヶ所も存在していたのだ。

 よって、この抜け道のある場所にしても、たまたま、建物と雑木林がちょうど塀の内外にあるという程度の印象しかなく、ほとんど目立たなくなっていたのだった。警察はもちろん、アケチ探偵ですら、推理だけでは、抜け道があると見抜けなかったのは、それゆえである。

 さらには、塀の内外の隠し扉の中間地点には、もう一つ、強力な防犯システムで閉じられた関門が存在していたのだった。これが、ちょっとやそっとの方法では、無関係の部外者には通過できる代物ではなかったのだ。この防犯システムがあったからこそ、抜け道のことを知っていた善太郎や妙子ですらも、この抜け道を賊が悪用できる訳がないと安心しきって、誰にも教えようとしなかったのだと言ってもいい。

 この特別な防犯システムとは、最新式の顔認証の通過キーだったのだが、これについては、いずれ詳しく説明し、検証する事にもなるだろう。

 とにかく、この顔認証システムがあったからこそ、仮に、第三者が偶然に抜け道を発見したとしても、安易に抜け道をくぐり抜ける事は出来ないはずなのだった。だからこそ、顔認証システムを突破できる数少ない人間である妙子が同行してくれて、この抜け道も、ようやく、アケチたちも知る事となったのだ。

 で、あの夜、アケチやコバヤシは、抜け道を使って、はじめて、玉村邸の敷地内から外の道路にまで外出してみたのであった。その直後に、例の庄太郎の殺害現場に遭遇してしまった訳だ。

 あとの展開は、すでに紹介した通りである。アケチとコバヤシは、庄太郎を殺害したクモ男のあとを追い掛け、そこで彼らと乱闘となった。戦いの結末は、コゴローことアケチの勝利で終わり、クモ男とニジュウ面相は、大切なナイフ銃と変装用のコウモリの頭を手放して、逃げてしまったのだった。賊どもの使用品が回収できた事もまた、アケチ及び警察にとっては、非常に有益な成果となったのである。

 とまあ、およその事前情報は、こんな感じだ。これより、2日後の玉村家の対策会議の様子にと、話を移行する事にしよう。その場では、さらに多くの事実が解き明かされる事となったのだ。

 今度の対策会議の参加者は、まずは、玉村家の一家。善太郎、一郎、妙子の他に、今回からは、負傷していた二郎も、首に包帯を巻いて、出席するようになった。こう次から次へと刺激的な事件が続くようでは、さすがに、いつまでも引き篭もってもいられないのである。むしろ、気持ちが落ち着いてきた二郎は、再び戦線に戻りたくて、少しウズウズしていた感じだ。

 それから、アケチ探偵と助手のコバヤシのコンビ。言うまでもなく、普段の頭脳明晰なアケチの方である。戦闘バトル以外の場所では、ちょっと、コゴローの状態では務まらないのだ。

 そして、今回は、ナカムラ警部も、しっかりと話し合いに加わったのだった。多くの新情報が手に入っていた事もあって、今日のナカムラは、たいへん機嫌の方も良さそうなのである。

 かくて、このようなメンバーによって、全員での話し合い、と言うか、実質上、アケチ探偵による謎解きの独壇場が始まったのだ。

「まず、最初に、皆さんに、もう一度、確認させていただきます。この屋敷に作られていた抜け道については、本当に、善太郎さんと妙子さんしか、知らなかったのですね?」と、真っ先に、アケチは皆へと尋ねた。

「当たり前だ。あんな抜け道とか、時計塔に隠し部屋があった事とかを知って、俺の方がビックリしてるよ」感情的になって、二郎が答えたのだった。

「一郎さん。それに、主だった使用人の皆さんも、誰も知っている人はいなかったのですね?」

 アケチの質問に、一郎も素直に頷いたのだった。どうやら、嘘をついている人はいないようなのだ。

「おいおい。じゃあ、あのような抜け道は、何の為に存在していたのかね?そして、この抜け道のことを、善太郎氏と妙子さんだけが分かっていたのは、どうしてなんだ?」と、ここでナカムラ警部が口を挟んだ。

「昔の殿様のお城を真似て、この屋敷のあちこちに、色々な仕掛けを施していたのは、全て、善太郎さんの発案です。だから、善太郎さんが、これらの仕掛けを全て知っていたとしても、当然の事でしょう?」

「でも、何の目的があって、こんなカラクリ屋敷を作る必要が?」

「こないだもお話したのですが、善太郎さんは、いざと言う事態の時の逃げ場所が欲しかったんですよ。状況によって、時計塔の隠し部屋の中に身を潜めたり、あるいは、あの抜け道から、敵に見つからないように脱出するつもりだったのでしょう」

 善太郎は、渋い表情を浮かべたまま、あえて答えようとはしないのである。しかし、アケチの憶測が当たっていたのは間違いなさそうなのだった。

「だとすれば、家族の中で、どうして、妙子さんだけが抜け道の存在を知っていたのかね?」と、ナカムラ。

「その点については、妙子さんの方から弁明してもらえませんか」アケチは言った。

「あたし、小さい頃に、この屋敷の中で遊んでいたら、偶然に、あの抜け道を見つけちゃったのよ。その事は、すぐに、お父さまにも話したわ。すると、この事は他の人には内緒にしておく代わりに、あたしも抜け道を使っていい許可を、お父さまが与えて下さったの。ただ、それだけの話よ」妙子は、ぶっきらぼうに答えたのだった。

「抜け道があれば、バレたくない用事がある時に、こっそり、屋敷の外にも出られますものね」ニッコリ笑いながら、アケチが言った。

「な、何よ、その言い草!」と、妙子が怒る。

「でも、実際、そうだったんでしょう?そうやって、あなたは、この半年間、さんざん、あの抜け道から屋敷の外へと抜け出していた。この事は、善太郎さんも、うすうす気が付いていたけど、抜け穴の存在と絡んでいた以上、大っぴらに妙子さんを咎める事ができなかった」

「アケチくん。それは、どう言う事かね?」と、ナカムラ。

「はっきり言っちゃいますと、妙子さんは、時々、あの抜け道を利用して、屋敷の外に出て、逢い引きしてたんですよ。皆には黙ってね」

「逢い引きだって?一体、誰と?」初耳だったらしく、思わず、二郎が大声を出した。

「先日、クモ男に襲われて、この屋敷の近くの路上で亡くなった青年です。妙子さん、それで間違いないでしょう?」

 妙子は、辛そうな、悲しそうな表情を浮かべていた。

「あの死亡していた青年については、警察の方で調べて、おおよその身元が分かったよ。この屋敷のすぐ近くのアパートに住んでいた、荒川庄太郎という名の大学生だ。確か、妙子さんと同じ大学に通っていたんじゃなかったのかな。不運にも、夜の道端でクモ男などと出会ってしまったばかりに、こんな事になってしまったとは、気の毒としか言いようがないが」ナカムラが補足説明した。

「それが、あの事件は、偶然の出来事でもなかったんですよ。庄太郎さんは、意図的に、あの路上まで呼び出されたんです。そして、予定どおりに殺害されたんです」

「何だって!」

「妙子さん。時計塔のあの鬼火こそが、あなたが、庄太郎さんと夜に会う際の合図になっていたんでしょう?庄太郎さんは、こないだも、賊が照らした鬼火を、妙子さんの鬼火と勘違いして、のこのこと、あんな場所にまで、やって来てしまったんです。そして、殺されたのです」

「もう、やめて!」妙子が、悲痛に叫んだ。

「いいえ。あなたが辛いのは分かりますが、これは重要な話なのです。申し訳ありませんが、全部、喋らせていただきますね。あなたは、もう半年も前から、庄太郎さんとは交際していたのです。でも、その事は皆には内緒にしていた。だから、夜に、二人っきりで密会していたのです。その手段として、時計塔の鬼火や抜け道などが、大いに利用されていたのです」

「こら、妙子!あれほど駄目だと反対したのに、お前は、やっぱり、あの庄太郎という不良と付き合っていたのか!」急に、善太郎が怒り出して、妙子に突っかかったのだった。

「だって、だって!あたし、本気で、庄太郎が好きだったんだもん!」妙子も泣きわめいた。

「まあまあ、二人とも、落ち着いて。とにかく、そんな風に、善太郎さんが頭ごなしに認めてくれないものだから、妙子さんも、こんな非常手段に出てしまったのですよ。まずは、妙子さんが、時計塔で鬼火を灯す。それを見た庄太郎さんが、逢い引きの場所にやって来る。妙子さんの方も、こっそりと抜け道を使って、屋敷の外へ出ると、庄太郎さんに会いに行く。そんなデートを、この二人は、半年も繰り返していたのです」

「ちょっと待ってください、先生。どうして、妙子さんは、時計塔で鬼火を灯すなどという、回りくどい連絡方法を用いたのですか?電話か何かで、会う為の打ち合わせをすれば良かったのに」ひょっこり、コバヤシが質問した。

「電話をかけたら、通話記録が残っちゃうでしょう?そこから、庄太郎さんと会っていた事が、善太郎さんにもバレてしまう。こういう場合は、むしろ、灯りをつけて合図するみたいなアナログなやり方の方が、足が付きにくいんですよ。実際、皆さん、この半年間、妙子さんの合図を本物の鬼火と勘違いしていたようですしね」

「妙子さんに、そんな秘密の事情があった事は、おおよそ分かったよ。だが、この事と暗黒星は、どう結びついていたのかね?」ナカムラが尋ねた。

「暗黒星の連中は、玉村邸を偵察している過程で、たまたま、妙子さんのこの秘密を発見したのでしょう。そして、この妙子さんの裏の活動を、自分たちの暗躍に利用する事を思いついたのだと思われます」

「具体的には?」

「妙子さんが時計塔に鬼火を焚けば、それから数十分ぐらいの時間は、屋敷内には、妙子さんが居なくなる事になります。それも、皆には極秘で。だったら、その時間帯は、妙子さんに化けて、この屋敷内に忍び込み、様々な小細工をしたとしても、誰にも疑われないで済む事になります」ここで、アケチは、一郎の方に顔を向けた。「つまり、一郎さんのおっしゃっていたドッペルゲンガー(自分が、もう一人、別の地点に現われるオカルト現象)とは、この事だったんですね?」

 一郎は、笑みを浮かべて、小さく頷いたのだった。と言う事は、一郎も、だいぶ前から、この屋敷の中に謎の人物が紛れ込んでいた事を、ぼんやりとだが、認識していた事になる。

「ああ!なるほど!そうか、ニジュウ面相か!あいつが、妙子さんに変装して、頻繁に、屋敷の中に出入りして、いろいろな犯行の手引きをしておったんだな!」と、ハッとしたナカムラも声を張り上げたのだった。

「うん。なかなか、いい推理ですよ。ナカムラさん」アケチが、ニコニコと笑ってみせた。

「待って!それは、あり得ないわ!だって、あたしが居なくなったところで、賊は、この屋敷の中には入れないもの」この時、慌てて、皆の話に釘を刺したのは、妙子であった。

「どうして?賊だって、抜け道からだったら、自由に、屋敷の中に潜り込めるのと違うのかね?」

「いや。入れるはずがないのだよ。その点は、あの抜け道を採用したわしが断言する」と、善太郎も、重い口を開いたのだった。

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